英字新聞 今週のなるほどHeadlines


New York Times 表紙 英字新聞のヘッドラインの中からなるほどと思わせるものをピックアップ The New York Times(NYT) とThe Japan Times(JT) の記事の中から毎週、なるほどと思わせるヘッドライン( Headlines) をピックアップし、その意味と背景にある事象や歴史などを解説していきます。

 ヘッドラインの表現は独特で、学校で習った文法ではカバーしきれていないものが多く含まれています。また、新聞紙面の字数の制限から短い単語が使われる傾向があり、短い一文の中にいかに読者の目を引きウィットに富んだ表現を込めるかが試されます。

ビジネスの観点から海外の政治・ビジネス・文化に関する、なるほど!表現をWeeklyで掲載していきます。プロのライターの英語表現を題材に、世界の動向を英語でそのまま理解する楽しさを味わいましょう。

The Japan Times, February 23, 2023
Japan and China square off over arms and balloons
日中が武器と気球をめぐり対抗姿勢

square off over ~: ~をめぐって対立する構えを見せる、けんか腰になる

 Square は名詞では正方形、2乗、四角い広場、の意味があるが、動詞として、身構える、の意味がある。off は、離れて、を表わすので square off は、にらみ合っても衝突するまでには至っていない状況だろう。

 日中間で4年ぶりに開催された安全保障に関する会合で、中国は日本の防衛力増強が問題を引き起こしていると主張する一方、日本は中国とロシアの軍事協力とスパイ気球の利用に懸念を表明した。アジアの大国である両国は、尖閣諸島の所有権でも双方が主張しており、中国の沿岸警備艇(coast guard vessels) が繰返し日本の領海侵犯しており緊張状態が続いている。
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The New York Times, February 17, 2023
Reaping the rewards of yoga for seniors
高齢者向けヨガから得られる成果

reap the rewards of ~: ~からの報酬/成果を得る、~を活用する

 ヨガは高齢者のためになる(yoga can be beneficial to seniors) ことに異論はないだろう。記事では、ヨガを始める前の注意点をいくつか挙げている。A class tailored to your needs, Know the limits, Yoga can benefit the mind, too, Start with these moves として、toe yoga, calf raises, gentle twist, flamingo pose を勧めている。

 記事を通じて述べているのは、ヨガはエイジングに効く万能薬(not a magic elixir)ではなく、筋力の衰えを食い止める(stave off muscle loss)には、ヨガ以外に筋力トレーニングが必要とのこと。また、持病や回復期にある人などは事前にインストラクターに伝えて別メニューを作ってもらい無理をしないということだ。
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The Japan Times, February 14, 2023
Hey fever season set to pack a punch
花粉症の季節が猛烈な勢いですぐそこに 

Hey fever: 花粉症、花粉アレルギー。花粉は pollen。
set to V: V する準備が整った、Vすることになっている
pack a punch: 相当な効き目がある、強烈なパンチ力がある、packは、~を身に着けている、という意味がある。

 東京でもまだまだ寒い日が続いているが、今年の花粉の数は例年の2倍が見込まれている。日本気象協会(Japan Weather Association) によると、花粉の数は首都圏 (the greater Tokyo area) で例年の2倍、東北、東海地域では1.8倍、そして四国では昨年の3倍近くが予想されている。花粉アレルギーの人はさぞ大変だろうと他人事で読んでいたら、日本気象協会によれば、昨年は軽い症状だった人も今年はしっかりした対策を取る必要があるとのこと。
 飛翔する花粉の数が多くなる条件は、前年の夏が暑かったこと、長い日照時間、雨量が少ないこと、のようだが今年の場合はその条件を全て満たしているようだ。花粉が舞うピークの時期は、花粉の種類である cedar(ヒマラヤスギ)かcypress(イトスギ)の数がその地域にどれほどあるかによるため地域差がで大きいようだ。
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The Japan Times, February 8, 2023
Mitsubishi Heavy pulls the plug on its troubled SpaceJet project
三菱重工が問題を抱えたスペースジェットプロジェクトの中止を発表

pull the plug on ~: ~を突然中止する、生命維持装置を外す、プラグを抜く。

三菱重工業は2月7日に国産ジェット SpaceJet プロジェクトを中止すると発表した。当初は2013年に最初の航空機を納入する予定が、6回にわたり延期された経緯があり、2020年10月には開発を凍結していた。このプロジェクトには最終的に1兆円を投資したとのことだ。
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The Japan Times, January 20, 2023
Europe is winning the winter war by sheer luck
欧州、単なる幸運で冬戦争に勝利

winter war: 冬の寒さとの戦いのことだが、Winter War と固有名詞になると1939年11月末~1940年3月までの旧ソ連がフィンランドに侵攻した戦争の意味になるので注意。
by sheer luck: 全くの幸運で、たまたま運よく。sheer: 純然たる、単なる。

 ロシアによるウクライナ侵攻が長引くことによってエネルギー価格の高騰が予想されていた欧州では、気候変動による温暖化のお陰でエネルギー価格が抑えられ冬の寒さに勝利しているといった内容の記事。
 主なガス消費地方である北西ヨーロッパでは、昨年12月19日から1月16日までの29日間連続で平年より高い気温を記録したが、昨年10月中旬から11月下旬までの37日連続に続いた。欧州全体でみると、ガス需要は過去5年間の平均を20%も下回っており、貯蔵タンクは82%の水準で、1月中旬の5年平均の62%を十分上回っているようだ。
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The Japan Times, January 19, 2023
Court upholds acquittal for ex-Tepco executives
裁判所、東電の旧経営陣に対し無罪支持

court: 裁判所。ここではThe Tokyo High Court(東京高裁)のこと。
uphold: 判決を支持する、支える。
acquittal: 無罪(放免)

 東京高裁は、18日、2011年の福島第一原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪( professional negligence resulting in deaths and injuries )で起訴されていた東京電力の旧経営陣の判決( ruling )で無罪( acquittal )を言い渡した。これは2019年の東京地裁( Tokyo District Court )の判決を支持する内容で、巨大な津波が原発事故を引き起こすとの予見はできなかったという判断を支持( uphold )するものだ。
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The Japan Times, January 12, 2023
U.K.-Japan deal paves way for closer defense ties
日英協定、より緊密な防衛体制への道を開く

pave way for: 通常 pay the way for ~で、~のために道を舗装する、整備する、実現しやすい状況を作る、下地を作る。

 岸田首相はフランス、イタリアに次いで英国のスナク首相と1月11日に会談した。日本の自衛隊と英国の軍隊が互いに相手国を訪問しやすくするRAA( Reciprocal Access Agreement, 円滑化協定 ) に署名し、二国間の経済安全保障やインド太平洋地に深くコミットするものだとして、その意義を極めて重要な一歩と位置付けた。

 11日の岸田首相による英国訪問は今回訪れる5か国中3か国目で、5月19-21日に広島で開催されるG7サミットが成功するための状況作りとの位置づけだ( Kishida’s visit to Britain marks the third stop of a five-country tour as Japan seeks to pave the way for a successful G7 summit scheduled for May 19 to 21 in Hiroshima. )。
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The New York Times, December 28, 2022
China’s people are tired of being told to grin and bear it.
中国人はじっと我慢しろと言われることにすることにもううんざりだ

be tired of ~: ~に飽き飽きしている、うんざりしている。
grin and bear it: 不平を言わずに[笑って]じっと我慢する

 中国政府はこれまでのゼロコロナ政策(“Zero Covid” policy) から180度方針転換したが、その後のコロナ陽性者や死者の数は公式に発表されておらず実態は闇の中だ。コロナによる行動制限に反対することは、盲目的に苦痛(pain and suffering)に耐えることを良しとする中国の文化を拒絶することだ、と筆者は言う。
  この中国文化は長年に亘り受け継がれてきており、やや形を変えて現代でも生きている。学校の生徒は、起きている時間帯のほとんどを学校生活と、人生の運命を決定づける大学入試のための受験勉強に費やしている。例えトップの大学に入ることができ、中国のテクノロジーセクターに職を得たとしても結局 ‘996 rut’ (9 a.m. to 9 p.m. six days a week of high-pressure work)の生活に陥る人も少なくないようだ。
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The New York Times, December 24, 2022
Coming to grips with harrowing choices
痛ましい選択に真正面からの取組み

come to grips: 真正面から取り組む、受け止める
harrowing: 痛ましい、悲惨な

 2019年に Miriam Toews により出版された小説「Women Talking」をベースに今年、Sarah Polley 監督が脚本を書き映画化され高い評価を得ている。私はまだ観ていないが、ボリビアの超保守的なMennonite(キリスト教メノー教徒)の集落に昔から残る恐ろしい慣習を描いているようだ。キャストもほとんどが女性で、話題の小説の映画化として注目を集めていたこともあり一見の価値がありそうだ。
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The New York Times, December 14, 2022
Cuts to British opera funding stick in the throat
イギリスのオペラに対する財政支援の削減は受け入れがたい

stick in the throat: (提案など) 受け入れがたい、気に入らない。骨が喉に引っかかる。

 イギリスのArts Council Englandは、政府の芸術に対する資金援助を配分する政府機関だが、English National Opera(E.N.O.) に対する年額12.4百万ポンド(20億円)の給付金を停止すると発表した。その代わりに新しいビジネスモデルを展開するための1度限りの補助金を交付した。そのビジネスモデルには、現在の拠点の London Coliseum から285㎞ 北に位置するマンチェスターに移転する案を含んでいる。

 被害を被ったのは E.N.O. だけではない。Royal Opera House は10%の削減、Glyndebourne Productions は30%の減少となるようだ。 E.N.O.の収入の1/3 は政府からの給付金となっているため、Londonから遠く離れた場所でこれまで以上の興行収入を得ることは容易でないことは明らかだ。
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The Japan Times, December 8, 2022
Seoul’s debt crisis a cautionary tale as easy money ends
韓国の債務危機は超低金利時代の終わりを迎えた世界の教訓

cautionary tale: 教訓、訓話、警告、警鐘

 韓国の首都ソウルから電車で数時間で行けるレゴランド(Legoland) は韓国有数のランドマークだが、インフレ抑制と金融安定維持の両立を目指す中、予想外の象徴的な存在(poster child)となっている。

 レゴランドの開発業者による2,050億ウォン(US$155 百万)の債務不履行(default)は、リーマンショック(世界金融危機/the global financial crisis)以降で最悪のメルトダウンを引き起こした。この事案は、超低金利が長期に亘って継続された後に迎えた金利上昇によって引き起こされたもので、a canary in the mine shaft(炭鉱のカナリア, 悪いことの予兆)と見る向きが多い。ただ、テーマパークのレゴランドは開発業者とは別の会社が運営しており普通に開園しているとのこと。
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The New York Times, November 16, 2022
Farmland values soar, pricing out farmers
農地の価格が急上昇し、農家を排除

soar: 価格が急上昇する
price out ~: 高い価格で~を排除する

 アメリカ各地の農地価格が上昇している。全米の平均でで2022年は前年比で12.4%上昇し1エーカー(4,047㎡)あたり3,800ドルに達し、1970年以来最高の値上がりだそうだ。内訳で見ると、cropland(耕作用の土地)が5,050ドルで、pastureland(放牧用の土地)が1,650ドルとのこと。

 アメリカでは、農地の40%が借地となっており、地主が実際に農業に従事しているケースは少なく、売りに出される農地の供給は限られているため価格が上昇するという構造だ。小規模農家や新規就農を目指すビギナーにとっては想定した購入価格が準備した予算をはるかに超えて新規参入できない状況だ。
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The New York Times, November 5, 2022
China’s use of coal poses a climate challenge
中国の石炭利用が気候変動の難題を突き付ける

pose a climate challenge: 気候変動の難題を突き付ける/もたらす。

 Pose a challenge で、難局をもたらす、という意味。pose a challenge to the world economy (世界経済への挑戦をもたらす)のように to+挑戦/難題の対象となる。また、タイトルのようにchallenge と相性の良い形容詞を前に置いて使われる。

 中国は世界で最も多くのソーラーパネルと風力タービンを製造し、使用量も世界一だ。また、ダムによる水力発電から得られるエネルギー量でも世界をリードし、どの国よりも多くの原子力発電所を建設中だ。一方で、中国以外の全ての国を合計した以上に石炭を燃やして燃料としている。石炭の採掘を加速し石炭火力発電の建築を増やしており、昨年の中国の温室効果ガス排出量(emissions of energy energy-related greenhouse gases)は前年比6%も増加したという。
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The Japan Times, November 1, 2022
Scores dead in India after bridge collapses
インドで橋の崩落事故で多数の死者

scores: (scores of ~)多数の~、数十の~、得点、スコア、楽譜; 得点する

 Score は元々20を表わす数の単位で、そこから scores of people だと数十名程度の多くの人々、を思い描く人が多いだろう。この記事の最初の文は、At least 140 people were killed after a century-old pedestrian bridge collapsed in the state of Gujarat in western India, sending hundreds plunging into the Machchhu River. とあり、140名以上の犠牲者を出している。また、The New York Times の10月31日の記事では、Halloween festivities turn tragic as scores die in crowd surge と、10月29日のソウルで起きたハロウィン関連の集団圧死事故を取り上げている。ここでも scores が使われているが、数十名どころか150名以上が犠牲となった。

 崩落したインドの橋は1880年に造られ230メートルの長さがあるが、崩落事故の4日前に補修工事を終えて利用が再開されたばかりの事故だった。事故があった Gujarat 州はモディ首相の出身地であり、’My heart is with the victims in Morbi. I have rarely felt this kind of pain in my life’ と述べて哀悼の意を表した。
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The New York Times, October 24, 2022
How Brexit sowed seeds of infighting and failure
いかに英国のEU離脱が内輪もめと失敗の種を蒔いたのか

sow seeds of ~:  ~の種を蒔く
infighting: 内輪もめ、内部抗争; 接近戦

 ヘッドラインでは、the を省略しているが、普通は、sow the seeds of strife/hatred (不和/憎しみの種を蒔く) などとなる。否定的な意味だけでなく、sow the seeds of mutual understanding (相互理解の種を蒔く)のように肯定的な使い方もできる。

 Liz Truss 首相は就任後44日で辞任を表明し、彼女が’EU離脱の自由を活かした低い税金と高い経済成長'(low-tax, high-growth economy that would take advantage of the freedom of Brexit) を創造するというゴールのスタートラインに立つこともなく首相官邸を去ることになった。

 2016年の国民投票でEU離脱を招いた責任を取りキャメロン首相が辞任。その3年後に離脱をめぐる党内の混乱によりメイ首相が辞任。後任のジョンソン氏は自身の不祥事により辞任。政治の混乱や不祥事により相次ぐ辞任は政治の劣化を印象付け、国民の政治不信を助長してきた。突如登板となったTruss首相は、財源が不透明なまま大減税を打ち出して、予想された通り市場の混乱を招いた上、保守党の不安定化と分裂、経済の劣化を導いてしまった。
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The New York Times, October 8, 2022
Chinese loans hold sway over countries’ fates
中国からの融資が債務国の運命を支配

sway: 揺れる、傾く(動詞)、以外に、名詞で、揺れ、動揺、影響力、支配、統治、の意味を持つ。
hold sway over ~: 支配や統治を意味する名詞の sway と相性のいい動詞が hold で、~を支配/統治する、となる。また、under the sway of ~ で、~の統治下/勢力下にあって、という意味になる。

 中国は発展途上国向けの政策枠組み(China’s policy framework for developing countries)である 一帯一路政策(the Belt and Road Initiative) に従って途上国に融資を行い、インフラ整備等のプロジェクトをサポートしてきたが、多くの国で返済困難に陥っている。

 米国の前トランプ政権は、中国のこの政策を ‘debt-trap diplomacy’ (債務の罠外交)と呼び非難してきたが、この罠にまんまとはまったスリランカは融資の返済が出来ずに融資の対象だった港湾プロジェクトが今では中国によって運営、管理されている状態だ。IMFによると、世界の6割の発展途上国が債務の返済に窮し、貧困国の半数以上の国で、西側諸国合計の借入金額より多い金額を中国から借り入れている現状だ。
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The Japan Times, September 24, 2022
Currency intervention is unlikely to stem the yen’s slide
為替介入円安止められず

currency intervention: 為替介入
stem: 食い止める、押さえ込む。
yen’s slide: 円の下落、円安

 日本政府は9月22日(木)に、24年ぶりの円買いドル売りの為替介入に踏み切った。最近は円安傾向が続いており、木曜日には1ドル当たり146円に近付いたタイミングでの介入だった。一時的にではあるがドルは141円を切る水準まで急落したものの効果は短期間で終わるとの予想どおりだった。為替マーケット関係者の間では、為替介入は為替相場を安定させる効果はないというのが常識だが、政府として145円を超えるレベルの円安は望まないというメッセージは届いた。

 いずれにせよ、円安の要因である日米の金利差は今後さらに広がると見られており、日銀が金融緩和を継続し、利上げをしない姿勢を変更しない限り円安傾向は続くことになろう。
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The New York Times, September 23, 2022
Play it safe, or go for broke?
安全策を取るか、賭けに出るか?

play it safe: 大事を取る、冒険しない、無難にいく。
go for broke: イチかバチかやってみる、全力で立ち向かう、大きな成功を得るために全てを賭ける。

 broke は break の過去形でもあるが、金を持っていない、という意味の形容詞でもある。I’m broke. は、お金を持っていない。The company went broke. は、その会社は破産した、となる。

 テニスの Laver Cup が始まったが、この大会は2017年にスタートした Team Europe と Team World(欧州以外の世界選抜メンバー)による男子テニスの団体戦だ。この大会が今年特に注目を集めるのは、往年のスパースターである Roger Federer がこのイベントへの出場を最後に引退を表明したからでもある。いずれにせよ、世界のトッププレーヤーが集うこの Laver Cup で勝利をものにするのは容易ではないが、play it safe で行く場面と go for broke に出るタイミングの瞬時の判断が大切で、観客は勝敗と共に選手の ‘賭け’ に出るプレーにも大いに期待していることだろう。
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The New York Times, September 10, 2022
A monarch who knew imagery speaks volumes
イメージ多くを語ることを知っていた君主

imagery: イメージ、衣装、印象
speak volumes: 多くを物語る、雄弁に語る

 上記のヘッドラインの下に Queen Elizabeth II understood that her wardrobe could convey much more than she could actually say to the world とあり、imagery を wardrobe で、speaks volumes を convey much more than she could actually say で言い換えている。

 英国のエリザベス女王が9月8日に96歳でお亡くなりになった。英国の君主として英国史上最長の70年間在位しており国民や英国連邦、また世界の人々から慕われた女王だった。確かに時にはきらびやかで、各国代表との公式行事の際には相手国の国花をあしらったドレスを身に着けるなど配慮の行き届いた衣装で世界を魅了してきた。記事によると70年の在位の間、イギリスの首相は15人、アメリカの大統領は14人いたとのことだ。記事では触れていないが、日本の首相は30人以上交代している事実には驚きだ。
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The Japan Times, September 7, 2022
Kumamoto turns to Kumamon for tourism boost
熊本県、観光促進でくまモンに望みを託す

turn to ~: 目を向ける、頼る、取り掛かる、調べる、新しいことを始める。
boost: 促進、押し上げ。

 turn toには上記のような和訳がなされるが、turn to A for B で、Bに関してAに目を向ける、望みを託す、といった意味だ。You are the only  one I can turn to. で、頼りに出来るのはあなただけです、となる。

 熊本県のマスコットのくまモンは全国でも最も有名なマスコットの1つだろう。熊本県は世界的に有名になった、くまモンこと、丸い目をした黒い熊(the wide-eyed black bear) をアフターコロナ(post-pandemic)の観光促進に望みを託すことにしたようだ。熊本県は17世紀に建てられた熊本城や、温泉、活火山の阿蘇山が有名で海外の観光客にも人気が高いが、4月に熊本県を訪れた外国人観光客は2019年の4月比で97%減少した。
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The New York Times, August 23, 2022
Tall order: Cutting N.Y. emissions
無理難題: ニューヨーク市の排出量削減

tall order: 無理な注文、手に負えない仕事。tall には「法外な」の意味がある。
emissions: 排出量。ここでは、greenhouse gas emissions (温室効果ガス排出量)のこと。

 ニューヨーク市は2019年に、気候変動をもたらす温室効果ガス削減を目的としてLocal Law 97を法令化した。このLocal Law 97はニューヨーク市内の大規模建築を対象に温室効果ガス排出量の制限を定めたものだ。ニューヨークでは市内の100万の建物が市全体が出す排出量の70%を占めている。なぜなら、そのほとんどが冷暖房や照明を化石燃料(fossil fuels)に頼っているからだ。

 このLocal Law 97は2030年までに2005年比で40%削減、2050年までに80%削減することをターゲットにしているが、最初の評価は2024年1月に行われることになっている。評価対象の約5万社のほとんどは最初のステップの条件をクリアできそうだが、およそ2,700のビルは罰金を逃れるためには排出量削減のための対応策が必要になってくるようだ。
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The New York Times, August 16, 2022
$1.6 billion libel suit puts Fox on its heels
16億ドルの名誉棄損の訴訟でFoxが窮地に

libel: 名誉棄損
suit: 訴訟
put A on its heels: A を追い込む、窮地に立たせる。

 heels を用いたイディオムでは on the heels of ~: ~のすぐ後に(immediately after ~) を覚えた人も多いだろう。例えば、The typhoon arrived on the heels of weeks of rain. なら、数週間続いた雨の後、台風がやってきた、という具合だ。このヘッドラインの put Fox on its heels は、Fox をその場に固定させ身動きできない状態、つまり厳しい状態に置くイメージが浮かぶ。

 2020年の大統領選挙で選挙結果を改ざんしたとうその主張をメディア大手のFox Newsが広めたとして、選挙の投票システム大手企業のDominion社がFox Corporationを提訴した訴訟案件を扱った記事だ。訴訟に関連する用語が多く出てきて難しいがアメリカ関連の記事では頻出するので基本的な表現は覚えておいて損はない。libel の同義語として defamation が名誉棄損の意味で言い換えられ、suit の代わりに lawsuit が使われている。litigation は訴訟のことで、派生語である litigant(訴訟当事者、訴訟中の)、litigate(訴訟を起こす、法廷で争う)、litigious(訴訟好きな)もよく目にする法律用語だ。
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The Japan Times, August 11, 2022
New defense chief has work cut out for him – again
新防衛大臣、再度、難局に向き合う

has (one’s) work cut out for ~: ~に困難な仕事が待ち構えている。

 この cut out for は、work と つながって have work cut out for one となると、このheadline のように新防衛大臣に困難な仕事が待ち構えている、という意味になる。一方、cut out for は She is really cut out for the job. (彼女はまさにその仕事に適任だ)のように、生まれつき~に向いている、~に適任だ、という意味になるので注意が必要な表現だ。

 本文中では、From China’s growing military assertiveness to North Korea’s nuclear saber-rattling, new Defense Minister Yasukazu Hamada will have his work cut out for him from day one as he confronts a number of looming challenges. となっており、ロシアのウクライナ侵攻と中国・台湾間の軍事的な緊張の増大を背景に、今回の内閣改造では最も注目が集まった人事の一人だろう。again とあるのは、浜田大臣は、衆議院10回当選の千葉県選出の議員(a 10-term Lower House lawmaker representing Chiba Prefecture)で、麻生政権時代の2008-2009年に防衛大臣を経験しているからだ。
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The Japan Times, August 6, 2022
Tokyo and Beijing lock horns at key ASEAN meet
日中、主要なアセアン会議で対立

lock horns: hornは動物の角(つの)で、正面から角をロックするように突き合わせて戦う姿が由来だろう。意見が対立する、けんかするという意味。hornは、楽器のホルン、トランペットの意味もある。

 8/5にプノンペンでアセアンや日米中ロ等、18ヶ国が参加する東アジアサミットが開催された。アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問直後でもあり、米中間の緊張が一連の会議に大きく影響したようだ。林外務大臣に演説の順番が回ると、中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相は退席してしまった。ペロシ下院議長の台湾訪問に反対する中国が台湾近海で軍事演習を行ったことを非難する日本に抗議する意思表示だ。

 日本を含むG7の外相は8/3にペロシ氏の台湾訪問を受けた中国の軍事演習に懸念を表明した。4日に予定していた日中外相会談は中止され、林外務大臣は中国の軍事活動に重大な懸念を表明(expressed grave concern)した。
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New York Times, July 28, 2022
China plays hardball with troubled debtors. That’s dangerous for all of us.
中国は支払い困難な債務者に譲歩せず強硬で威圧的な対応。中国の姿勢は全ての関係者にとって危険。

play hardball: 元は野球用語で、軟球(softball)ではなくて硬球(hardball)でプレーすることのようだ。本気で、手加減なしで勝負することから、「相手の立場や心情などを考慮せずに、自分の主義主張を通すためになりふり構わず対応する」という意味合い。

 中国の銀行は過去10年以上に亘って、自国の一帯一路政策(Belt and Road Initiative)実現に向けて途上国に対して寛大に融資を行ってきた。政治と経済が一体となって貧しい国の港や鉄道網の建設や、通信ネットワークの構築を支援してきたが、ここにきて多くの国が債務返済に支障をきたしているのである。だが、中国は債務の取り立てに関しては寛大さを全く見せていない。債務不履行に陥った国は当然中国以外からも融資を受けており、債権国が協議して債務免除や債務の削減を含む debt relief program(債務救済プログラム) を組むのが一般的だ。IMFやParis Club(22ヶ国からなり債務救済案を調整する)等がその役割を果たす場合が多いが、中国が自国からのの債務免除に難色を示し、アジアやアフリカ、ラテンアメリカで債務返済に問題を抱える国の債務救済をより難しくしているのが現状だ。
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Japan Times, July 22, 2022
Bank of Japan stands pat as global outlier
日銀、世界の例外としての立場を維持

stand pat: patは、きっちりと、ぴたりと、の意味。stand patで、意見を変えようとしない、現状維持を主張する、ということ。
outlier: 例外、異常値、特異な例。

 海外の中央銀行が相次いで利上げをする中、日銀は積極的な金融緩和政策(aggressive monetary easing policy)を継続している。日銀は、2022年度の予想インフレ率を1.9%から2.3%に引上げた一方で、経済成長率を2.9%から2.4%に引き下げた。日銀の黒田総裁の主張は一貫している。物価上昇の目標を2%に据置き、その目標を安定的かつ持続可能な(stable and sustainable)実現に向けて最適な金融政策を実施していく方針に変更なし、との判断だ。

 最近のドルに対する円安傾向については、”it’s highly unlikely that implementing just a small rate hike will stop the weakening of the yen” (少し金利を上げても円安が止まることは到底考えられない)とし、利上げによる円安是正策には否定的だ。
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New York Times, July 16, 2022
Young voters are fed up with older leaders
若い有権者は年老いたリーダにうんざり

are fed up with ~: ~にうんざりしている、飽き飽きしている。fed は feed(食べ物を与える)の過去分詞で、feed に up を付けることで「飽きるほど食べさせる」というニュアンスに。

 日本の政治の記事だろうと思ったらアメリカの話だった。現職のバイデン大統領は現在79歳で、Nancy Peloci下院議長(the House speaker)は82歳、Steny Hoyer下院院内総務(the Majority leader)は83歳とのこと。あのトランプ氏も76歳と高齢だ。日本の国会の重鎮たちと大して変わらない高齢化ぶりに驚いた方も多いだろう。

 The New York Times と Siena College の調査によると、18-29歳のうち、たったの1%しかバイデン大統領の職務内容に対して高い評価をしておらず、30歳以下の民主党員の94%は2024年の大統領選には別の候補を求める、という結果になった。年齢層別では、2年後の大統領選で、(仮定の話だが)バイデンにもトランプにも投票しないとしたのは若年層が最も多かった。多様性や中絶問題、銃規制、気候変動対策など米国の喫緊の課題に対し世代間のずれ(generational gap)が埋めがたいほど大きくなっているようだ。
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Japan Times, July 12, 2022
Musk’s about-face on Twitter shifts takeover saga to the courtroom
マスク氏、ツイッターの買収撤回し法廷闘争へ

about-face: 180度の方針転換、急に考えを変えること、回れ右をする(こと)。
takeover saga: 買収劇。takeoverは敵対的買収で、sagaは、冒険物語、英雄物語、事件。
courtroom: 法廷

 テスラCEOのElon Musk氏は、440億ドル(約6兆円)で買収の合意をしていたツイッター社に対して買収の撤回を決めたことを通知した。撤回の要因はボット(bot)と呼ばれる実体のない偽アカウントの存在だ。ツイッター側はボットの比率は全体のアカウントの5%未満としているが、マスク氏は20%以上はボットだとしてその情報開示を要求してきたが十分に開示はなされず、買収契約の複数の条項に違反した、と主張している。

 ツイッターのようなプラットフォーマーの大半の収益源は広告収入だ。偽アカウント比率が大きくなればなるほどツイッター社の業績に悪影響を及ぼすことになるわけだ。双方が結んだ契約には、他の買収契約にも盛り込まれる「MAE条項」がある。MAE条項とは、material adverse effect のことで、ツイッターの事業に重大な悪影響がないことを履行の条件にするというものだ。マスク氏はボットに関する情報を正確に得ることができないことがMAE条項に抵触するとして買収撤回を決めたようだ。
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New York Times, July 4, 2022
Japan’s way of curbing Covid: Peer pressure
日本流コロナ抑制法: 同調圧力

curbing: curb(抑制する)の名詞形
peer pressure: 同調圧力 peer は同僚、同輩、同年代の人々

 日本は世界のほとんどの国よりコロナの抑制に成功していると見られている。最近の猛暑でも街を歩く人や電車内の人のほとんどがマスクをしている光景は海外ではまずあり得ない。日本のコロナに罹った人の死亡者の比率は米国の1/12で先進国の中では最も低い。日本は世界第3位の経済大国で人口は11位に位置するがワクチン接種率は最も高く、感染率は最も低く抑えられている。

 日本は法律によってロックダウンや強制的なワクチン接種ができないにもかかわらず、コロナの封じ込めに成功している主な要因は社会的同調(social conformity)にあると専門家は見ている。多くの人は政府や自治体が発するガイダンスに従順に従い、やがてほぼ全ての人が同調してマスクをしてワクチン接種を受けてきた。日本はワクチンの入手が遅れたため出遅れはしたものの、65歳以上の90%がブースター接種を済ませているが、米国では高齢者の70%しか受けていないのが現実だ。
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Japan Times, July 2, 2022
Firms say they can’t afford new hikes to minimum pay
企業は今年の最低賃金引上げ余裕なし

can’t afford: +to 動詞/+名詞で、~する余裕がない。
hike: 価格や物価の上昇、引上げ。
minimum pay: = minimum wage 最低賃金

 6月28日に厚生労働省は省内の最低賃金審議会(minimum wage panel)を開き、2022年度の最低賃金改定の協議をスタートさせた。この審議会が経済情勢や賃金実態を踏まえて目安となる金額を示した後、全国の都道府県の審議会が金額を決定した上で10月から適用することになる。今年の焦点は物価高の影響がとりわけ大きいことだ。輸入に頼るエネルギー価格高騰と、日本の長引く低金利制政策の影響による円安が主な要因だ。

 政府は全国平均の最低賃金を時給1,000円以上を目指しており、昨年の平均は、前年比28円上乗せし930円となっている。物価が上がれば実質的な賃金は減るので労働者側は最低賃金の引上げを要求する一方で、企業側は物価高によるコスト増や長引くコロナ禍で経営体力が弱っている。とりわけ中小企業にとってはまさに死活問題となるだろう。
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New York Times, June 27, 2022
Fleeing strife, Ukrainian teens are at loose ends
戦闘逃れたもののウクライナのティーンはすることがない

flee: (過去形、過去分詞形ともfled)~から逃れる
strife: 争い、けんか、戦闘、ここではロシアによるウクライナ侵攻。
loose ends: ひもなどの結んでない端、何もすることがないこと、仕事のやり残し。tie up the loose ends で、やりかけの仕事を完成させる。

 この文は分詞構文と呼ばれるもので、カンマの前の Fleeing strife の主語は カンマの後の主語であるUkrainian teensと同一で、After/Even though Ukrainian teens fled strife, they are at loose end. という意味だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻によって、多くのウクライナ人が国外に逃れた。18歳以上の男子は国外への逃避を禁じられているため多くが女性と18歳未満の男子だ。隣国のポーランドは最大の受け入れ国だが、家族と離れ離れになって単独で逃れてきたティーンも多い。彼らは国内の戦火は逃れたものの、特段することもなく近くの公園に集まってぶらぶら過ごしているようだ。
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New York Times, June 17, 2022
A region bearing the brunt of climate change
気候変動の影響をまともに受ける地域

bear the brunt of X: Xの矢面に立つ、Xをまともに受ける、真っ向から立ち向かう。brunt: (攻撃の)矛先、大きな重荷。

 気候変動の影響は地球上の至る所に現れているが、とりわけインドを含む南アジアで顕著なようだ。世界人口の約1/4を占めるこの地域では季節外れの大雨や洪水が発生し熱波が長引いていて、この兆候が常態化している。雨量が異常に多い一方で飲み水が不足し、コレラが大発生しているエリアもある。インドとパキスタンでは過去122年の間3月が最も気温の高い月だが、降雨量は通常より60-70%少なくなっている。この地域では気温上昇の時期が早まり、高温の期間が長くなってる。インドのニューデリーでは5月に49℃を記録している。
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Japan Times, June 15, 2022
A sneak peek at the future of Japanese security policy
日本の安全保障の将来のプレビュー

sneak peek: sneak は、こそこそこする、忍び寄る; 内密の、といった意味。peek は、のぞき見、盗み見なので sneak peekで、発売前の商品や、公開前の施設や映画のプレビュー、先行上映、試写会、内密に一部を見せること。頂点や頂点に達する、を意味する peak は同音異義語なので注意が必要。

 岸田首相は、6/10にシンガポールで行われた安全保障会議(Shangri-La Dialogue)に出席し、平和のための岸田ビジョン(Kishida Vision for Peace)を発表し、日本として外交・安全保障面での役割を強化していくことを宣言した。5本の柱からなるビジョンは、
(1)ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化。特に「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開。
(2)日本の防衛力の抜本的強化、日米同盟の抑止力・対応力の一層の強化。有志国との安全保障協力の強化。
(3)「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進。
(4)国連安保理改革を始めとした国連の機能強化。
(5)経済安全保障など新しい分野での国際的連携の強化。
となっている。

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New York Times, June 9, 2022
Stagflation threat bedevils U.K. businesses
スタグフレーションの兆しが英国のビジネスに暗い影

stagflation: 不況下での物価高
threat: 脅迫、脅しの意味もあるが、ここでは前兆、兆し。
bedevil: 心配事が人を悩ませる、ひどく苦しめる。

 stagflation は stagnation(景気低迷、低成長、停滞)とinflation(物価上昇)の合成語。記事中には a ruinous mix of stagnant economic growth and rapid inflation と説明している。1965年に保守党議員が議会で使ったのが初めてされているようだ。当時は労働者のストライキと政治不安が募り、失業率が高まりインフレ率が2桁の大台に乗った大変な時代だった。

 最近の英国の物価上昇は異常なほどだ。記事によると肉の価格が33%ほど上がり、ナタネ油は20ℓで14£(2,310円)から38£(6,270円)に値上げされた。実に2.7倍強の価格上昇だ。パブの経営も大変だ。ビールの卸値が上がる一方で、従業員の引き留め策で20%の賃金アップを迫られた。英国は消費者物価がここ40年で最速のペースで上昇しており、9%のインフレ率を記録したが、2月の経済成長率はゼロ成長となり3月はマイナスに転落したようだ。英国中銀は、インフレ率は年内に10%まで上がり、来年はマイナス成長になると予想している。

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New York Times, June 2, 2022
Omicron wave took a  toll on older Americans
オミクロンの波はアメリカの高齢者に大打撃

take a tall on A: Aの命を奪う、Aに犠牲を強いる、Aに被害や損害を与える。

 toll は有料道路(toll road)の通行料や、鐘がなる、という意味があるので合わせて覚えておきたい。この使い方では通例 toll は単数扱いとなり、take a heavy toll of lives(多数の死者を出す)などと表現する。

 コロナを原因とする死者はアメリカが圧倒的に多くすでに百万人を超えている。最近の1日当たりの死者数は400名以下で最小レベルに落ち着いているようだが、記事中のグラフで示されたように65歳以上の高齢者に関して気がかりな点が3つある。1点目は、昨年流行したデルタ株の時に比べて高齢者は若い世代(12-64歳)より高い比率で死者が出ていることだ。若い世代では、人口に対する死者数の割合がデルタ時を基準にするとオミクロン時は69%と大きく減少しているのに対し、高齢者ではデルタの時期に比べてオミクロンの波の際は163%となり6割以上増加している点だ。2点目は、ワクチン未接種者の死亡者がワクチン接種者と比べると圧倒的に多いことだ。比率でみると10万人に対して未接種者は156人、1回の接種者は24人、2回以上の接種者は7人と歴然とした差が出ている。3点目は、ワクチン接種率の低さが指摘されている。一度もワクチンを受けていない高齢者は13%おり、ブースター接種を受けた高齢者は60%程度と低く、オミクロンの波が襲来して以降もあまり増えていないことが報告されている。
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Nikkei Asia Step up English, May 25, 2022
Fast-charging Tesla and Hyundai leave Japanese EVs in the dust
急速充電のテスラと現代 日本製EVを置き去り

leave A in the dust: Aを圧倒する、Aを圧倒的な速さで抜き去る、Aに屈辱を与える。

 今回は日経新聞 5/25付夕刊の Step up English の記事を取り上げた。leave A in the dust は、「自分の車が勢いよく巻き上げたほこりの中にAを置き去りにする」ことから、他の競争相手を尻目に猛スピードで抜きんでる様子がイメージできる。記事の内容が各メーカーがしのぎを削って開発競争をしているEV車だけにぴったりの表現だ。

 今月発売になった現代自動車の Ionic 5(アイオニック 5)は昨年に韓国と北米で発売開始されているが、たった5分間の充電で220kmの走行が可能だ。また、テスラはEVの急速充電の技術を開拓し、同社の主力車種 Model 3 向けに15分の充電で275kmの走行を可能にする高速充電技術を開発したとしている。いずれのメーカーも、低出力の充電器(low-output chargers)が必要なため長時間の充電時間を要す日本製EVに大きく差をつけた格好だ。

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New York Times, May 25, 2022
A president’s pattern of speaking off the cuff
バイデン大統領お決まりの思いつき発言

off the cuff: 事前の準備なしの、思いつきの。後ろに名詞がつく場合は、an off-the-cuff speech(即興のスピーチ) のようにハイフンでつなぐ。cuff はシャツのカフス、袖口のこと。ワイシャツのカフスに即席で書いたメモを見てスピーチしたことが由来とされる表現で、(発言などが)原稿なしの、思いつきの、という意味だ。

 5月23日にバイデン大統領は岸田総理大臣との会談後の記者会見に臨んだ。中国が台湾に軍事侵攻した場合に米国が軍事的に関与する意思はあるか(Are you willing to get involved militarily to defend Taiwan, if it comes to that?)との質問に明確にイエスと答えた。その上で、それが我々の約束だ(That’s the commitment we made.)と発言した。

 アメリカ政府はバイデン大統領のこの発言を受けて即座にコメントし、米国は台湾に対してはこれまで通りの「あいまい戦略」(strategic ambiguity)に変更はないとし沈静化を図った。このような外交の場では当然予想される想定問題集は綿密かつ詳細に事前に準備されており、大統領がこれほど重要な事案に思いつきで軽はずみな発言はしないだろう。後から修正するのを見越して本心を口にした、と見ている専門家が多いのではないだろうか。

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New York Times, May 19, 2022
Even protests over Roe reflect nation’s division
ロー対ウェイド裁判をめぐる講義でもアメリカ社会を分断

Roe: ここでは1973年のRoe v. Wade 判決のこと。Jane Roe がテキサス州の地方検事 Henry Wade を相手に中絶合法化を求めて訴えた訴訟。

 アメリカを理解する上で必ず知っておきたい歴史的な判決がいくつかあるが、この Roe v. Wade はその一つだ。妊娠中絶の是非は長い間アメリカ社会を二分してきたが、1973年、連邦裁判所は Roe v. Wade 裁判で、中絶を禁止するテキサス州法を違憲とし女性が妊娠中絶する権利を認める判決を言い渡した。最高裁は、プライバシーの権利は広範で、中絶を選ぶかどうかという個人的な決断をも含むと判断したものだ。

 ところが、2019年以降、多くの州で中絶を禁止したり制限する法律が成立している。また、9名いる合衆国最高裁判所の判事の中にも中絶禁止を支持する判事がいるが、家の周りを中絶擁護者が取り囲むように抗議のデモ行進をしたり、中絶を行うクリニックや医師らが激しい非難を浴びせられたりと、アメリカ社会を分断する動きに発展しつつあるようだ。

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Japan Times, May 11, 2022
Fall and rise: Marcos family returns to power in the Philippines
陰と光: 比でマルコス家が再び権力の座に

fall and rise: fall は落下、衰退、崩壊のことで、rise は上昇や繁栄を意味する。よく目にする表現は、順番を入れ替えた rise and fall の方で栄枯盛衰、盛衰、浮沈という意味合いだ。

 5月9日に実施された大統領選挙ではFerdinand Marcos 元上院議員が対立候補に大差をつけて圧倒的な勝利(landslide victory:地滑り的勝利)を収めた。父の元マルコス大統領は1965年から1986年までの在任期間中様々な改革を行ったが、1972年の戒厳令(martial law)布告以降は独裁色を強め、1986年のピープルパワーにより国外逃亡に追い込まれた。

 父と共にハワイに亡命した、当時28歳だったマルコス氏は父の死後1991年に家族と共に帰国が許され、地盤である北イロコス州知事や国会議員を経て、ついに大統領選に勝利するに至ったのである。マルコス一家にとってBongbong(マルコスの愛称)の大統領選勝利は待ちに待った瞬間だったろう。母のイメルダ夫人は現職の下院議員で、姉のImeeは上院議員、息子のSandroは今回の選挙で下院議員に当選したようだ。また、ImeeのMathewは北イロコス州知事に再選を果たした。
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Japan Times, May 4, 2022
As war drags on, India continues to walk a fine line
戦争が長引く中、インドは微妙なバランスを維持
 

walk a fine line: この fine は、細かい、微妙な、を意味し fine line で微妙なバランス/境界線、紙一重の差、を表わすので、walk a fine line: 微妙な境界線を行く/微妙なバランスを維持する、となる。

 ロシアによるウクライナ侵攻が続いているが、インドの立ち位置が微妙だ。インドはこれまで、多くの国が求めるロシアによる暴力の停止の呼びかけに同意はするものの、ウクライナ侵攻に関する国連決議には全て棄権し中立の立場を維持している。

 インドにとってロシアは長年の友好国であり、密接な軍事協力関係にある。中国と国境の係争地で対立するインドはロシアから大量の武器を購入し、武器の共同開発も進めてきている。インドは米国や、フランスなどからも武器を購入し調達先を多様化しているが、それによってロシア製を代替することは容易でないしその意思もないだろう。インドは今後も中立的な姿勢を維持し、当事国の一方を名指しで非難することはせずに、両者が対話と外交を通じて解決することを主張し続けることになるだろう。

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New York Times April 29, 2022
America has an empathy deficit
アメリカでは他人を思いやる気持ち欠乏している

empathy: 共感、感情移入。英英辞書には、the ability to understand other people’s feelings and problems とある。
deficit: 欠如、不足、赤字。

 empathy と類義語の sympathy は、共感、同情、哀れみ、思いやり、などと訳されるが empathy とは微妙なニュアンスの違いがある。英英辞書には、the feeling of being sorry for someone who is in a bad situation とある。他人の感情を察して分かち合うのが empathy で、他人の不幸や不運をかわいそうに思うのが sympathy といった具合だ。

 アメリカではCovid-19 は、新規感染者数や入院患者数、死亡者数が低位で推移し収束に向かっているものの、根絶することは困難で、今後、年1回程度のワクチン接種が望ましいとするファウチ博士の見解が発表された。世界的なパンデミックの局面からコントロールの利くエンデミック(風土病)の局面へと移行する過渡期にあるという。先週発表されたある調査が興味深い。コロナ禍が発生した初めの9ヶ月間では、低、中所得者層への経済的打撃が特に大きく、2019年と2020年の比較では低所得者層の中央値の年収(median income)は3.0%減少し、中所得者層では2.1%減った。一方で、高所得者層の中央値は変化なしとの結果が出ている。アメリカの富裕層はオンラインで買い物をして延期になった休暇を夢見ている一方で、多くの国民は絶望的な境遇に陥っているのだ。そうした環境下で、飢え、トラウマ、暴力といった社会悪が益々悪化の一途を辿っている。パンデミック後の議論の中心は厳重な取り締まりや施しであって、コロナ禍で心身共に傷ついた人々の治療や心の支え方などは置き去りにされているようだ。

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NYT April 15, 2022
Swedes and Finns could shed neutrality
スウェーデンフィンランドが中立を捨てるかもしれない

Swedes: スウェーデン人、スウェーデンを指す。Swedish: スウェーデン人(の)、スウェーデン語(の)
Finns: フィンランド人、フィンランドを指す。Finnish: フィンランド語、フィンランド(人/語)の。finish と同音なので注意。

 Swedes and Finns はそれぞれスウェーデン人とフィンランド人のことだが、Sweden and Finland を意味していて北欧諸国(Nordic countries)のうちの2ヶ国だ。記事中は全てSweden と Finland で統一しているが、ヘッドラインでは字数の関係で Finlandの代わりに 2文字少ないFinnsを使い、呼応させる形で、こちらは字数は同じだが、Sweden を Swedesにしている。

 スウェーデンとフィンランドは1995年にEUに加盟したが、NATO(北大西洋条約機構)には未加入のままで軍事的には中立を維持してきた経緯がある。両国は東側にロシアがあり、フィンランドはその国境の1,300kmをロシアと接している。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、両国ではNATO加盟を支持する国民が一気に増しているようだ。スウェーデンの国民は50%がNATO加盟に賛成だが、もしフィンランドが加盟するのであればスウェーデンもそうすべきと回答した国民が62%に上った。一方、フィンランドでは68%が加盟に賛成で、大統領と政府が推進するのであれば賛成と答えた人が77%と大多数を占めた。

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JT April 13, 2022
Macron and Le Pen trade barbs ahead of runoff
決選投票を前にマクロンとルペンが非難の応酬

trade barbs: tradeは貿易する、交換する、の意味。barbは、釣りの針の引っ掛り、とげ、酷評。
runoff: 上位者や同意者による決戦、上位者による決選投票。地表を流れる雨水、の意味もある。

 4月10日に行われたフランスの大統領選挙はトップに立った現職のマクロン大統領と次点で極右の候補者(far-right challenger)ルペン氏による2週間後の決選投票(runoff)に駒を進めた。マクロン vs ルペンの決選投票は2017年の大統領選挙の再現となる。前回の決選投票では66%を獲得したマクロンが当選を果たしたが、調査によると今回は接戦が予想されている。

 マクロン氏はルペン氏のことを”demagogue(扇動政治家)” と呼び、国民の耳障りのよいことだけを話すとして非難する一方で、ルペン氏は、マクロン氏は生活費の高騰にあえぐ有権者に対して何の手だても打っていないとして非難している。

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JT April 9, 2022
Tokyo’s tough stand against Moscow comes at a cost
日本のロシアに対する強硬姿勢にはかなりの犠牲を伴う

tough stand against ~: ~に対する強硬姿勢 
come at a cost: 高くつく、かなりの犠牲を伴う

 Tokyoは日本や日本政府を意味し、Moscowはロシアやロシア政府のことだが、日本は他のG7と足並みを揃えてロシアに対して追加の制裁を表明した。日本はロシアとの間で北方領土の帰属問題を抱えているため、今回の一連の強硬な対ロ制裁は領土問題の解決にはかなりの犠牲を伴うことになるのは明らかだ。記事中では、繰返しを避けるため、tough stand が tough stance に、また、come at a cost が come at the expense が同様の意味で使われている。

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JT April 2, 2022
Governments around the world set their sights on obtaining better COVID-19 vaccines
世界中の国がより良いコロナワクチンの獲得を目指している

set one’s sights on ~ : ~に照準を合わせる、狙いを定める、得ようと強く望む。

 ここに出てくる sights は望遠鏡や銃などの照準のことで、set one’s sights on で実現が困難な大きな課題について表現する場合が合い。この使い方では常に sights と複数形になる。

 私も3月に3回目のワクチン接種を受けたが、日本を含めた多くの国で4回目のワクチンが予定されているものの、欧州と米国の公衆衛生の担当者はより良いCOVID-19対策を模索しているようだ。現行のワクチンは重症化と死亡のリスクに対しては十分効果的であるものの、感染を防ぐ効果や免疫の継続期間は数ヶ月以内で弱まるためだ。

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NYT March 28, 2022
Food prices cast a pall on Muslim holy month
(高騰している)食料品価格がイスラムのラマダンに暗い影を落とす

JT March 30, 2022
Yen weakness casts a pall over economy
弱い円が経済に水を差す

cast a pall: pall は、棺を覆う黒い布、暗くする覆い幕のこと。cast a pall で、暗い影を落とす、水を差す、となる。

 今回の cast a pall は、偶然にも NYT (3/28)と JT (3/30)で間を置かずにヘッドラインで使われた。pall は日本人には馴染みがない単語だが cast a pall はセットで割と見かける表現だ。Muslim holy month とは Ramadan のことで、イスラム教の9月を指し、今年は4月1日-30日だ。神聖な月とされ、日の出から日没までの間飲食を断つ断食を行うが、一旦日が沈むと豪華な食事を家族や親せきで楽しむようだ。最近の食料品の高騰によりラマダン用の食材の調達が困難になり各地でイスラム教徒の悲鳴が聞こえている。

 一方、日本では円の価値が急激に下がり1ドル125円近辺まで売られている。主な要因は日米金利差の拡大だが、この円安により輸入物価が高騰して期せずしてインフレに突き進むことになる。収入の伸び以上に物価高が進むことで日本経済に暗い影を落とすことになりそうだ。

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NYT March 21, 2022
Rising gas prices could be ‘final straw‘ for gig drivers
ガソリン価格高騰が配車サービス運転手とどめの一撃

final straw: 耐えられない負担(= last straw)
gig driver: 配車サービスアプリを使って単発や短期の運転を請負う個人事業者。ギグワーカーの一種。

 Final/last straw は、最後のわら一本のことで、ことわざの The last straw breaks the camel’s back.が由来。限界まで 重荷を背負ったラクダはその上にわら一本を積んだら背中が折れてしまうことから、final/last straw が最後の/とどめの一撃を意味する。記事中に”Higher gas prices are the final nail in the coffin” とあり、同様にとどめの一撃を意味するが、棺桶の蓋に打ち込む最後のくぎのことで、まさに万事休すとなる様子が目に浮かぶようだ。

 Uber、Lyft や DoorDashのような 配車やデリバリーのアプリを利用したドライバーにとっては最近のガソリン価格の高騰が死活問題となっている。ガソリンの値上げ分はドライバー負担となるため、稼働時間を減らして対応したり廃業した運転手も多い。米国における3月のガソリン価格の最高値は1ガロン(3.785ℓ) あたり$4.33(日本円換算で136円/ℓ)だが、カリフォルニアでは平均で$5.77( 同181円)となり、地域によっては割高感が顕著だ。

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JT March 12, 2022
China may cozy up to Japan to beat economic slump
中国、経済低迷打破のため日本にすり寄り

cozy up to: ~にすり寄る、取り入る。cozy は居心地のよい、なれ合いの、という形容詞のほかに動詞用法もあり、cozy up to ~で、~に取り入る、親しくなろうとする、という意味になる。

 中国の習近平(Xi Jinping)総書記は、秋の共産党大会において3期目の政権を確実にする上で経済の安定成長を最重要課題に挙げているが、実体経済は思惑通りには推移していない。2021年の経済成長は8.1%と順調だったが、直近の10月-12月の四半期は潜在的な金融マーケットの動揺( potential financial market turmoil )とコロナの再拡大の波の影響を背景に4%成長にとどまった。首相の李克強(Li Keqiang)は全国人民大会の冒頭で、2022年のGDP成長率の目標を6%強から5.5%前後に引き下げた。

 こうした状況を踏まえ中国は日本に経済面での協力を求めてくる可能性は否定できない。一方、日本とすると、中国の台湾に対する安全保障の問題や、政府による日本の外交官の拘束、ロシアによるウクライナ侵攻に対する非難を躊躇していること、などから中国にとっては期待はずれの対応となる可能性が高い。

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NYT March 10, 2022
Hospitals in the cross hairs
病院が攻撃のターゲットに

in the cross hairs: cross hairs は光学機器の焦点についている十字線で、in the cross hairs で、照準を定めている、攻撃の的になっている、という意味。

小見出し(subhead/deck)には、As Russian bombings become indiscriminate, doctors are in danger とあり、プーチン率いるロシア軍の爆弾投下が無差別になり(become indiscriminate)、病院が狙われている。ウクライナの保健省によると、34の医療施設が破壊され少なくとも10人の医師が殺されたとしている。

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NYT March 9, 2022
Banks turn a blind eye on scammers on Zelle
銀行、Zelle を利用した詐欺師見て見ぬふり

turn a blind eye: (悪事やトラブルに対して)見て見ぬふりをする、無視する。
scammer: 詐欺師
Zelle: 2017年創業の米国のフィンテック企業で個人間送金大手。提携する銀行が運営する口座管理アプリやWebサービスの機能として導入されている。

 アメリカでは多くのフィンテック企業が出現しては消えていくが、2017年にサービスを開始したZelle は先行する同様のフィンテック企業を短期間で抜き去った感すらある。2021年の米国における資金送金額は、Zelle経由が49百億ドルで、先行するライバル企業のVenmo経由が23百億ドルとなっている。食事の際の割り勘やちょっとした買い物の建替えをした時など、簡単にスマホ上のZelleのアプリに金額を入力して”Pay” ボタンをタップするだけで手数料なしで送金が完了する。

 Zelleが米国で流行っている理由は、支払う相手に銀行の口座番号を知らせずに送金を受取れる点だ。相手の名前、メールアドレス、電話番号を知っていればオンライン上で送金ができてしまう。米国でも不正防止の観点から自分の口座番号を教えたくないという人が多く、そうした人にとってはニーズを満たすサービスとして一気に流行ったようだ。ところが、最近はZelleを利用した詐欺行為が横行し、被害を受けた人が取引銀行に掛け合っても、銀行の責任ではない、として取り合ってくれないケースが多い。Zelle のネットワークは米国の主要7銀行が設立したEarly Warning Services が運営しているが、Zelle を使う1,425の銀行が Zelle のアプリをカスタマイズし、各行が独自のセキュリティを追加できる仕組みになっている。

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NYT February 26, 2022
Invaders bear down on Kyiv
侵略者、キエフに迫る

bear down on ~: 敵や災いがどっと押し寄せる、上から押しつける、責任や税金などが重くのしかかる。bear には多くの意味があるが、downと結びつくと敵を圧倒したり、打ち負かすといったニュアンスになる。

 Invaderと表現されたロシア軍が、侵攻して数日でウクライナの首都キエフ(Kyiv)に迫ってきている。今回のNew York Times 1面のヘッドラインは大見出しになっていてこのヘッドラインに対応する記事はなく、1面の4つの記事は全てロシア軍によるウクライナ侵攻に関連したもので、それぞれに対応したヘッドラインがついている。それだけ今回の侵略行為が大方の予想を覆し、世界中の注目を集めるニュースになったということだろう。

 ところで、ウクライナの首都キエフのつづりについてはJapan Timesやその他のメディアも英語での表記は Kyivとなっているが違和感を持った人もいるだろう。筆者もその一人で Kiev ではないかと思い調べてみたところ、Kiev はロシア語を反映したつづりで、Kyiv はウクライナ語読みを反映しており、1995年以降、英語表記では Kyiv が使われているようだ。

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JT February 25, 2022
Hay fever could be mistaken for omicron: experts
花粉症、オミクロンと間違えられるかも、と専門家

hay fever: hayは干し草や枯草のことだが、hay feverで、枯草熱や花粉症のこと。花粉はpollenで、pollen allergyも花粉症を意味する。
A could be mistaken for B: AがBと間違えられるかもしれない。

長かった今年の冬もやっと終わったようで先週末から暖かくなってきて、東南アジア勤務が長かった者としてはありがたい季節になってきた。とはいえ、花粉症の人にとっては例年以上に厄介な時期のようだ。感染力の強いオミクロン株( highly transmissible omicron variant )の症状と花粉症による症状が似ており区別がつきにくい、とウィルス学者( virologists )は述べている。目のかゆみは花粉( pollen )が原因だが、37.5℃以上の高熱はコロナによる可能性が高いようだ。但し、オミクロン株の症状にも、鼻炎アレルギーによる頭痛、倦怠感、喉の痛みを伴うことがあるとのこと。

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NYT February 22, 2022
For Belarus, Putin no longer at arm’s length
ベラルーシにとってプーチンはもはや独立した関係ではない

arm’s length: 腕の長さ=近づきすぎていない関係⇒よそよそしい関係、となる。

 Arm’s lengthは英文契約書で使われる場合、主従関係や上下関係ではない独立した対等な関係を意味する。また、税務面では、移転価格税制において、海外の企業との商取引が、独立した企業間価格(Arm’s Length Price: ALM)、つまり、関係者間ではない独立した第三者間において取引が行われた場合に成立する価格を表わす。

 ベラルーシはウクライナの北に位置し、その国境から約100kmのところにウクライナの首都キエフがあるため、ウクライナの東側の国境を接するロシアにとっては重要な同盟国だ。ロシアはベラルーシと合同で軍事演習を行っていたが、ウクライナ情勢の緊張を理由にロシア軍の駐留継続を決めた。プーチンは19日にベラルーシのルカシェンコ大統領とのロシア大統領府での会談の際に、ミサイル発射を含めた軍事演習を直接指揮し両国の密接ぶりを披露した。ルカシェンコ大統領は今となっては、ウクライナとの対立においてロシアの命令に忠実に従がっている( Lukashenko now does Russia’s bidding in Ukraine confrontation.)。

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JT February 16, 2022
Who’s really calling the shots in the Prime Minister’s Office?
内閣実権を握るのは誰?

call the shots: 采配を振るう、決定権を持つ、命令する。射撃訓練で上官が、「(弾を)撃て!」と命令したこと生れた表現とされる。
the Prime Minister’s Office: 首相官邸、内閣府( Cabinet Office)

 世界のほとんどの国では、大統領や首相等、呼称はさておき、国家元首や政治のトップが実権を握り采配を振るうのが一般的だろうが日本の場合はそうはいかないようだ。岸田首相は与党である自由民主党(Liberal Democratic Party)の総裁ではあるが、自民党内にある派閥(faction)のうち4番目の勢力である宏池会のトップに過ぎない。そのため、安倍、麻生、茂木がそれぞれ率いる上位3派閥の協力を取り付けることが、政権運営には必要不可欠なのである。

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NYT February 3, 2022
Xi and Putin see eye to eye on many issues
習 近平とプーチンが多くの問題で意見が一致

see eye to eye on ~: 見解が一致する、そりが合う、仲良くやる。

 Xi とは中国国家主席の Xi Jinpingのことだが、中国国家主席の英語表記は China’s head of state, China’s leader, China’s president などが使われている。そのXi とロシアのPutin大統領が2月4日、北京オリンピック開催の前に北京ンで会談した。

 ロシアは2014年の武力によるクリミア併合以降国際社会から孤立し、最近のウクライナに対する軍事的な圧力で欧米諸国との対立が顕著になっている。中国はウイグルなどの人権問題や、台湾に対する武力による威嚇により西側諸国からは経済制裁を受け、北京オリンピックでは多くの国から「外交ボイコット」を受けた。中ロ両国に対する米欧という共通の利害(common cause)対象の存在が、今回の首脳会談により中ロ関係を深化させている。

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NYT February 2, 2022
Why Boris is hanging by a thread
ボリス ジョンソン首相が風前の灯火のわけ

hang by a thread: a threadは一本の糸。一本の糸で吊ることから、状況が首の皮一枚で繋がっている様子、または、危機にさらされ風前の灯火の状態を表わす。

 英国のボリス ジョンソン首相がいよいよ窮地に立たされている。新型コロナ対策として厳しいロックダウンが敷かれていた最中に、首相官邸(10 Downing Street, the prime minister’s official residence)でのパーティに参加していた問題で謝罪に追い込まれた。ロンドン警察は現在、12のパーティについて法律違反の有無について捜査しており、その結果と政府による追加の報告書が近々公表される見通しだ。

 ジョンソン首相も所属する保守党(Conservative Party)の規約では、下院議員の15%にあたる54人が党首の不信任(no confidence)を表明すれば信任投票を実施することになる。すでに20議員程度が不信任状を提出したとされており、この内規の人数に達するかが当面の注目点になる。

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JT January 27, 2022
Ukraine warns Japan ofbutterfly effect
ウクライナ、日本に ‘バタフライ効果‘を 警告

warn A of B: AにBを警告する
butterfly effect: バタフライ効果、複雑なシステムにおいて、ある場所でのほんの小さな変化が遠く離れた場所で大きな影響を及ぼす現象。

 Butterfly effect の由来は、気象学者のEdward N. Lorenz氏が1972年に行った講演のタイトル “Predictability: Does the Flap of a Butterfly’s Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas?”(予測可能性: ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスでの竜巻を引き起こすか。) とされる。この表現は、BrazilとTexasを別の地名にして言い換えられることが多いが、ロシアによるウクライナ侵攻が緊迫感を増したのを機に、ウクライナのコルスンスキー( Sergiy Korsunsky)駐日大使が日本も対岸の火事ではないとして注意を呼び掛けた。

 コルスンスキー氏は、1月26日の記者会見で、現在置かれているウクライナの状況を踏まえ、台湾に対して中国が軍事的圧力を強めていることを念頭に置いて、もしロシアのウクライナ侵攻を許すことがあれば日本を含めた世界の他の地域でも似たような事態が起こりかねないと警告を発した。

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NYT January 8, 2022
A zero-Covid policy wears thin
ゼロコロナ政策は我慢の限界に

wear thin: thinは、薄い、細い、内容がない、等の意味だが、wear thinで、我慢できなくなってくる、廃れる、飽きられる、といった意味になる。

 北京オリンピックを1ヶ月後に控えて、ゼロコロナ政策を継続中の中国国内でもコロナ陽性者が増加中だ。西安の大学では1日おきに(every two days) 白い防護服を着た(dressed in white hazmat suits)清掃人が学生寮の廊下の消毒作業を行っている。学生たちは全ての授業をオンラインで受け、キャンパスの外に出ることはもちろん、各自の部屋を出ることもままならない状況だ。

 西安では、新たにコロナ陽性者が確認されて以降12月22日からロックダウンが実施されているが、これは2020年の武漢での感染の蔓延以降で最長の行動制限となっており、市民の生活に甚大な悪影響を及ぼしている。一人のコロナ患者も出したくない地方政府や病院は厳格にその対策を行おうとするため人命にかかわるトラブルが頻発している。外出しただけで殴られたり、陰性証明が所持していないために妊婦が病院から診察を拒否さて死産するといったケースがSNSで瞬時に拡散され人々の怒りを買っているのだ。国民を救うための厳格なコロナ対策が、逆に人の命を脅かすという本末転倒な結果を招いている。

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JT January 6, 2022
Motorcycle shipments on course to hit 23-year high
バイク出荷台数23年ぶりの高水準の見込み

motorcycle: =two-wheeler, バイク。bikeは自転車のこと。
shipment: 出荷、船積み。shipmentsで出荷台数。
on course to: 順調に~している、目標に向かっている途中で。

 2021年の国内のバイクの売れ行きが好調で、12月の販売数が出ていない段階で23年ぶりの高水準が見込まれている。コロナのパンデミック下で、走行中は確実にソーシャルディスタンスが保たれるとあってバイク人気に拍車がかかったようだ。新型コロナウィルス発生前は排ガス規制(regulations on exhaust gases)の問題もありバイク人気は落ち目になっていたが、幅広い世代からレジャー(leisure activity)として、また、移動手段(transportation method)として支持を得た格好だ。

 日本自動車工業会(Japan Automobile Manufacturers Association)によると、排気量(displacement) 51cc 以上のバイクは2021年1~11月の累計で233,059台販売され、2020年の同時期と比較して20.6%伸びた。12月の予想数字を含めると、2002年の235,755台を超えて1998年の318,080台以来の出荷数になるとのことだ。

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NYT December 27, 2021
Biden deploys antitrust team to look into price gouging
バイデン大統領、反トラストチームを配置し価格つり上げを調査

deploy: 布陣を敷く、(軍隊などを)配備する、展開する。
antitrust: 反トラスト(法)、独占禁止(法)
price gouging: 過度な価格つり上げ。 gouge は、動詞: だます、名詞: 詐欺。

 11月の米消費者物価指数は前年同月比+6.8%とは発表された。これは、ユーロ圏の4.9%や英国の5.1%に比べても高い水準で、今やインフレ対策がバイデン大統領が直面する最大の政治課題となっている。そこで、バイデン大統領は多くの産業分野で過度な価格つり上げの現状と張本人を突き止めるべく反トラストの専門家調査チームを立上げた。今回の急激なインフレは、コロナ禍において資源価格の上昇やコロナ後の需要拡大、グローバルサプライチェーンの混乱など様々な要因が存在するため、期待した成果が得られるかは予断を許さない。

JT December 23, 2021
Osaka sees first omicron community transmission
大阪で国内初のオミクロン株市中感染を確認

omicron: omicron variant(オミクロン株)のこと。variantは変異種、変形、同種の少し違うもの。
community transmission: 市中感染

 12月22日に、大阪で国内初のオミクロン型のコロナウィルスが確認された。ヘッドラインでは Osaka sees と seeの現在形(三人称単数)が使われているが、これは新聞のヘッドライン特有の表現で過去の事実を現在形を使って表わしている。

 大阪に住む、海外渡航歴がない家族3人が感染経路が分からない( through unknown routes )市中感染でオミクロン株に感染した( contracted the virus)。3人は30代の夫婦とその子供で、夫婦はワクチンを2回接種済でブレイクスルー感染とのことだ。政府は現在行っている水際対策( current border control measures )を当面維持し、今後の国内のオミクロン対策のための時間稼ぎ( buy time to prepare measures against the variant ) をする、としている。

JT December 13, 2021
Ideas to utilize pesky volcanic debris emerge
厄介な火山噴火による破片活用するアイデア生まれる

utilize: 役立たせる、活用する
pesky: annoying, troublesome、厄介な、頭を悩ませる
debris: がれき、破片。 最後のsは発音せず デブリ となり、複数形もdebris なので注意が必要。

 Volcanic debris は この記事ではpumice (軽石) あるいは pumice stone のことだが、発音は パミスとなるので注意したい。小笠原付近の海底火山が噴火して4ヶ月が経過したが、特に沖縄・奄美周辺では軽石が大量に漂着して漁業や観光業に甚大な被害を及ぼしている。

 一方で、a silver lining (希望の光、明るい見通し)が現れ始めたことを伝えている。厄介な軽石の活用方法として多くのアイデアが寄せられ take shape (具体化する)しつつあるようだ。軽石は high salt content and brittle nature (塩分を多く含み脆い性質) なのだが、海水の質の改善に効果がある可能性があり、radioactive water (放射能汚染水) 対策として有効という専門家もいるようだ。また、軽石は水はけが良いことからコーヒー農園の土壌の改善につながると考えた鹿児島の農園主が使い始めたようだ。

NYT December 10, 2021
A promise to Ukraine puts NATO in a bind
NATOはウクライナとの約束で厄介な事態に

put ~ in bind: ~を苦境に陥らせる、厄介な事態となる。bindは、動詞で、束ねる、とじる、の意味があるが、名詞で、厄介な事態、苦境、といった意味がある。

 このpromise は、2008年にNATO( 北大西洋条約機構 )が、旧ソビエト連邦の共和国だったUkraine と Georgia に対してNATOの加盟国参加を約束したことを指すが、その時期と方法は示されなかった。その後、Ukraine国内においても国民の間でNATO加盟支持の機運が盛り上がらかったこともあり、また、NATO加盟国でも反対派が多く現在でもその約束は果たせていない。

 ロシアは現在、隣国であるウクライナとの国境付近に軍隊を大規模に集結させ軍事進攻の準備をして一触即発の状態だ。厄介なのは、ロシアがNATOに対してウクライナのNATOへの非参加の保証を要求しており、NATO加盟どころか欧米諸国とロシアの溝は一層深まっている。

JT December 3, 2021
Japan retracts halt of new flight bookings
日本政府、国際線の新規予約停止撤回

retract: 撤回する
halt: (名詞) 停止、中止。 (動詞) 停止する、中止する。

 岸田政権が発足して間もないが早くも馬脚を露わし、国民の多く、とりわけ海外駐在員や日本人留学生とそのご家族を早くも敵に回してしまったことだろう。新たに発見されたオミクロン株( the new coronavirus variant, Omicron) の感染拡大防止策として発表した政策で、前政権の一連の対策の反省から、いち早く大胆な対策を打ったつもりが結局、朝令暮改に終わった格好だ。

 本文の冒頭の文が見出しの内容を表わしている。撤回した24時間以内に、’ …. Japan retracted its request for airlines to halt inbound flight bookings Thursday in a rapid reversal of a move that had roiled Japan’s citizens and residents abroad and even caught Prime Minister Fumio Kishida and his transport minister off guard.’
roil: 人を怒らせる、いら立たせる
catch ~ off guard: 予期せぬことが~を驚かせる、~の意表を突く。

JT November 30, 2021
Japan seals border as omicron fears spread
オミクロン株の恐れが広がり日本政府は国境を封鎖

seal border: seal は封をする、閉じる、なので seal the border で国境を封鎖する。close the border も同義だが、seal のほうがしっかりと密閉する感じで全面的に封鎖する印象を受ける。
fears: fear は動詞としての用法もあるが、ここでは、接続詞 as の後に続く主語がomicron fears で 動詞が spread だ。

恐れ、恐怖を表わす名詞 fear は可算名詞と不可算名詞両方の用法があり、具体的なfearの場合は複数形になりうるなどの説明がされるがnon-nativeには正確な使い分けは難しい。for fear of ~( ~を恐れて、~をしないように) 、a fear of heights (高所恐怖症)などの慣用句では単数形が一般的だ。

JT November 20, 2021
Four vying to lead CDP after poor election showing
衆院選の惨敗を受け4人が立憲民主党の代表を争う

vie to: vyingはvieの現在分詞形。vie to+動詞で、~することを目指して張り合う。
CDP: The Constitutional Democratic Party of Japan, 立憲民主党
poor election showing: 惨めな選挙結果。showingは、外観、成績、出来栄え。

 10月31日の衆議院選挙では立憲民主党は惨めな結果に終わり、110あった議席を96に減らした。責任を取る形で代表を辞任した枝野氏の後任として4人が立憲民主党の代表選に立候補した、というニュース。英語表記ではCDPで立憲民主党を表わすが、党の公式サイトや新聞記事などではThe Constitutional Democratic Party と The Constitutional Democratic Party of Japan が使われている。

 政党名は略語が使われることが多いので主要な政党は知っておいた方がいいだろう。自民党はLDP( The Liberal Democratic Party)、公明党は、そのままKomeitoで略語はないようだ。今回の選挙で大躍進して41議席を確保した日本維新の会の英文名はNippon Ishin と Japan Innovation Party が併記されている。日本共産党は JCP (Japanese Communist Party)となっている。

NYT November 13, 2021
Djokovic gets his groove back in Paris
ジョコビッチ パリで調子を取り戻す

groove: 石版やレコードなどの溝、ぴったりとはまる場所、適所、指定席、絶好調。
get his groove back: 彼本来の好調さを取り戻す(get ~ back)、ということ。in the groove で、絶好調で、とても調子がいい、となる。

 この見出しのParis は男子テニスのParis Masters の開催地のことだが、そのParis Mastersでジョコビッチが11月7日の決勝で ロシアのD. メドベージェフ(Daniil Medvedev)を破って優勝した。9月の全米オープンでは、決勝でメドベージェフにストレート負けしていたので、雪辱を果たしランキング No.1の実力を見せつけ好調さをアピールした。

 記事では ‘When Djokovic finally prevailed, 4-6, 6-3, 6-3, to win the Paris Masters for the sixth time ….’ と、prevail(勝つ、普及する)で決勝で相手に勝ったことを伝え、win the Paris Masters とwin を使って優勝したことを表現している。

JT November 9, 2021
Damaged Amazon rainforest teetering on the brink
傷ついたアマゾンの熱帯雨林 絶滅の危機

rainforest: 熱帯雨林
teeter on the brink: 存続・絶滅の危機に瀕している。teeter: よろめく

 環境問題ではrainforest や deforestation(森林伐採)、carbon dioxide emissions(二酸化炭素排出(量))、photosynthesis(光合成)などは頻出単語なので使えるようにしておきたい。carbon dioxide emissions は複数形で使われるので注意が必要だ

 アマゾンは世界最大の熱帯雨林で、”lungs of the Earth” (地球の肺) や “green ocean” (緑の海) と呼ばれ(筆者はこの記事で知りました)ており、人類が吐き出す空気汚染を吸い込み、我々がめちゃくちゃにしてしまった地球から人類を守ってくれている有難い存在だ。そんなアマゾンに大きな異変が見て取れるという。この60年の間に二酸化炭素排出量は50%増加し、世界でおよそ400億トン排出されているが、最近までアマゾンは年間20億トン吸収してきた。ところが、最近の調査では焼き畑農業のための野焼きや降水量の減少による砂漠化、牛の放牧などによりCO2を吸収してくれるどころか差し引きするとCO2を排出する側になってしまったというのだ。

NYT November 1, 2021
Escaping into the metaverse
仮想空間へ逃避

metaverse: meta(超~、高次~、先に)+universe(宇宙)からなる造語。SF作家 Neal Stephenson が自著 “Snow Crash” の中で記述した仮想世界を指す言葉が起源のようだ。現在では、インターネット上の仮想空間のことで、その中で自由に行動し他の参加者と交流できるサービスのことだ。

Facebookは、社名をMetaに変更したと10月28日の開発者会議で発表した。今後の成長の柱をFacebookやインスタグラムなどのSNSから、メタバースといわれるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などを組合わせた仮想空間の構築に重点を置く姿勢を明らかにした。最近では元社員の内部告発や企業体質への批判が高まっており、仮想空間への逃避ではないか、と揶揄したタイトルになっている。

NYT October 23, 2021
The Kremlin puts a leash on the web in Russia
ロシア政府 国内でウェブ上の自由を奪う

The Kremlin: 首都モスクワにあるクレムリン宮殿、ロシア政府を意味する。ロシア語で城塞。
put a leash on ~: ~を束縛する、紐や鎖につなぐ、自由を奪う

ロシア政府は中国以外では最も厳しいとされるウェブ上の検閲をロシア国内で開始した、というニュース。プーチン大統領は自身の政権を危うくする危険性の高いインターネット情報をコントロール下に置くために着々と準備を進めてきた。2019年には、ロシアで発売されるすべてPC、スマートフォン、スマートテレビなどでロシアの開発者によるアプリを事前にインストールすることを義務付ける法案に署名しており、実行に移しているようだ。ロシア政府は、西側からの隔離主義を強めるためのネット上のインフラと共に、自国内のコントロール強化を強く望む姿勢を明示している。

NYT October 22, 2021
South Korea rethinks the draft
韓国 徴兵制を練り直し

draft: 徴兵制(=conscription)

 draft は、下書き、構想、小切手、為替手形、等の意味があるが、ここでは徴兵制の意味で定冠詞theを伴い  the draft として使われる。動詞としては、起草する、設計する、以外に徴兵するという意味があるので注意が必要が単語だ。

 韓国は現在も北朝鮮との間で休戦状態にあり、一部の例外を除いて兵役の義務があるが、朝鮮戦争以来、韓国の男性の通過儀礼( a rite of passage for men )と考えられてきたこの制度に見直しの機運が高まっている。兵役を免除する対象を広げたり、信仰上を理由に兵役忌避を認めたり、また、女性を新たな兵士として含めようという意見もある一方で、徴兵制を廃止したいとの意見をもつ議員もいるのである。北朝鮮は核兵器に加え、188万人の強力な兵士がおり、韓国の徴兵制はそれに対抗する防波堤の意味合いがある。また、軍事力を強化しつつある中国の脅威にさらされるため韓国としても軍事力の増強を図る必要があるのだ。

JT October 13, 2021
Official‘s ‘pork-barrelquip clouds policy debate
財務次官の ‘財政バラマキ発言 政策論争に

official: ここでは公式の(形容詞)ではなく、公務員、官僚のこと。財務省の矢野事務次官を指す。
pork-barrel: 財政バラマキの、特定の選挙区や議員に恩恵のある助成金や政府事業の。
quip: 皮肉、辛辣な言葉、気の利いた言葉。
cloud: ~に暗い影を落とす、曇らせる、混乱させる、汚す。動詞として使われている。

 pork barrel は、元は、豚肉を塩漬けにして保存する樽のことで、アメリカの南北戦争(1861-65)時に南部の奴隷に樽に入れた塩漬けポークを与え懐柔したことに由来するとされるが、現代では選挙での支持確保を目的に非効率な事業を行うことや、財政バラマキの例えに使われる言葉だ。

 この文の主語は quip だが、皮肉や辛辣な言葉、気の利いた言葉、という意味だ。文芸春秋の11月号に掲載された矢野財務事務次官による、国会議員の政策論争(policy debate)を’pork-barrel battle’(財政バラマキ合戦)に例えて財政問題を提起したことが大ごとになっている。与野党とも有権者に耳障りのいい政策を財源の裏付けなしに声高に述べているが、コロナ感染抑止と経済再開に真に有効な使い道をしっかりと精査した上でのまともな論争を期待したい。

JT October 5, 2021
Challenges awaits as Kishida takes reins
岸田氏 首相に就任難題山積

challenge: 難題、困難、問題、異議申し立て
await: 待ち受ける、待ち構える
take reins: 政権を取る、主導権を握る、仕切る

 日本語のチャレンジとchallengeは、文脈によってニュアンスが異なるので注意が必要な単語だ。challenge は、例えば、審判がアウトと下した判定に、今のはインですよ、といった具合にあからさまに異議を唱える場合や、達成が困難な難題や困難を意味する場合によく用いられる。抑制や統率を意味するreinは、take the reins / take up the reins で主導権を握る、政権を取る、仕切る、となる。

 自由民主党の岸田総裁は10月4日に第100代首相に就任し岸田内閣が発足した。20ある閣僚ポスト(Cabinet posts)のうち13のポストに初入閣の議員を当てたが、新内閣が直面する困難は山積している。新型コロナウィルス対策や増大する安全保障に対する危機、疲弊した経済の立て直しなどいずれも待ったなしだが、就任当日に、10月14に衆議院を解散(dissolve the Lower House)し、10月31日に総選挙を実施する(hold a general election)ことを発表した。

NYT October 1, 2021
Defense pact no guarantee to best China
軍事協定も中国に勝つ保証とはならず

defense pact: 軍事協定/条約、防衛協定/条約
best: 打ち負かす、~に勝つ、=defeat

 ここでの best は good の最上級の best ではなく、他動詞で~に勝つ、という意味だ。辞書アプリの中にはこの意味では載っていないものがあるので注意が必要な単語だろう。

 Defense pact は AUKUS といって、2021年9月中旬に豪英米(Australia-United Kingdom-USA)間で締結された軍事・防衛協定のこと。QUADが外交面や経済安全保障に軸足を置いている枠組みで民間の協力を進めることを目的とした米日印豪4ヶ国の枠組みに対して、AUKUSは強大化した中国の軍事力との均衡を保つためにオーストラリアの軍事力を強化することを目指している。AUKUS創設に伴いオーストラリアとの潜水艦建造を事前の通知なく一方的に破棄されたフランスの怒りは理解できるし、中国との結びつきが強いASEAN諸国はAUKUSに安全保障を任せることもできず神経をとがらせていることだろう。

JT September 30, 2021
Unvaccinated NBA players to face extensive COVID-19 curbs
ワクチン接種していないNBA選手は多くのコロナ対策のための制限直面

face: ~(困難など)に立ち向かう、直面する、受け入れる
extensive: 膨大な、多岐にわたる、広範囲にわたる
curb: 拘束、抑制、制限、縁石

 curbはこの記事では、コロナ感染対策の制限といった意味だが、道路の縁石、動詞で抑制する、拘束する、という意味もある。つづりが見た単語がいくつかあり、carve(肉などを切る、彫る)、curve(曲がる、曲げる)、carb( =carbohydrate 炭水化物)と混同しないよう注意が必要。

 記事では最初の文がheadlineをそのまま言い換えている。’NBA players who are not vaccinated against COVID-19 will have to comply with a long list of restrictions to take part in the upcoming season, ESPN has reported.’ face = comply with, extensive = a long list of, curbs = restrictionsといった具合だ。言い換え表現は英語でparaphrase(パラフレーズ)というが、語彙を増やすにはこういった表現を日頃から意識して積み上げていきたい。

 

JT September 27, 2021
Renewable energy firms pin hopes on Kono becoming PM
再生可能エネルギー関連企業 河野氏の首相誕生に望みを託す

renewable energy: 再生可能エネルギー: 太陽光、風力、波・潮力、地熱、バイオマスなど。
pin (one’s) hopes on ~: 期待を~にかける、望みを託す。上記見出しでは their が省略されている。PM: prime minister 首相

9月29日の自民党総裁選( the Sept. 29 vote for the Liberal Democratic Party’s next leader )まで間がないが、4人の候補の中では河野氏が最も明確に再生可能エネルギーへのシフトを打ち出している。国民の人気が高い河野氏の当選を見越して再生可能エネルギー関連企業の株価も上昇しているようだ。

NYT September 17, 202
Wisconsin company cashes in on demand for backup power
ウィスコンシンの会社 非常用電源の需要増で繁盛

cash in on ~: ~に乗じて儲ける、付け込む、利用する
backup power: 非常用電源、予備電源

 ウィスコンシン州はアメリカ中西部にある人口5.8百万人の州で五大湖のミシガン湖とスペリオール湖に接していて観光業も盛んな州だ。この州に本社を置く、1959年創業のGenerac社は発電機の設計・製造を手掛ける大手企業だが、近年、非常用電源のニーズの高まりにより業績が急上昇しており生産が追い付いていない状況だ。South Carolinaに住むFreemanさんは昨年、ハリケーンとコロナウィルス対策として$12,400を投じてGenerac社の予備電源(backup generator)を購入したが納入されたのは3ヶ月後だったが、今では納品まで6ヶ月掛かっている。アメリカ各地で異常高温や大規模な山火事、寒波やハリケーンなどで頻繁に起きている。アメリカでは昨年、383件の電力障害(electricity disturbances)が報告されたが、2016年比141件多くなっている。また、2021年6月時点で210件報告されており、昨年の同時期に比べ34%増加している。在宅勤務する人や商売している人にとっては、gackup powerは、投資アナリストが指摘するように、nice-to-have (あったらいいもの)から need-to-have (持つ必要があるもの)に変わったようだ。

 非常用電源を意味する英語は、Headline の backup power 以外に backup generator、standby home generatorが記事中で使われている。

JT September 10, 2021
Japan sets out pandemic exit strategy
日本政府 コロナウィルスの出口戦略発表

set out: 発表する、立案する、設計する、出発する、~しようと決心する
exit strategy: 出口戦略

 set out は頻出する表現だが日本人には馴染みが薄く使いこなせていない句動詞だろう。直接目的語を取る他動詞用法として、set out a new approach( 新しい取組みを始める ),  set out practical steps to meet our target( 目標達成に向けて現実的な方法に着手する )などと表現できる。自動詞用法では、We’re planning to set out tomorrow.( 明日出発す予定です ) や、set out for Tokyo( 東京へ向け出発する )など。また、set out to + 動詞 で、 ~を目指す、を計画する、を意味する。set out to achieve our goal( ゴール達成に向け努力する )。set out to + 場所で、~へ行く、を表わす。例えば、set out to a pub( パブに行く) などと使える。

 政府は、新型コロナウィルス対策としてこれまで国民の自粛に頼ってきたが、9月9日に行動制限を段階的に緩める方針を発表した。今秋をめどにワクチン接種証明( vaccine passport )や検査の陰性証明( negative virus test result )があれば緊急事態宣言( state of emergency )が出ている地域でも飲食店の酒類の提供や、県境を越える移動を認めるという内容だ。10月~11月に実証実験を進めた上で本格的な運用に移行する計画のようだ。

JT September 4, 2021
Suga to step down after tumultuous year
菅首相 混乱の年を経て退陣

step down: 高い地位や役職を退任する、辞任する
tumultuous: 騒然とした、騒々しい、精神的に動揺した

 Sugaはもちろん菅首相のことだが、首相だろうが社長だろうが新聞の見出しでは敬称は付けないのが一般的で失礼には当たらない。to + 動詞の原形は未来を表わすので、to step downでこれから辞任することが分かるヘッドラインとなっている。

 菅首相は、9月3日の自民党の臨時役員会(LDP’s extraordinary executive board meeting)で、新型コロナウィルス対策に専念したいとし、自民党総裁選には出馬しないことを表明した。コロナ対策の失敗とやる気のなさそうな表情や言動から支持率の低下を招き自民党内からも来月に迫った衆議院選挙を心配する声が上がっていた。心身ともに疲れ果てたのだろう。「総裁選には莫大なエネルギーが必要だ。新型コロナ対策との両立はできない。」( I realized it would take up enormous energy working on the coronavirus measures and and campaigning – it’s impossible to do both.)と述べたと言われている。

JT August 28, 2021
U.S. Fed decries a wealth gap the bank is helping to perpetuate
連邦準備理事会、自ら後押しした貧富の格差固定化非難

Fed: FRB = Federal Reserve Board(連邦準備理事会)~米国の金融制度を規制する連邦準備制度(Federal Reserve System)を運営する。理事は7人で上院の承認を経て大統領により任命される。任期は14年。銀行規制などの重要な問題について連邦準備制度の政策を決定し、公定歩合を決め、金融引締めや緩和を実施する。Federal Reserve Bank(連邦準備銀行)~全米に12行あり、支店を含めた全体で連邦準備制度を構成する。役割としては、管轄地域の商業銀行と貯蓄銀行を監督し、緊急時において緊急資金を管轄地域の銀行に提供すること、等である。
decry: 非難する、けなす
wealth gap: 貧富の格差
perpetuate: 永続化させる、固定化する

FRBは新型コロナウィルスの感染拡大を受けて2020年3月から米国債など 毎月1,200億ドル買い入れる等の金融緩和策を講じてきたが、年内の金融緩和縮小(tapering:テーパリング)が望ましいと述べた。米国の家計に占める株式保有率は過去最高水準になっているが、今年3月時点で、トップ10%の富裕層が保有する株式とミューチュアルファンドが全体の89%と過去最高を記録し、金融緩和策を開始する前の15年前の84%を大きく上回った。パンデミック発生以来、労働者階級や中間層を中心に約2,000万人の米国人が失業する一方で、650人の超富裕層の純資産は1兆ドル以上増えているという。

NYT August 20, 2021
Britain smarts as Biden leaves it out of Afghanistan decision
英国、バイデン氏のアフガン撤退決定の相談受けず困惑

smart: 心を痛める、憤慨する、感情を害する、ズキズキ痛む; 賢い、如才ない
leave it out of ~: ~から除外する、省く、無視する、関与させない。

 先週の sway 同様、smart も意外な意味を持つ単語だ。抜け目のない、賢い、といった意味(カタカナのスマートとは意味が異なる)が思い浮かぶが、ここでは、感情を害する、困惑する、ということ。新聞を読んでいるとこうした「意外な意味を持つ単語」を頻繁に目にするのでその都度例文と一緒に覚えていきたい。

 米国のアフガニスタンに対する撤退方針については、共に派兵している英国やEU諸国間で驚きと困惑が広がっている。英国はこのアフガン戦争では同盟国の中で米国に次いで多くの犠牲者を出しているが、アメリカ軍撤収のタイミングと方法をに関して米国側からほとんど相談を受けていなかったとしている。8月18日の議会でジョンソン首相は、野党のみならず与党からも責められたが防戦一方だった。バイデン大統領とは大統領就任当初から良好な関係を築いてきただけに、相談もなく米国単独の部隊撤収に心を痛めたのは間違いない。

NYT August 17, 2021
Americans lose sway built over 20 years
米国20年かけて築いた支配失う

sway: 支配、統治、影響、動揺、揺れ; 揺れる、傾く、影響を与える

 sway と聞いて耳の痛いゴルファーも多いことだろう。体が左右に揺れて、打球が安定しなくなる主な原因だからだ。かくいう私も球が暴れ出すとまずswayしていないかチェックしている。それほどゴルフにおいては影響力が大きい動作だ。この記事中のswayは、名詞で、支配、統治、強い影響力、という意味なのでこの機会に関連付けて覚えておこう。

 米国は、2001年9月11日のニューヨーク同時テロを受けて当時のブッシュ政権がアフガニスタンに対して軍事介入に踏み切った。以降20年にわたり軍事力によるsway(支配)によりタリバンを抑え込んできたが、今年4月にバイデン大統領が9月11日までに米軍の完全撤退を表明して以降タリバンが勢力を拡大してきており、ついに首都カブールを制圧しアフガニスタンのガニ大統領はタリバンと闘うことなく国外退避してしまった。

NYT August 10, 2021
Deficit takes a back seat to spending on U.S. infrastructure
借金は置いておいて米国のインフラ支出を優先

A takes a back seat to B: AはBの二の次になる、AはBの後回しになる、脇役を務める

 back seat は車の「後部座席」から比喩的に「重要でない立場、目立たない立ち位置」を意味する。I’m going to take a back seat and let my son take over as company president. (トップから退いて、息子に社長を継がせるつもりだ。)のように表現できる。実際に「後部座席に座る」ときは sit in the back seat と言おう。また、back seat driverは、求めていないのに指示する人、おせっかいな人の意味なので気をつけたい。なお、back seatはbackseat と同じ意味。

 米国上院は8月10日にインフラ投資法案(infrastructure bill)を可決した。バイデン政権の経済政策の柱であるこのインフラ投資法案は、道路・橋、鉄道、電力インフラ、高速通信網、水道等に1兆ドルの巨額を投じる。財源はというと、新型コロナに向けた経済対策予算の未使用分やインフラ投資に伴う税収増等に加え、議会予算局(the Congressional Budget Office) の推計で2,560億ドルの連邦政府の赤字支出(deficit spending)を含むという。とにかくインフラ投資を最優先に進めて、政府の借金は後部座席に置いて後で対応しようということだろう。このインフラ投資法案には、バイデン氏が提案した総額3.5兆ドルに及ぶ、子育てや教育、気候変動対策への投資は盛り込まれていない。

NYT July 31, 2021
Drivers, let’s face it: We are all Tesla’s guinea pigs
ドライバーの皆さん、問題を直視しよう。みんなテスラの実験材料なんだ。

let’s face it: (不都合な)事実を素直に受け入れよう、問題をあるがままに受け入れよう。
guinea pig: 実験用モルモット、実験台、実験材料

テスラが誇る最新のIT技術を搭載した自動運転車(self-driving car)がやり玉に挙がっている。テスラの億万長者CEOのイーロン・マスクが米国の公道を自社の自動運転技術の実験室に変えてしまっているというのだ。マスク氏はソーシャルメディア等を通じて自動運転車に搭載されている技術を大げさに宣伝している一方で、テスラのエンジニアたちは期待する完全な水準には程遠いレベルであることをカリフォルニアの規制当局に見認めているようだ。一般のドライバーに任せられてる実験走行では衝突事故やその他重大な事故が発生しているが、黄色く光る月を黄信号と誤って認識してしまうことがあるという。

NYT July 16, 2021

U.S. voter suppression and the legacy of Jim Crow
米国の投票妨害ジム・クロウ法の遺産

voter suppression: suppression は、鎮圧や抑制、制限を意味する語。選挙において、ライバル候補者を支持する有権者(voter) に対して嘘をついたり脅したりして投票に行かないよう抑制(suppression)する卑劣な選挙戦術。
Jim Crow: 1876-1965年まで存在した人種差別的な内容のアメリカ南部諸州の州法の総称で、主に黒人の公共施設の利用を禁止、制限した法律。黒人差別法。また、米国においてアフリカ系アメリカ人を指す蔑称として使われてきた。

 日本にいるとピンとこないが、米国における主に黒人に対する人種差別は根深く強烈で非人道的である。日本にいれば選挙前になると成人していれば勝手に自宅に「選挙のお知らせ」が郵送され、身分証を持参し指定された近所の投票所に行くだけだ。大抵の選挙で投票率は50%を割っていて国民としての大切な権利を放棄しているのが実態だろう。

 南北戦争( Civil War,1861-1865) 後のアメリカで1870年に憲法修正第15条によって黒人に選挙権が与えられた。これにより市民に投票権を付与する際に、その人の人種、肌の色、以前奴隷であったことを理由に妨害してはならないと規定したものである。しかし、修正第15条の規定が現実にすべての州で確立されたのはおよそ1世紀後の1965年に選挙権法が成立してからである。米国では、投票するためにはまず選挙人名簿に自己申告で登録しなければ投票資格が得られない。そのためにはIDなどで身元を証明する必要があるが、貧困層の多くはIDをもっておらず成人でも投票機会が失われることが指摘されている。一般的に貧困層には民主党支持が多いと言われているが、2020年の大統領選挙では様々な手段を使って彼らに投票させないような voter suppressionが行われたようだ。

 

NYT July 9, 2021
Early birds are less vulnerable to depression
朝型の人うつ病にかかりにくい

early birds: 朝型人間、morning person。反対に、夜型人間は night owl(フクロウ)、night person。
less vulnerable to ~: ~(病気など)にかかりずらい、~に対して弱くない。
depression: うつ病、憂うつ、意気消沈、不景気、不況。

 これまでも朝型、夜型人間の健康や病気に関する研究は数多く発表されてきたが、その因果関係(cause and effect)ははっきりしなかった。だが、最近の研究によればどうやら朝型人間の方が深刻なうつ病になるリスクは低いようだ。JAMA Psychiatryに発表されたMendelian randomization ( メンデルランダム化)と呼ばれる研究手法を用いて80万人以上の治験による研究で、朝型の人がうつ病にかかりにくいとする因果関係を突き止めたようだ。

NYT July 5, 2021
Where ‘lying flat‘ beats working
寝そべり‘ が労働に勝る場所

lying flat: 横になる、寝そべるという本来の意味から、「結婚しない、子供もいらない、定職に就かず、物欲を慎み家や車を買わない」といった質素な生活を選択する低意欲、低欲望のライフスタイルを表わす表現として登場した。寝そべり族/主義、横たわり族/主義、などと訳されている。

 ある中国の若者がブログで発信した、最低限の仕事しかせずそれ以外は寝そべっているような生活に喜びを見出すライフスタイルを表現した’lying flat’ (中国語で tangping)という言葉が若者の間で一気にバズワードとして広がった。彼のブログのタイトルが “Lying Flat is Justice” (寝そべりは正義)というもので、カーテンを閉めた暗い部屋のベッドの上で寝そべる彼自身の画像付きだ。SNS上で一気に広がると多くの中国の若者から共感を得たが、中国当局の検閲によりすぐさま削除されたようだ。中国が目指す目覚ましい経済発展に真っ向から反対し侮辱するものとして当然のことだろう。

 一世代前は中国における成功への道は、まじめに働き、結婚して子供も持つことだった。ところが現在の中国では長時間働いたところで、住宅価格の上昇スピードが収入の増加を上回っており家も買えない。多くの中国の若者が、親世代の暮らしを超えられない初めての世代になると危惧しているのである。lie flat の意味するところは ‘ to forgo(諦める) marriage, not have children, stay unemployed and eschew(控える) material wants such as a house or a car. としている。

JT June 30, 2021
SoftBank pulls plug on Pepper robot
ソフトバンクG 「ペッパー」の生産停止

pull plug on ~: ~を中止する、~への支援を打ち切る、~の生命維持装置を外す

 ソフトバンクグループはヒト型ロボット「ペッパー」の生産を2020年8月から停止している。 在庫が積み上がった( inventory piled up )ためだが、需要が回復すれば生産を再開するとしている。これまで27,000台が生産されたという。フランスの拠点では330名の従業員のうち9月までにおよそ半数を削減する計画だ。

 ペッパーは2014年にAIを活用し感情を認識できるロボットとして、home companion(家庭ロボット)や店舗支援(store assistant)用として発売されたが需要低迷により生産停止に追い込まれた格好だ。一方で、同社は2018年にAI搭載の清掃ロボット「Whiz」を投入し法人向けに販売を開始している。

JT June 22, 2021
Malaysian durians carve out niche in China
マレーシア産ドリアン 中国のニッチマーケットを開拓

carve out niche in: ヘッドラインなので冠詞の a が省略されており、本来はcarve out a niche in the ~ market となる。carve out は彫る、彫刻する ⇒ 苦労・努力して作り上げる、開拓する。niche の発音は日本語のニッチではなくニーシュとなるので注意しよう。隙間という訳語が定着しているが、適所、ふさわしい場所といった意味合い

中国ではECセール最大のイベントとして11月11日に開催されるアリババのSingles’ Day (独身の日) が有名だが、それに次ぐ規模のイベントがJD.comによる 618 festival (618 商戦) だ。そのネット商戦のフルーツ&野菜部門でマレーシアのドリアンが一番人気となったようだ。強烈な芳香は好き嫌いがあるがその pungent delicacy (味覚を刺激する珍味)が中国人を強烈に引き付けている。国連のデータによると中国の2020年におけるドリアンの輸入は23億ドルに達し2017年比4倍になり、2019年には輸入果物の中ではサクランボを抜いてドリアンがトップになったとのことだ。

NYT June 18, 2021
In Taiwan, politics get in the way of vaccines
台湾では政治がワクチンの足かせに

get in the way of ~: ~の障害になる、~の妨げになる、~の足を引っ張る。

 今や外交はワクチンでする時代になっている。台湾は昨年のコロナウィルス発生当初から蔓延の抑え込みに成功し、政府主導のITを駆使した対策が世界から称賛を浴びてきた。しかし、台湾でも今年5月に感染者が急増しロックダウンの措置を取らざるを得なくなりワクチン接種が急務になっている。台湾では人口23.5百万のうちワクチン接種済みの人の割合は5%未満といった現状だ。日本からは120万回分のアストラゼネカ製ワクチンが提供され、米国からも75万回分の提供が約束された(実際は6/20に250万回分のワクチンが台湾に到着している)が、全員に行き渡らせるには全く足りていない。

 実は台湾は 昨年8月にBioNTech社との間で500万回分のワクチン購入の協議を開始しており、12月には契約内容に大筋で合意に至っている。そして今年1月8日にはBioNTech社は台湾側が作成した中国語と英語によるニュースリリースの原稿内容を承認したのである。ところが、その4時間後にBioNTech社から中国語によるリリースの中で、”country” を “Taiwan” に置き換えるよう要求が来たというのだ。中国政府は台湾が独立した “国” と思わせる表現には極端なほどに敏感に反応しワクチンを外交の手段として各方面に圧力をかけている。台湾は country から Taiwan への変更を了承したが、BioNTech社は本件は更なる検討が必要であるとし、ワクチン輸入は棚上げされたままだ。

JT June 9, 2021
Tokyo Games nearing point of no return
東京オリンピックは後には引けない段階に

point of no return: 後には引き返せない段階、離陸した飛行機が元の場所に戻る燃料がなくなる点、から。

  Tokyo Games とはGamesのGが大文字になってることから Tokyo Olympics Games(東京オリンピック)のこと。いよいよ開会式まであと6週間と迫った東京オリンピックだが、もはや後には引き返せない段階に来ている。国民の過半数が開催に反対する中、日本政府、IOC( International Olympic Committee)、利害関係団体は開催に向け突き進んでいる。成功裏に開催できれば沈んだ世界中の人々の気持ちを高揚させコロナに打ち勝った世界的なイベントとして東京オリンピックが素晴らしいレガシーになるはずだった。

 最悪のケースは、オリンピック開催によりスーパースプレッダーを生み出し、足元のおぼつかない日本経済の復活( Japan’s tottering economic recovery )を打ち砕いた上、世界最大のスポーツイベントを台無しにしたイメージが永続することになることだ。民間のシンクタンクによれば、オリンピック中止による直接的な経済損失は1.8兆円に上り、さらに間接的な莫大なコストが発生すると試算する。

NYT June 8, 2021
Federal unemployment aid is now a political lightning rod
政府の失業者支援策は今や政治的批判の的に

Federal unemployment aid: 連邦政府による失業者救済のための支援策。aid: 援助、医者による手当、援助者。記事では同じ単語の重複を避けるため jobless benefits, jobless assistance, emergency benefits, jobless relief が使われている。
lightning rod: 避雷針、(批判を受ける) 身代わり。rod は、棒、杖、さお、釣り竿。

 コロナ禍における経済対策の一環として支給されている週300ドルの失業給付金上乗せ措置を巡り50ある州のうち25州がその上乗せ措置の打切りを表明した。この25州の州知事はいずれも共和党で、9月6日を期限とするこの給付金の支給を期限前に反故にしたのである。彼らの言い分は、この措置はパンデミック下においては重要な一時的救済をもたらしたが、現段階においてはワクチンと雇用が十分に供給されているため必要ない、というものだ。この対策により就職しない人が増え、企業は営業再開に必要な労働力を確保できないでいる、と主張している。

 一方で、 基礎疾患を持っている人が抱える感染への懸念や、保育サービスの不足や低賃金等、多くの問題が再就職を困難にさせているのも現実だ。政府としては、ワクチン接種が進んできたとはいえ完了するまでには時間がかかるとし、同措置の期限前の早期終了を急げば雇用回復に苦労している米国経済に打撃を与え、さらに雇用が失われる恐れがあると懸念を表明した。

NYT June 4, 2021
Getting families up and running
家族を立て直す

get A up and running: (機械などが)順調に機能させる、元気に動き回るようにする、立て直す。get everything up and running で、全てを立上げて稼働させる。

長引くコロナ禍で世界中の人々が疲弊しているが、低所得者層に大きなしわ寄せがきているのはアメリカも例外ではない。政府はstimulus aid (景気刺激のための支援策)として2021年に入り、1人当たり1月に$600、4月に$1,400ドルを国民に支給した。(2020年3月にも1人当たり$1,200支給している。)そのほかにも様々な手当や現物支給のおかげで滞納した家賃の支払いや、家族が何とかやっていける食材を確保して生活を立て直している。アメリカの Census Bureau (国勢調査局) の調査において4月の給付金支給後では、子供のいる家計では食料が不足している (food shortages)と答えた割合が42%減少し、経済的に不安定 (financial instability) と回答した人が43%低下した。さらに、頻繁に不安やうつ状態を感じる人の割合が20%以上減少したといった結果が出た。評論家の中には、給付金が必要としない家計にも無駄にばらまいた、とか、長期的な効果に疑問がある、といった批判も当然ある。どの国においてもすべての国民を満足させる政策などない中、タイムリーな現金や現物支給などそのスピードにおいては見習うべき点が多い。

 

JT May 29, 2021
Local authorities on the hook for vaccine plan
地方自治体はワクチン接種計画で困惑

local authorities: 地方自治体、都道府県知事、地元当局。
on the hook : 困難な立場に置かれて、厄介なことに巻き込まれて。hook は釣り針、服などを掛けるかけくぎ。

 政府は4月23日に高齢者向けワクチン接種を 7月末に完了すると発表。この唐突な発表に多くの自治体が計画の変更を迫られている。各自治体はそれぞれの状況に合わせて工夫をしながら対応しているが、予約サイトや電話につながらないケースが頻発しているようだ。また、首長や地元の有力者が決められたルールを逸脱してわれ先にと割り込み接種をして非難を浴びているのが現状だ。

NYT May 22, 2021
First choice of jet set gets first dibs on shots
ジェット族一番人気の場所が優先的にワクチン接種

first choice: 第一希望。ここでは、(最初に選択する)1番人気の物、商品。
jet set: 飛行機で世界を飛び回る人、裕福なジェット族。個人を指す単語はjet-setter。
get first dibs on ~: 優先して~を得る権利を持つ、一番乗りする。
dibs: 使用権、所有権、物を得る権利。

 今回のヘッドラインは難易度が相当高く、一読して意味が分かる人は相当な英語通で情報通と言えるだろう。こういう時は、まずS(主語)と述語動詞(V)が何であるかを確定させることが大事。Sが First choiceだということは分かるが、Vは set なのか gets なのか迷ったりするかもしれない。gets とget に三人称単数現在形の s がついているので V はgetsとたどり着く。構文が分かったところで、さて、jet set と dibs って何のこと、となる。常に様々な英語媒体に触れて、新たに出くわした表現はその都度意味と用法を調べる習慣付けが大事だとこのヘッドラインを発見して再認識した次第です。ヘッドラインのすぐ下のLeadには Eager to restart tourism, Italy puts its islands on fast track to inoculations とあるのでヘッドラインの意味することが分かる。inoculations はここではコロナの予防接種のことで shots の言い換え表現。

 国が変わればワクチン接種に対する考えやアプローチもまちまちで国民性や文化の違いが見て取れる。イタリアのカプリ島は風光明媚なリゾート地として有名で、飛行機で各地を飛び回るジェット族 (jet set) には一番人気 (first choice) のようだ。この島ではワクチン接種を高齢者から優先的に打ち、中高年、20代、さらには10代の若者まで拡大してきている。一方で、選ばれたリゾート地以外の地域では60代や70代の高齢者がいまだにワクチン接種の順番を待っているというのだ。イタリア本土の国民からは、当然非難の声が上がっている。しかし、ルカ大統領と政府は経済を復興させる目的で、今月になってシチリア島の近くの島々の全島民の優先的なワクチン接種を承認している。観光立国のイタリアで経済浮揚策として観光業を優先するのは理解できるが、ワクチン接種においても公平性を最優先している日本からすると大きな驚きだ。

JT May 17, 2021
Taiwan and Singapore ramp up virus measures
台湾とシンガポール コロナ対策を強化

ramp up: 強化する、強める。ramp upはビジネスシーンで広く使われており、ramp up production(生産を強化する)などと表現でき、発信する際にも使いこなしたい表現。rampは高速道路の出入り口の傾斜路や乗降を目的としたスロープのこと。

 これまでコロナ対策の優等生(poster child)で通ってきた台湾とシンガポールでここ最近新規感染者が急増している。台湾では先週土曜日(5/15)に180人、16日には206人と一気に増えたことを受け屋内で会っていい人数を5人、屋外では10人を上限に定めた。また、台北市は18日から中学・高校を一斉休校にすることを決定。

 一方、シンガポールでは、直近1週間の新規感染者が131人と前週の39人から急増した。空港などでのクラスターも発生したことを受け早速、5/16から6/13の期間、レストランでの室内飲食を禁止し、在宅勤務(work from home)を基本(default)とする行動制限を強化した。

NYT May 13, 2021
The Olympics are too risky. Call them off.
オリンピックは危険すぎる。中止すべき

call off: 中止する、キャンセルする。call them off のthemはOlympicsのこと。

 記事を書いたのは元プロサッカー選手で米国のパシフィック大学で政治学を教えるJules Boykoff教授で過去にも自身の複数の著書において肥大化した商業主義のオリンピックに異議を唱えている。1年延期され今年の7月に開催予定の東京オリンピックは日本では政治的な引火点(political flash point)となっている。その日本では国民の約6割がオリンピックの開催に反対しており、国民の2%もワクチンを接種していない。世界中の人々の健康がコロナ禍で脅かされている中で、世界中から多くの競技種目に参加するアスリートが一堂に会して競うオリンピックの開催は悲劇的な結末(lethal consequences)をもたらす可能性を秘めている、と述べている。

 今こそ科学に耳を傾けこっけいな茶番(dangerous charade) を止めるべきで、東京オリンピックは中止すべきとし、オリンピック推進派はこのような状況下にあっても3つの理由で開催をゴリ押ししているのだ。それは、金、金、そして金。我々には正確には知りえないオリンピック開催に関わる金の流れについて説明してくれているがここでは割愛したい。

JT May 10, 2021
Volkswagen throws down the emissions gauntlet
フォルクスワーゲンCO2排出量の戦いを挑む

throw down the emissions gauntlet: throw down the gauntletで’挑戦状を叩きつける’ ‘戦いを挑む’。gauntletは、中世の騎士が使った鎧のこてのことで、そのこてを落すことで相手への戦いを意味し、それを拾い上げる( take up the gauntlet)ことでその戦いに応じることを意味したことからemissionsは carbon dioxide emissions(二酸化炭素排出)を指す。

フォルクスワーゲンがEUの要求する厳しめのCO2排出削減計画に対してその達成に相当な自信を持っているようだ。EUは先月に温室効果ガス(greenhouse gas emissions)の削減目標を2030までに1990年比で40%削減する目標から55%減少へと引き上げた。EUの自動車メーカーに対する具体的な削減幅は7月に公表されることになている。

JT May 4, 2021
In India, virus warnings fell on deaf ears
インド政府、専門家のウィルスに関する警告を無視

fell on deaf ears: fellはfallの過去形。聞こえない耳に落ちた⇒無視される、聞き流される、耳を傾けてもらえない

 先週はフランスのお粗末なコロナ対策を取り上げたが、インドも大変な状況だ。インド型変異種が猛威を振るい4月以降一日当たりの感染者数が30万人を超えるようになり最近では40万人に達してる。人口が13億を超える大国であることを考慮しても爆発的な拡大だ。インド政府によって組織された専門家グループは3月初旬の段階で変異種の存在を認識し政府に警告を発したにもかかわらず政府は強い対策を取らなかったのである。それどころか、多くがマスクをしていない数百万の国民が宗教行事に集まったり、モディ首相が州議選の演説を行いその集客力を自ら自慢していた。

 インドは「世界の薬局」などと言われる世界最大のワクチン製造大国だが、インド型変異種の拡大によりワクチンが不足傾向にあり、今や多くの国からワクチンや医療用酸素などのオファーを受けている状況だ。

NYT April 28, 2021
Covid bureaucracy ties France in knots
コロナ下の
役所ルールフランスは当惑

bureaucracy: 官僚政治/制度、お役所の手続き。bureaucrat は 官僚、官僚的な人
tie ~ in knots: ~を当惑させる、混乱させる。knotは結び目、絆、絡み合ったかたまり、など。knotを使ったイディオムではtie the knot(結婚する) はよく目にするので合わせて覚えておきたい。

 フランスでは最近コロナ陽性者が急増しており3度目のロックダウンの渦中にある。ロックダウンは国民に多くの行動制限を課すが、許容される行動の線引きが難しくフランスにおいても当惑している国民は多い。人口約67百万人に対して5.6百万の公務員がおり、実に国民の8..3%がpublic servantsだ。ルールを定める官僚が多ければ多いほど内容は細かくなりそれゆえ矛盾も生じてしまう。国民が外出する際には’attestation’(証明/証拠)と呼ばれる政府が定めた2ページにびっしり書かれた書式に記入する必要があるが、あまりに複雑な(convoluted)ため担当大臣の広報官も説明に苦労するほど(so convoluted that it tied the interior minister’s spokeswoman in knots)だ。

 どの国でも何とかして拡大するコロナウィルスの蔓延を防止するために知恵を絞って行動制限のルール化をしているわけだが細部のどこかでひずみが生じて矛盾を露呈してしまう。例えば、ホームセンターの Castorama では何種類もある電動ラクレット調理器やトースター、フライパンやステレオは買ってよいのだが卓上スタンドはダメといった風に。その店員に尋ねてもその理由はわからず困ってしまう。個人的には机に置くランプの方が手の込んだ調理器具よりははるかに必要なアイテムだと思うが。また、家電販売店ではスムージーメーカーや掃除機は買えるが冷蔵庫は売ってくれない。国や文化によって生活必需品とそれ以外(essential vs. nonessential items)の線引きが異なることも分かるがフランス人同様不思議に思えてならない。

NYT April 24, 2021
For tycoons in China, it’s a good time for lying low
中国の実業界の大物にとっては身をひそめる時

tycoon: 実業界の大物、大財閥の長
lying low: 身を隠す、おとなしく引っ込んでいる、目立たないようにする。lyingはlie(横たわる、ある場所に位置する)の動名詞。

 アリババの創業者で、中国が生んだ最も有名なビジネスマンのジャック・マー氏が人目を避けひっそりと暮らしている。友人たちによれば最近は絵を描いたり太極拳(tai chi)を習い、ソフトバンクの孫正義氏と自分の描いた絵をシェアしているという。

 中国政府はこれまでも巨万の富と巨大な影響力を 築いた実業界の成功者(tycoons)を処罰してきたが、中国共産党から見てそうした成功者は彼らの領域を超えてしたったからだ。今回やり玉に上がったのはアリババグループのフィンテック企業であるアント(Ant Group)だ。アントはスマホアプリを通じて中小企業や個人から融資申請を受付け、スマホ決済の利用情報から得られた信用情報と共に提携銀行に提供している。提携銀行が融資を実行し、アントは手数料を受取るビジネスモデルだ。中国の金融当局はこうした提携融資について今年2月に規制を発表し、2022年からは銀行と提携する金融会社が融資額の3割以上を拠出するよう求めた。アントは手数料を受取るだけで貸倒れリスクを負っていなかったため、今後は不良債権発生に備え自己資本の積み増しが必要になる。そうなると与信額の圧縮は避けられず規模縮小をせざるを得ないのだ。2020年12月にアリババは独占禁止法違反の疑いで当局の調査を受け、今年4月に182億元の罰金を科された。アリババグループへの締め付けは一層強まっている。

JT April 13, 2021
Matsuyama win heralds new era
松山の優勝が新時代の到来を告げる

herald: 動詞: ~の到来を告げる、~の前触れとなる 名詞: 先駆者、前兆

 松山英樹がついに4つあるメジャー大会の1つマスターズで優勝した。日本人としてこれまで誰もなしえなかった快挙で文字通り日本中が湧いた。New York Times も Japan Times も松山の優勝を連日報じておりその影響の大きさを改めて実感した。私も4日間通して朝早く起きてテレビ観戦した1人だが、松山選手の堂々としたプレーぶりはまさにマスターズチャンピョンにふさわしいもので、日本国民として、また、一人のゴルファーとして誇らしく思えた瞬間だった。

 A new era of golf has dawned in Japan thanks to Hideki Matsuyama’s victory on Sunday at the Masters, the first major triumph by a Japanese man. という文で始まる記事だが、過去の優勝者の地域別の優勝者を見ると北米が64人(カナダ1人)と圧倒的に多く、欧州13、アフリカ5、南米1となっており日本を含めたアジアからは初の快挙であった。日本のゴルフ界の新時代の夜明けとともに、アジアからも優勝者が出たという意味でも意義深い偉業と言えるだろう。

 4/13付けの New York Times は A green Jacket for Japan という見出し。サブタイトルでは初めてのアジア生まれのチャンピョン(Hideki Matsuyama wins the Masters to become its first Asian-born champion)と表現している。記事中では、Matsuyama’s breakthrough comes at a time of unrest over racially targeted violence in the United States against Asians and Asian-Americans. (アメリカでアジア人とアジア系アメリカ人が攻撃を受ける対象になっている不安な中での快挙)と伝えている。

JT April 8, 2021
Airlines second more employees
航空会社、社員の出向増やす。

second: (社外へ一時的に)出向させる、を意味する他動詞。出向を表わす名詞はsecondment。もう1つの、2番目の、を表わす形容詞や「秒」以外に、動詞で、賛成する、支持する、の意味でもよく使われる。

コロナウィルスの感染拡大による需要低迷で大手の航空会社は自社の社員を外部企業や団体に出向させてきたが、今後その数を増やす。 日本航空は出向者(seconded employees)の数をこれまでの1日あたり1,000人だったが4月に入り1,400人に増やした。受け入れた組織は、鹿児島県庁(Kagoshima Prefectural Government)や家電量販店(home electronics retailer)のノジマを含めたおよそ120に及ぶ。一方、全日空は昨年10月以降、グループで当初計画の400人から750人まで増加した。新型コロナで苦境に陥った航空会社が需要の回復まで社員を別の企業で働かせる狙いは人件費の削減と雇用の維持だ。出向した社員の給料や経費は受け入れ先が負担する。

NYT April 2, 2021
Who will foot the Suez bill?
誰がスエズの勘定を払う?

foot the bill: 勘定を支払う、費用を持つ。billは請求書の意味で、footは名詞の「足」という意味のほかに、動詞で、「(人のために大金の)勘定を支払う」という意味がある。

エジプトのスエズ運河で 3月23日に大型コンテナ船が座礁し、その大きさゆえ運河を塞いだ状態が続いていたが6日後に離礁して運行が再開された。船の所有者が日本の正栄汽船とのことで心配だったが大方の予想より早くスエズ運河の通航が再開しひとまず安堵した。だが、この混乱により生じたすべての勘定を誰が支払うについては数年かかるかもしれない。コンテナ船の所有者、運航会社、保険会社、政府当局等、それぞれの言い分があり、損害金額の総額の確定やコンテナ船 Ever Given が座礁した責任の所在を特定する必要があるからだ。

sJT March 31, 2021
Palau leader slamscarrot and stick‘ China during visit to Taiwan
パラオのリーダー、台湾訪問中に中国の ‘アメとムチ‘ 政策を非難

slam: けなす、攻撃する、ドアなどをバタンと閉める、激しくぶつかる。
carrot and stick: 馬の好物のニンジンと嫌いなムチ⇒アメとムチ。carrot-and-stick と形容詞的に用い carrot-and-stick approach/policy/diplomacy などと使う。

 パラオのSurangel Whipps 大統領は台湾にいた。アジアで初となるtravel babble( 泡(bubble)で覆われているとみなしコロナ対策を講じた上で海外旅行をする取組み)を台湾との間でスタートするためだ。大統領は太平洋に浮かぶ小国と中国の関係を abusive relationship(虐待関係)に例え、台湾との関係を断つ考えはないと断言した。パラオは台湾を自治国家と認める世界15ヶ国の1つだが、中国は他国に対して threats and lures(威嚇と誘惑)の合わせ技で中国への忠誠を誓うよう攻勢をかけている。

 かつては中国からの観光客がパラオに大挙して訪れ、全体の観光客の約半分を中国人が占めていたが、2018年に中国政府がturned off the taps(蛇口を閉めた)したためピタリと干上がってしまったのである。新型コロナウィルスの影響で大打撃を受けた観光業界の復活を賭けた危険を伴う大きな決断だが、Whipps大統領は、中国の carrot and stick approach は counterproductive(意図に反した結果を招く)行為だと非難した。

NYT March 24, 2021
Beloved bookstores fold in Latin Quarter amid virus and gentrification
コロナウィルスとジェントリフィケーションのさ中、ラテンクウォーターの愛されてきた書店が閉店

fold: 事業などがつぶれる、閉じる; 畳む、腕を組む、紙などを折る
gentrification: 富裕層の流入や地域の再開発により貧困層の住宅地が高級化すること

 パリのLatin Quarter (カルチェラタン) にあり、長年にわたり愛されてきた書店Gibert Jeuneがその歴史の幕を閉じる。黄色いおおい(awnings)の店舗がLatin Quarterの街に当たり前のようにあり、割安の中古本と新書が置いてあり、地域住民と観光客に1世紀以上にわたり愛されて(beloved)きた。1年以上続くパンデミックの影響を受け売上減少によりその地域にある7店舗のうち4店舗を近く閉鎖するとのこと。

   Latin Quraterの由来は、1253年に開校したソルボンヌ大学でラテン語がつかわれていたことのようで、以来、学生でも住めて古本屋や安い映画館、カフェが立ち並ぶshabby-chic(上品で味のある)な街として愛されてきた歴史があるようだ。Gentrificationという単語は比較的新しい言葉で1970年代から使われ始め、ロサンゼルス地域で大規模に行われ、アメリカの主要都市に拡がり、欧州各地でもジェントリフィケーションが見られるようだ。ある調査では、Latin Quarterにおいて過去20年間でその地域にあった本屋うち42%が閉店し、新たにブティックやファストフード店が書店やアンティークなカフェ、映画館の跡地に出来ているという。

NYT March 17, 2021
For white-collar workers, automation nips at their heels
ホワイトカラーに自動化の脅威が迫る

nip at one’s heels: nip は、つまむ、噛む、挟むを表わす動詞。追ってくる動物に追いつかれてかかとをかまれるイメージで、徐々に追詰められる、競争相手などが今にも追いつきそうである、領域を侵食する、という意味。

 新型コロナウィルスは我々の働き方を大きく変えてしまったが、その一つが robotic process automation ( R.P.A./RPA) の導入を加速させたことだろう。 事業プロセス自動化技術などと訳されるRPAは既に多くの企業が導入を開始しているか、導入の開始を検討しているようだ。Deloitte が昨年実施した調査では約8割の企業が何らかのRPAを導入しており、未導入の16%の企業も3年以内に導入するとしている。RPAのサービスを提供する企業はまだ世間には知られていない名前が多いが、独立系で最大のUiPath は時価総額がUS$350億と堂々のユニコーン企業で、今年後半に株式上場(go public)の予定だ。

 RPAの普及により、 日常のルーティーン化された仕事(mundane and repetitive tasks)は機械に取って代わられ、日々進歩するRPAの高性能化によってやがてホワイトカラーの多くが職場から追い出されるであろう。コンサルティング会社のマッキンゼーによると、コロナウィルスによるパンデミック以前の予測では、米国において2030年までに自動化によって代替される労働者は37百万人だったが、最近更新された予測では45百万人とはじき出しておりコロナ禍にあってRPAが一気に加速することを示している。

NYT March 3, 2021
Britain trades blows with E.U. in blame game
英国、責任のなすり合いでEUと非難の応酬

trade blows: tradeは、貿易や商売を意味する名詞として馴染み深いが、このtradeは動詞で応酬する、交換する、ということ。blowsは、殴り合い、打撃、非難を意味する名詞の複数形。
blame game: 責任のなすり合い、非難合戦。

 冒頭の文に ‘ Few people on either side of the English Channel believed that Britain’s exit from the European Union would go off without a hitch.’ とあるように、英国のEUからの離脱が何の障害もなくうまくいく(go off without a hitch) と考えていた人は双方を隔てるイギリス海峡(English Channel)の両側の人々の間でほとんどいないだろう。
2020年1月に英国がEUを正式に離脱し、完全離脱までの移行期間が終了する12月にEUとの自由貿易協定(FTA)の締結までこぎつけ、原則としてEUの関税同盟と単一市場から離脱した。この離脱協定とFTAにより、英EU間の物の移動に関税はかからず、EUのルールに縛られずに他国とも自由に貿易協定を締結することができるようになった。しかしながらこれらには当然莫大なコストが重くのしかかる。EUの単一市場の外に出たことにより煩雑な通関手続きが復活し迅速な手続きができず国境では新鮮な魚介類が大量に腐ったり、イタリアから輸入したコーヒーが通関にかかるコストのために逆に高くなったりしているのである。

NYT February 20-21, 2021
Biden on ‘short leash’ in approach to China
バイデン大統領、対中政策では多くの制限

on short leash: on a short leash の a が省略された形。leash は犬などのつなぎひものことで、リード(lead)のこと。英国では on a short lead がよく使われるようだ。短いひもで繋がれた犬の行動がその長さの範囲に制限されることから、活動や行動の自由度が制限されている状態を表わす。また、on a long leash は、制限はあるものの自由度が高い状況だ。

トランプ前政権では、通信大手のファーウェイに対する禁輸措置を発動するなど中国企業への強硬姿勢を前面に押し出していたが、バイデン政権においても対中国政策については自由度は少なく強硬路線を継承することになろう。

JT February 16, 2021
Beleaguered Suga pinning hopes on vaccine rollout
追い込まれた菅首相ワクチン接種に望みを託す

beleaguered: (批判を受けて) つらい立場にいる、包囲された
pin hopes on ~: ~に望みを託す、期待を寄せる; pin big hopes on his success: 彼の成功に大きな期待を寄せる、となる。

欧米などに約2ヶ月遅れで新型コロナウィルスワクチン の国内接種が17日に始まった。国民に厳しい自粛を強いておきながら菅首相自らの会食や与党議員の度重なる失態もあり、現政権が窮地に追い込まれている中でコロナ対策の切り札と期待されているワクチン接種だ。国内では16歳以上の国民を対象とする大事業で、低温でのワクチン輸送が必要となるなど前例のない全国的な取組みだ。直近の調査では過半数を大きく超える国民が中止または延期が望ましいとしているが、東京オリンピック・パラリンピック開催の是非をめぐる気運もワクチン接種の成否により大きく変わる要素を秘めているだけに失敗は許されない。

JT January 23, 2021
Bills penalizing those who shirk virus rules OK’d
コロナの罰則規定に応じない人を処罰する法案が閣議決定

shirk: (義務や責任を)回避する、逃れる。サメはsharkでつづりが似ているので注意。
OK’d: OK(了承する)の過去形 OKedではなくOK’dとなる。

 この文の主語はBills で述語は (were) OK’d で、法案は了承された、となる。何の法案かというと、新型インフルエンザ対策特別措置法と感染症法の改正案だ。現段階では政府内で閣議決定された段階でまだ法律になっていないので billだが国会で可決されればact、またはlawとなるのである。

 法案の内容は、コロナ対策で休業や営業時間短縮の要請に従わない事業者や、入院要請を拒否した人に対する罰則規定が含まれる。緊急事態宣言の対象地域で知事が飲食店等に休業や時短営業の命令をできるようにし、応じない場合には50万円以下の過料を科す。また、命令を出す際に事業者への立ち入り検査を可能とし、検査を拒否した場合には20万円以下の過料とする、となっている。感染症法改正案では、感染症患者が入院を拒否した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、とされている。

CNN January 18, 2021
Trump to issue around 100 pardons and commutations Tuesday, sources say
関係筋によると、トランプ、火曜日に100人程度に恩赦減刑を出す予定

pardon: 恩赦、容赦、許し
commutation: 減刑、交換、振替、通学/通勤

 今回のHeadlineは1/18付けのCNN電子版からピックアップした。pardon といえば、I beg your pardon? すみませんんが(聴き取れなかったので)もう一度言ってください、のpardonで、初めて海外に行く前にしっかりと暗記した人も多いだろう。任期終了間近の大統領やエリザベス女王もたまにpardonを与えて記事になったりしている。commutation は commute: 通学/通勤する、という意味でなじみ深いが、この文脈では減刑という意味だ。記事では pardon と commutation のr両方の意味を含む言い換え表現として clemency actions も使われている。

 1月20日の正午の任期終了まで残り僅かとなったトランプ大統領だが、その前日の火曜日に100名ほどの恩赦や減刑対象者を発表するということだ。政治犯や有名なラッパーなど幅広い分野からの人選になっているようだ。これまでの噂では本人自身をも恩赦するという前代未聞のアイデアもあったが、関係筋からするとトランプ本人と家族は含まれていないということだ。

JT January 16, 2021
Trump takes final swipes at Chinese firms
トランプ、中国企業に最後の圧力

take final swipes at: swipe は名詞で強打・非難・悪口、動詞で強打する、という意味。スマホなどの画面を指で上下左右に動かすこともswipe だ。

 任期残り僅かなトランプ大統領が、中国企業に対し駆け込みで対中圧力を強める強硬策を相次いで発表した。ベトナムやフィリピンが領海を主張する南シナ海( the South China Sea ) における人工島造成やその軍事拠点化に関与する中国共産党や海軍当局者、国有企業幹部に対しビザの発給を制限すると発表。

 さらに中国国有の石油大手のCNOOC( China National Offshore Oil Corporation, 中国海洋石油 )を南シナ海近隣の国々を威圧する手助けをしているとして安全保障上の輸出規制リストに追加した。また、アメリカからの投資禁止の対象としている中国軍関連企業としてスマホ大手の小米科技( Xiaomi Corp. )など9社を投資禁止対象として追加で認定したのである。

NYT January 14, 2021
Slouching or slacking? These chairs will know
疲れからくる姿勢の悪さサボり? この椅子はお見通し

slouch: (疲れからくる)前かがみの姿勢で座る/立つ/歩く
slack: 怠ける、サボる

中国の企業が開発した’スマート’クッションがすごい。デスクワークをする従業員の健康管理の目的で考案されたが、健康状態をモニターし疲労からくる姿勢の悪さや心拍数を計測し、椅子に座っていた合計時間まで出してしまうという。当然、予想されたことが起きてしまったと言うべきか。ある人事部のマネジャーはこの便利な発明品を従業員の長時間の休憩や早期退社やサボりの調査に利用し始め、ある企業の社員はそれが原因でボーナスが減額されたという。ここまでの徹底した管理が日本の企業で行われることはないと思われるが、ひたひたと迫り来る IoT社会では十分あり得ることではある。

JT December 26, 2020
Five takeaways from the post-Brexit trade agreement
英EU離脱後の貿易協定における5つの留意点

takeaway: 覚えておくべき要点、留意点、ポイント、論点、重要な情報; (英) 持帰り用料理

 日本ではテイクアウトが定着しているが、持ち帰り料理を表わす英語は英国ではtakeawayでアメリカではtakeoutやto go(to-go)が一般的だろうか。ヘッドラインにあるようにビジネスの世界ではtakeawayはセミナーなどで学んで「持ち帰るべき重要なポイント」といったニュアンスで使われていて important takeawaysやkey takeaways などと複数形で使われることが多い。
 記事では12月24日に合意に至った英-EU間の貿易協定に関する5つの重要ポイントとして、
It saves Britain from crashing out of the European Union.
Both sides compromised on fish, a major sticking point.
Pro-Brexit lawmakers got many of their wishes.
But the EU won assurances, too.
The British economy faces enormous hurdles.
を挙げ解説している。

JT December 16, 2020
Demon Slayer‘ close to becoming top-grossing film
鬼滅の刃興行収入で史上最高に近づく

Demon Slayer: 鬼滅の刃
top-grossing film: 最高の興行収入を挙げた映画  highest-grossing, largest- grossing も使われる。

 Demon Slayer が Spirited Away を超える? 一体何のことと思ったら、映画版 ‘Demon Slayer’ (鬼滅の刃)の興行収入が月曜日(12/14)時点で302.8億円を計上し、スタジオジブリの ‘Spirited Away’ ( 千と千尋の神隠し)が記録した過去最高額の308億円に迫っているとのこと。

 映画の話を英語ネイティブとする時に困るのがまずタイトルだ。今回のオリジナルが邦画の英語のタイトルもそうだが、英米の映画の日本語名も難解だ。最近の例では、邦題は「アナと雪の女王」が原題は ‘Frozen’ だし、若い頃何回も観た「愛と青春の旅立ち」は ‘An officer and a gentleman’ だ。この現象は映画に限らず、本や絵画などいちいち事前に調べておかないと話がかみ合わない。’Getting to YES’ はなぜか「ハーバード流交渉術」になってるし、ムンクの「叫び」は ‘Shout’ などではなく ‘The Scream’ なので知っておいた方がいいだろう。

JT December 11, 2020
Vaccine rollout takes shape, with 10,500 freezers
ワクチン展開、冷凍庫
10,500台で具体化

rollout: 新製品の発表、新商品の発売、投入、展開 roll out … は動詞で …を大量生産する、絨毯などを広げる
take shape: まとまる、具体化する、形成される、格好がつく、目鼻がつく

英国では12月8日から新型コロナウィルスのワクチン接種が始まり、米国でもファイザーとBioNTech社が開発したワクチン接種が承認された。日本ではいずれのワクチンの承認もまだ先の話だが、-75℃の低温保管が必要なファイザーとBioNTech社製のワクチン向けに3,000台、-20℃での保管ができる冷凍庫を7,500台の準備を整え全国各地でのワクチン接種の具体化が進んでいるようだ。政府は来年3月に全国的なワクチン接種を目論んでいる。

JT December 6, 2020
Family photo studios unable to keep virus at bay
家族向けフォトスタジオ、コロナの影響避けられず

keep … at bay: …を寄せつけない、このbayは「入江、湾」ではなく、猟犬が獲物を追詰めた際のほえ声の意味で、獲物のそばで吠えている犬をそれ以上近づけないようにしておく、が原義のようだ。

先月は七五三のお祝い( a traditional rite of passage for 3-and 7-year-old girls and 5-year-old boys )があり子供の成長と幸福を願う多くの家族がフォトスタジオを訪れた。写真スタジオも猛威を振るうコロナウィルスの影響を受けずにはいられない。21世紀に入る頃から写真のデジタル化とスマートフォンのカメラの普及でスタジオに出向いて記念写真を撮る機会が減ってきたところにこのパンデミックの襲来である。帝国データバンクの統計では今年に入りこれまで20社の倒産が報告されているようだ。但し、この数字は2010年と2013年にも記録しており減少傾向は続いている。別の調査によれば、この業界の売上高は2017年が2,005億円、2018年が1,907億円、昨年が1820億円と年率5%減少しており、今年はコロナ禍が押し下げ要因となりさらなる落込みが予想されている。

JT December 3, 2020
Squabble over Go To leaves firms in limbo
Go To 事業を巡る小競り合いで民間業者は置去りに

squabble: つまらないことでの言い争い、口論、けんか
leave … in limbo: … を置き去りにする、不安な状態で放置する。limboは無視、忘却、不安定、宙ぶらりんの状態。

「Go To トラベル」事業を巡って政府は新型コロナの感染が広がる中、11月27日に陽性者が急激に増えている札幌市と大阪市からの出発も自粛するよう要請した。これは3日前に同地を目的地とする旅行への Go To トラベル事業の新規予約の停止を促してきたが発着双方の自粛要請を発表した。いずれも危機感を持った知事や市長が現地の状況を考慮した上で中央政府と連携を取りながらの着地となった格好だ。

 一方で、東京都に関しては12月1日になって菅首相と小池東京都知事が会談を持ち、高齢者と基礎疾患がある人に東京発着のGo To 事業の利用を自粛するよう促すことで合意した。経済を止めたくない政府と、感染防止策を徹底したいが休業や営業時間短縮に対する事業者への支援金や協力金を極力抑えたい小池知事との攻防が報道からは手に取るように分かる。事業存続の危機にある現場の観光業者や飲食店経営者は中央政府と各首長の攻防に翻弄され不安な状態で放置されている状態が続く。

 

NYT November 26, 2020
Word of the Year? It’s too hard to isolate.
オックスフォード辞典の’今年のワード’、2020年は 1つに絞れ

Word of the Year: オックスフォード英語辞典が毎年選ぶその年に流行った英語
isolate: 孤立させる、際立たせる

 日本でも「今年の新語・流行語大賞」やその年の世相を表す「今年の漢字」が発表される時期が近づいている。英オックスフォード英語辞典は毎年この時期に発表している Word of the Year を今年に限っては1つに絞ることができなかったと発表した。新型コロナウィルス関連の語彙が群れをなして急速に拡がったことが原因だ。昨年の Word of the Year には “climate emergency”(気候非常事態宣言)が選ばれている。

 例えば “pandemic” は、記事によると、昨年比57,000%以上使用され、4月までには “coronavirus” が、ありふれた “time” よりも多く使われた単語になったとしている。 新型コロナ関連の新語(new coinages)としては “Blursday”, “covidiots”, “doomscrolling” を挙げている。また、以前は特別な用語として使われていたものがこのパンデミックにより一般的に使われるようになった言葉も多い。例えば、”social distancing”, “flatten the curve”, “lockdown”, “stay-at-home”などだ。単語の結びつきにも変化があった。以前は “remote” は “village”, “island”, “control”と連語をなしていたが、今年は “learning”, “working”, “workforce”との結びつきが多かった。こうして今年の新語・流行語を振り返ってみると気分が暗くなってしまうが、来年は明るく前向きなwordが選ばれることを期待したいものだ。

 

JT November 18, 2020
Reality of loss sinking in for Trump, aides say
側近:トランプが敗北の現実を理解し実感している

sink in: (人から受けた忠告や親切などが)心にしみる、実感が湧く、しっくりくる
aides: aideの複数形。側近、補佐官

 sinkは「水面下などに沈む」意味の動詞だが、sink in は雨が地面にしみ込むように自分の身に起きた出来事や、忠告や親切などが十分理解されしっくりくる、といったニュアンスだ。トランプ大統領は全米50州で勝敗がつき、獲得した選挙人232に対しバイデン候補は306人と結局は惨敗したことが判明した後でもいくつかの州で選挙の不正を訴え続けている。いずれも明確な証拠を見出していないにも関わらずだ。

 トランプ大統領は公には敗北を認めていないが、取巻きの側近によれば、トランプ自身大統領選の敗北を受け入れ始めている(‘U.S. President Donald Trump is coming to grips with his re-election defeat, …’)ようで、法廷闘争を繰り返しても選挙結果が覆る可能性はないだろうとの見方をしぶしぶ受け入れているようだ。早く敗北宣言を出しすみやかに政権移行に向けた引継ぎをして、自身の掲げた ‘Make America Great Again’ を次期政権に期待したらいかがだろう。

 

JT November 16, 2020
Tokyo finds luring firms from H.K. may be tall order
東京が香港から企業を誘致すること無理な注文

luring: lure(おびき寄せる、誘惑する) +ing ⇒おびき寄せること、誘惑すること。
tall order: 無理な注文、無理難題、できない相談。文法的には a tall order が正しいが見出しではよく省略される。

 海外から外国企業や金融機関、金融人材を東京に誘致しニューヨークやロンドンと並ぶ国際金融都市構想の実現を目指す機運が再び高まってきた。5月26日付けのHeadline: Reining in Hong Kong is just a start for Beijing にも書いたが、今年6月に中国が香港国家安全法を施行したことにより、欧米の金融機関を含む大手企業が香港からの撤退や縮小を表明している。東京都は10月に香港にインフォメーションセンターを設置したが、小池都知事は、”I want to make Tokyo Asia’s number one financial city” と述べ香港からの移転を模索する国際企業向けに東京をアピールした。

 はたして東京は香港から退出する企業や金融機関の候補地になり得るのだろうか。専門家は東京がアジア随一の国際金融都市になるには大きな障害(stumbling blocks)があり、実現は夢物語に過ぎないと言う。まずは所得税の高さが挙げられる。日本は45%に対し、シンガポールは22%、香港は17%だ。英語レベルの低さも長年改善されていないしデジタル技術の導入も後ろ向きに映る。最近では東京証券取引所でハードウェアの不具合(hardware failure)により終日取引ができないという失態を犯してしまったことを挙げている。30年近く国内外の銀行に籍を置いてきた筆者からみても、政府や東京が本気でアジア1の金融都市を目指している熱意は感じられないし、実現すると思っている当事者はいないだろう。

 

JT November 8, 2020
Pandemic spurs workers to engage in moonlighting
パンデミックがサラリーマンの副業拍車

spur: 拍車をかける、駆り立てる
engage in ~: ~に従事する、参加する、専念する
moonlighting: 副業、夜のアルバイト、夜間行動。moonlightは「月明かり」以外に、動詞で副業する、の意味。

 Moonlight は「月明かり」の原義から月のかすかな光をたよりに夜の内職をする昭和なイメージを抱くが、夜間のアルバイトを含めた広義の副業を意味する言葉だ。side job や second job も副業を意味する一般的な用語だ。

 日本政府は新型コロナが流行る3年前の2017年に仕事のスキル、収入向上を目的に、副業や兼業について、社会の多様化に伴う働き方改革の1つとして導入を後押しする方針を示している。終身雇用の慣習はすでに過去のものとなりつつあるが、新型コロナの経済に対する影響が長引くにつれ多くの大企業でも副業を認める傾向にある。記事ではみずほ銀行が顕著な例(striking example)として取り上げられている。みずほフィナンシャルグループは2019年10月にメガバンクとして初めて副業を解禁し、多様な働き方を積極的に推進している。先日の発表では、今後週休3日、週休4日制を導入し、増えた休日をキャリア向上のための勉強や介護、副業に活用してもらうのが狙いとのことで、それぞれ基本給の80%、60%が支払われるとのことだ。

 

NYT November 3, 2020
For trying times, try ‘one good belly laugh a day’
試練の時には”1日に1回大笑い’を

trying times: 試練の時、苦しい時。カンマ(,)の後のtryは、試す、努力する、の意味だが、それ以外にも、苦しめる、試練にかける、の意味があり、trying timeでコロナ禍のような ‘試練の時’ という意味になる。文中では、turbulent times が同様の意味で使われている。
belly laugh: 腹を抱えて笑うこと、(腹をゆするほどの)大笑い。

 新型ウィルスによる試練の時期(trying time)が長引いていて人と会うこともままならない。こうした時には1日1回腹を抱えて笑えるようなことを見つけて気晴らしをするのがいいようだ。医師や疫学の専門家によると、ストレスが高まると心臓発作や卒中などの心臓疾患発症のリスクが高まると指摘している。一方で、笑いは、気晴らしになるだけでなく、酸化窒素(nitric oxide)という物質の分泌を促して血管を弛緩させて血液が固まるリスクを減らす効用があるという。日本の高齢者に関する疫学研究からは、よく笑う人のほうが心臓疾患に罹るリスクは少ないといった研究結果も紹介されている。

 

NYT October 26, 2020
R.I.P., G.O.P.
共和党安らかに眠れ

R.I.P.: Rest In Peace の略で、安らかに眠れ、冥福を祈る、の意。キリスト教圏で死者を追悼する言葉。
G.O.P.: Grand Old Party の略で、アメリカ共和党( Republican Party)のこと。歴史は古く1854年に結党され、共和党の最初の大統領は16代のリンカーン大統領(1860年就任)。民主党( Democratic Party) と並ぶ2大政党の1つ。

2020年の大統領選挙まであと1週間と迫ったが、再選を狙う共和党のトランプ大統領の敗北が濃厚になってきた。New York Times は特に反トランプ色の強い新聞だが早速共和党の追悼記事を社説欄に掲載した。内容についてはここでは触れずに来週の選挙結果とその分析内容を待ちたい。

 

JT October 17, 2020
Surfing world ready to put ring on it
サーフィン界 約束の指輪をはめる

put ring on it: 約束に指輪をはめる、結婚の約束をする、きっちりと約束を交わす。

 新聞見出しでは よく冠詞は省略されるが、ここでも  a が省略されており、本来は put a ring on it となる。また、be動詞も同様で、Surfing world is ready  to put a ring on it. が本来の文となる。2008年にリリースされた Beyonce の Single Ladies ( Put a Ring on It ) が大ヒットしアメリカのBillboard Hot 100で4 週間にわたり1位になったのでご存知の方も多いだろう。記事では put a ring on it と同様の意味で tie the knot も使われるので合わせて覚えておきたい。

 サーフィン界は長年の夢が叶い2020年の東京オリンピックの公式競技になったがCOVID-19 により、サーフィンとオリンピックの結婚式は丸々一年延期となってしまった。選手をはじめ関係者は再調整が大変だがオリンピックデビューに向け前向きにとらえているようだ。予想するのが難しい波を自在に乗りこなす一流のサーファーの華麗な技を今から期待している。

 

NYT October 10, 2020
Trump is killing the U.S. economy out of spite
トランプは腹いせに米国経済を滅ぼす

out of spite: 腹いせに、悪意から、執念で。spite: (名詞) 悪意、意地悪、恨み、執念 (動詞)意地悪をする。

 spiteという単語からは in spite of … (…にもかかわらず) がすぐに頭に浮かぶ。In spite of all our efforts, our project ended in failure. ( 我々のあらゆる努力にもかかわらずプロジェクトは失敗に終わった)  また、in spite of oneself は、思わず、自然と、意に反して、といった意味で I laughed in spite of myself. で 思わず笑ってしまった、という意味だ。動詞では、意地悪をする、いじめる、という意味で Tom did it just to spite me. トムは意地悪をするだけのためにそれをした、となる。

  トランプ大統領は、新型コロナに感染したと思ったら数日で退院し早速大統領選挙に向けた活動を再開した。ホワイトハウス関連のコロナ感染者は30人以上に達し、コロナ対策を軽視してきた政権の姿勢に対して国民からの疑問と非難が強まっている。民主党候補のバイデン前副大統領に対して支持率の差は広がり劣勢が伝えられている。トランプ大統領は10月6日に、追加の経済対策を巡る与野党協議を当面停止すると発表し、公的経済支援が途切れる公算が強まったが、一転して9日に1.8兆ドル(従来の案は1.6兆ドル)規模の支援に積み増す案を民主党に提案し、2.2兆ドル規模の経済支援を求める民主党に対し折衷案を提示したのである。両党の思惑が交差し与野党協議は合意に至ってはいないが、共和党内からも巨額の財政支出には反対論が根強く追加対策は宙に浮いたままだ。トランプは形勢が悪くなる中、選挙で敗れた場合には選挙結果を受入れないと表明しており、安全な政権移譲に不安が残る。11月3日の選挙に敗れてもその後2か月半は大統領職にあるため、自分を再選させなかった国民に対して腹いせに経済対策で復讐するのではとの憶測もある。

 

JT October 8, 2020
Macron on the spot with Brexit talks snagged
マクロン大統領、暗礁に乗り上げた英国のEU離脱後協議で窮地に

(be) on the spot: 困った立場にいる、窮地に陥って
snagged: snagの過去分詞で、動きが取れなくなった、座礁した

EUを離脱した英国とEUは一週間にわたる交渉を10月2日に終えたが大きな進展はなく、合意への道は険しいままだ。溝が埋まらない対立点の1つは英国海域での漁業権問題。英国は島国で海洋資源が豊富だがEU加盟国の多くは大陸国で海産物を他国に依存しており、EU内に英国が存在する意義は非常に大きかった。EUはBrexit後も自由貿易協定(FTA)によって英海域での安定した漁業権を確保したい狙いがある。特に、フランスは漁業水域を英国と接しており他国に比べてもこの漁業権問題は重要課題でありマクロン大統領にとっても譲れない点で、2022年の大統領選を見据えて譲歩を拒否する構えで温度差のある他の加盟国との意見集約がもつれている。

 

JT October 1, 2020
The ins and outs of the relaxed entry controls
緩和された入国管理詳細

ins and outs: 複雑な事情、詳細、一部始終、特質、特性。似た表現に in and out があるが、これは、~から出たり入ったり、という意味とins and outs と同様に、すっかり、何もかも、という意味もある。I have been in and out of hospitals since last year. (昨年来入退院を繰り返している。) コロナ下における人の往来制限内容の詳細という両方の意味を掛けた、なるほどと思わせるヘッドラインになっている。
entry controls: 入国管理、入国制限

 日本政府は新型コロナウィルスの感染が広がった 今年2月以降、海外からの入国を段階的に制限してきたが、10月1日以降緩和されたルールに従って順次入国を認める方針を決定した。これまで159ヶ国・地域からの外国人の入国を原則禁止していたが、爆発的な感染拡大は逃れたとして、夏以降、政府は入国時の緩和策を検討してきた。

 まず、駐在員の受入れを念頭に、感染状況が落ち着いているベトナムなど16ヶ国・地域とビジネスに限定した往来再開の交渉を重ねてきた。さらに、今回は対象国と要件を拡大し、全世界から中長期の在留資格者に対して入国を順次認めることを決めたのである。短期滞在者のうち観光目的の外国人は除き、ビジネス目的の出張者は限定的に認めるというもの。国内外からビジネスへの深刻な悪影響を懸念する意見が多く、中長期の在留資格を有する外国人の入国緩和に至った。

 

NYT September 29, 2020
Failure to sanction Belarus lays bare E.U.’s weakness
ベラルーシに対する制裁の失敗がEUの脆弱性をさらけ出すことに

sanction: v. 制裁措置を加える、(公的機関などが) 認可する、容認する。n. 制裁措置、罰則; 認可、許可、承認。
lay bare: ~を暴露する、打ち明ける、むき出しにする。

ベラルーシ(Belarus)は、1991年のソビエト連邦崩壊後に誕生した国で、1994年から現職のルカシェンコ大統領の独裁体制が続いている。東の国境をロシアと接しており両国の結びつきは強い。今年8月9日の大統領選挙では6期目を狙うルカシェンコ氏の他に反ルカシェンコの3候補が立候補したが、その3候補は選挙管理委員会から立候補を拒否される事態となった。逮捕された有力候補のチハノフスキー氏に代わり妻のチハノフスカヤ氏が立候補し、「大統領になったら公正で自由な選挙を行う」ことを公約とし一気に人気が上昇した。選挙管理委員会は、開票結果をルカシェンコ氏 80%、チハノフスカヤ氏 10%と発表。ベラルーシ国内ではあからさまな不正に多くの国民が抗議しルカシェンコ大統領の退陣を求める抗議が連日繰り返されている。

EUの外相理事会は9月21日、ルカシェンコ氏を含む政府関係者40人に対する制裁を巡り協議したが合意に至らなかった。ロシアと良好な関係にあるキプロス(Cyprus) が拒否権を発動したため満場一致(unanimity)を条件とするEUのルールの脆弱性を露呈してしまった。

 

JT September 27, 2020
Telltale signs that a business may be close to bankruptcy
会社が倒産に近づく明らかな兆候

telltale signs: 前兆現象、明らかな兆候、証拠となる兆し。telltale: (名詞) 密告者、告げ口する人。(形容詞) 紛れもない、隠そうとしても現れる。telltale evidence: 明らかな証拠
business: ここでのbusiness は不定冠詞 a がついているので会社や飲食店などの事業体を指す。(可算名詞) 会社、お店。
(不可算名詞) 仕事、任務、事業。

 帝国データバンクによると、今年に入って487社が9月2日時点で倒産している(記事中では487社となっているが帝国データバンクのサイトでははるかに多くの企業が倒産している)。飲食産業や接待業、アパレル、小売業が特に大きな打撃を受けているのは事実で、私がたまに行っていた都内と近郊の飲食店のうち3店がコロナ禍により閉店してしまっていた。 

記事では、会社が倒産に至る段階においてtelltale signs(明らかな兆候)として、社内にあったウォーターサーバー(英語ではwater dispenser) がなくなっていたり、過去18か月の間に会社が何度か移転していたり、会社のウェブサイトが更新されていない、などの例を挙げている。また、過去に倒産した企業に働いていた経験のある300人の会社員を対象にした調査では、およそ2/3の回答者は、会社が倒産する前に倒産するかもしれないと推測できた、と答えたとのことだ。

 

NYT September 12, 2020
Cracking the glass ceiling
ガラスの天井を打ち破る

crack: ヒビを入れる、割る、砕く。名詞で、亀裂、裂け目、ひび割れ。CitigroupのCEOに内定した Jane Fraser is cracking ~ということだが、Headlineでは Jane Fraser is は省略されている。
the glass ceiling: ガラスの天井( 企業などの組織で、資質や能力に関わらず女性や少数民族の昇進を阻む、目に見えない障壁を表わす表現)

 アメリカ金融大手のシティグループのCEOにJane Fraserという女性が内定した。大手コンサル企業のマッキンゼーからシティに転じ主要ポストを歴任しており資質や能力、功績はCEOの職に十分だろう。個人的に意外だったのがアメリカの大手銀行では初の女性CEO誕生という事実だ。アメリカ銀行協会によると2018年時点で女性CEOは40人で全体の4%程度とのことで銀行業界における女性の幹部登用は他業界に比べて相当低いようだ。自動車業界ではゼネラルモーターズのメアリーパーラ氏が2014年に、新聞大手では先日、まさにニューヨークタイムズのメレディス コピット レビアン氏がCEOに就任している。

 9月13日付けの日経新聞によると、各国の上場企業が100社以上のデータがある54ヶ国 を調査したところ、取締役に占める女性の割合が最も高いのはノルウェー(37%)、次いでフランス(34%)だ。欧州は女性取締役の比率が高い国が多く、アメリカは20%、中国は19%。5%を下回ったのは、日本、韓国、サウジアラビアなど6か国のみとのことだ。この点では予想した通りで意外性はなかった。

 

JT September 1, 2020
Factions play major role in choosing Abe successor
派閥が安倍首相の後継者を選ぶのに重要な役割を担う

factions: 派閥、党派。内紛、内輪もめという意味もある。
play a major role in ~: ~に関して重要な役割を果たす。roleは可算名詞なので冠詞の a が必要だが新聞の見出しでは冠詞はよく省略される。majorの代わりに key や important もよく用いられる。
successor: 後継者、後任。本来、Abe’s successor となるところだが、’sがなくても誤解が生じないため省略されている。

安倍首相の後継者を決める自民党総裁選 に9月2日時点で岸田政調会長、石破氏、菅官房長官、の3氏が立候補した。全国の自民党員が投票するわけではなく、国会議員票494、地方票141、合計535票で争うとのことだ。自民党内には7派閥があり、いづれにも属さない無派閥議員が64議員いるようだが、既に7派閥のうち5派閥が菅氏への指示を固めているという。菅氏を支持する5派閥の議員数は264人おり議員票の7割を占めるため菅氏の当選は確実となっている。

 

JT July 31, 2020
U.K., Japan inch closer to post-Brexit trade accord
英日間でブレグジット後の貿易協定に前進
 

U.K., Japan: U.K. and Japanとイコール。,(コンマ)はandの代用で、新聞の見出しでは頻繁に用いられる。
inch closer to: inchは長さの単位で2.54cm だが、ここでは動詞で、少しづつ進むの意。inch closer to ~で、~に向け少しづつ前進する、となる。

 イギリスのEU離脱が年末に迫っている。イギリス-日本間の貿易協定はEU加盟国とのFTAである日欧経済連携協定(EPA)はEU離脱後は適用されなくなるため新たな合意が必要になる。関係筋によると、議論を深めて解決すべき項目はあるものの今後数週間で合意に至る可能性が高いようだ。

 2019年のイギリスと日本の貿易額は 390億ポンド(510億ドル)以上で、金額では日本はイギリスにとって11番目に多い貿易相手国だ。EUとは貿易条件で膠着状態にあり、イギリスにとって好条件で日本と合意できることになればEU離脱によって得られる重要な恩恵となり、今後他国との交渉の後押しとなる。

 

 

NYT July 14, 2020
Grocer’s eviction kindles gentrification fight in London
ロンドンで雑貨店の立ち退きジェントリフィケーション闘争に火をつけた

eviction: 立ち退き、追い立てること。an eviction order: 立ち退き命令。
gentrification: 元々は貧困層の住宅地だったエリアが、富裕層の流入や土地買収などによる再開発によって高級化すること。動詞は gentrify。

 Gentrification は ぴたりと当てはまる日本語がなく上記のような説明になったが、アメリカの主要都市やロンドンなどの大都市では大きな問題となるケースが多い。記事は、ロンドン中心部のBrixton にある雑貨店が立ち退きに会った話だ。Nour Cash & Carry という雑貨店の親子はこの地に店を開いて20年以上経つが、今年1月にeviction notice(退去通知)を受け取った。立ち退き期限は7月22日。テキサス出身の富豪である新しい土地所有者は、その一帯を新しい高級市場に造り変えてその雑貨店は取り壊し、ハイエンドなエリアに電気を供給する発電所を作る予定だという。行き場を失うことになる雑貨店親子は立ち退き条件を拒否し、長年の常連客は店の存続のために立ち上がった。

 第2次世界大戦後のイギリスでは労働力が不足していたため、1948年から50年代にかけて旧植民地であるジャマイカなどカリブ海出身の国々から移民を積極的に受け入れた。その移民を乗せた船の名前がウィンドラッシュ(Windrush)号だったため、彼らはウィンドラッシュ世代(Windrush Genereation)と呼ばれるが、Brixtonは当時、積極的に移民を受け入れており、ウィンドラッシュ世代の中心的存在なのである。Nour Cash & Carry の親子はイラク出身だが1980年に国を追われ10年間イランにいた後、1990年にBrixtonにたどり着いたためWindrush世代ではないが、多くの周辺住民同様、低所得の移民なのである。ジェントリフィケーションの問題は、歴史的背景は異なるにせよたいていどこで起こっても大きな所得格差とマイノリティが抱える諸問題を含み、それぞれの国が直面する民族や移民受入れの問題を再燃させ、油を注ぐことになるのである。

 それで雑貨屋の親子はどうなったかって? 草の根の Save Nour 運動は地元のセレブの協力やSNSを味方につけて55千もの店舗存続を願うオンライン署名を得た。そして、6月後半にようやく交渉がまとまり、近くの店舗に移れることが決まった。しかも賃料をすこし下げてもらうというおまけ付きで。

 

NYT June 25, 2020
Biden’s war chest swells along with the polls
バイデン候補 世論調査と共に選挙資金膨らむ

war chest: 選挙の活動資金、軍資金
polls: 世論調査 poll の複数形。the polls で投票所の意。

 2020年11月に行われるアメリカ大統領選で、トランプ大統領の再選はいよいよ厳しくなってきている。新型コロナの感染拡大、経済の悪化、警官による黒人暴行死問題など重大な危機に直面し、主要な世論調査ではいずれも民主党のバイデン候補に大きな差を付けられている。アメリカでは4月15日以降、日本の10万円の定額給付金と同様に、コロナ対策として1,200米ドルが Government Stimulus Check の名称で国民に配られたが、それに伴いバイデン陣営に対する政治献金が個人名で1,200米ドルづつオンライン入金されるケースが一気に増えたようだ。トランプ政権によるコロナ対策の一環として取られた対策だが、皮肉にも敵対する相手陣営に有利に働いてしまった格好だ。

 大統領選が近づくにつれ世論調査の回数も増えるが、そのたびごとにバイデン候補の優勢が報じられ、集まる政治献金も加速がついて増加している。最近ではZoomを利用したオンライン選挙活動での資金集めが奏功する一方で、会場やケータリングの手配や飲み物の準備の必要がなく支出の削減という有難い副産物も生まれた。

 

NYT June 12, 2020
Many small businesses get cold feet on loans
多くの中小企業が融資の申請に及び腰

get cold feet: 及び腰になる、おじけづく、ちゅうちょする、足がすくむ。Don’t get cold feet! で、あんまり緊張しないでね、という意味。

新型コロナウィルスによる景気の悪化からの回復実現のため、米国政府は総額2.2兆米ドルの予算を組んだ。そのパッケージの柱が Paycheck Protection Program (P.P.P.)で、中小企業にとって恩恵の大きい融資プロジェクトだ。P.P.P.のための予算が6,590億米ドル組まれ、既に8割近い5,114億米ドル(6/9 時点)が承認されている。社員の雇用や給与額の維持を目的としており、従業員500名以下の会社や個人事業主が対象で、最長24週間分の従業員の給与や事務所賃料、光熱費などの支払いに充当した金額の返済が免除になるという有難い応援パッケージだ。100万ドルの借入を行い、そのうち40万ドルを社員の給与等に充当した場合にはその分は返済免除になり、残りの60万ドルについては最長5年、年利1%で返済すればいい。但し、返済免除となる条件が厳しく、該当期間中に従業員数や給与額が減少したとしても期間終了時には元の従業員数と給与額に戻っていること、などが課されているようだ。現実には多くの中小企業が、事業再開の時期が見通せなかったり、コロナ対策にかかる追加の費用等を考慮し、ローン申請を検討後、断念したり一旦借り入れた融資を早々に返済しているのである。

 

JT June 6, 2020
Travel bans wreak havoc on companies
渡航禁止により企業に痛手

travel bans: 渡航禁止(令)、渡航制限
wreak havoc on ~: ~をめちゃくちゃにする、大損害・大混乱を生じさせる
wreak: 怒り、恨みをぶちまける、危害を加える、荒廃をもたらす
havoc: 荒廃、大損害、大混乱、無秩序

 日本は新型コロナ対策で111ヶ国に対して有効な労働ビザを持つ外国人の日本国内への入国制限を行っている。この措置により多くの国内企業にとって外国人採用が困難となっている。停滞した経済回復と常態化した人手不足解消の担い手と期待された海外人材の入国制限(entry restrictions)は人手不足が深刻なサービス産業や農業だけでなく、高度なIT知識を必要とする企業にも大打撃を与えているようだ。

 入国制限を行っているのは日本に限ったことではないが、少子高齢化が顕著で、国内のIT人材が極端に不足する国においてはコロナ終息後の新しい働き方が彼らにとって魅了的であり納得感が得られるものでなければならない。

 

NYT May 26, 2020
Reining in Hong Kong is just a start for Beijing
中国にとって香港の統制強化はほんの始まりに過ぎない

rein in : 制御する、抑制する、けん制する。reinはもともと手綱を意味し、rein inで手綱を引いて馬の歩調を緩めることに由来する。rein in inflation はインフレを抑制する、の意。
Beijing: 中国、中国政府。首都名がその国や国の政権を意味する。Tokyoなら日本、または日本政府。

 北京で開催されていた全国人民代表会議(全人代, the National People’s Congress)は5月28日に「香港国家安全法」( Hong Kong security law) を採択して閉幕した。この法律により、中国が国家の安全に関する機関を香港に設置し、香港においても反体制活動に対して直接取り締まりが可能となる。対象となる活動には、テロ行為や外部による内政干渉、中央政府の転覆とみなされるものが含まれる。香港には1997年の中国返還以降高度な自治を認める「一国二制度」があるが、この法律の成立により一国二制度は形骸化し言論や活動の自由が制限されることになろう。

 中国のこうした高圧的な外交は、ベトナム、マレーシア、 フィリピンが領有権を互いに主張する南沙諸島において軍事活動を活発化し行政府を設けて領有権を主張し実効支配を強めている。また、中国の公船が頻繁に尖閣諸島周辺に領海に侵入し脅かしているのは周知の事実。インドとはヒマラヤ山脈の境界を巡り衝突しておりこちらも一触即発に近い状態だ。

 

JT May 19, 2020
Central banks let the genie out of the bottle
世界の中銀 魔法のランプをこすってしまった

let the genie out of the bottle: genieは「アラジン」に登場する、魔法のランプから出てくる魔人。転じてトラブルの種、手に負えないもの、のこと。元々は、ランプではなく栓をしてあるボトルらしい。瓶に閉じ込められていた人間の姿に似た魔神が飛び出し悪いことを連続的に引き起こすとされたことから、取り返しのつかない事態になる、収取がつかなくなる、といったことの比喩に使われ、元の状態に戻すことが困難な状態を指す。

 世界の中央銀行はコロナの流行が本格化した3月以降、大掛かりな資産購入や資金供給、利下げといった複合的な政策を実施してきた。しかし、そのはるか以前から日銀や欧州中央銀行(ECB)はマイナス金利政策を実施している。日銀の黒田総裁は「必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と強調し、具体的な措置として、「資産購入の拡大や資金供給の拡充、利下げなどができる」と述べており一層の量的緩和と利下げを視野に入れている。米英ではマイナス金利政策を先行させた日欧の政策が景気回復の実現に対して明らかな成果を出していないと見るが、コロナ終息後も長期間の低迷が懸念される中、各国の金融当局者は異例の低金利政策をとらざるを得ないとの認識で一致しているようだ。

NYT May 15, 2020
Passing the buck, creatively
責任転嫁、独創的に(トランプ流に)

pass the buck: 責任転嫁する、面倒なことを押し付ける。buck はここでは責任の意。他に、雄シカ、米ドル、豪ドル、ホラ、自慢話、などの意味がある。

 buckを使った表現では、The buck stops here. がある。アメリカ第33代大統領 Harry S. Truman( 在任 1945-53) の座右の銘とされているが、責任はここで止まる→最終的な責任は私が取る、という意味だ。当時副大統領だったTrumanは、ルーズベルト大統領が1945年4月に急逝したため、急遽、大統領に繰り上がってしまった。第二次世界大戦の末期という戦時下での大統領職の責任の重圧は容易に想像できない。The BUCK STOPS here! と書かれた表示板を大統領執務室の机の上に置いていたと言われるが、冷静さを保ちながらも自らを奮い立たせていたことがうかがえる。

記事では、アメリカの新型コロナウィルスの感染者数とそれによる死亡者数が他の国を圧倒しているが、トランプ大統領は自らの初動の遅れや、ホワイトハウス内でも感染者が相次いでいるにもかかわらず自身はマスクをしないといった行動を批判されている。トランプによる一連の中国とWHO批判は、自らの対応のまずさを隠すための責任転嫁であり、また、刻々と変化する状況を連日自らが詳細に説明するニューヨーク州のクオモ知事と比較しながら、トランプは面倒なことを知事に押し付けている、といった論調だ。

NYT May 9, 2020
Busy making the cans that fly off the shelves
飛ぶように売れる缶詰用の缶工場は大忙し

fly off the shelves: (棚に並んだ商品などが)飛ぶように売れる

 fly off the shelves は文字通り「棚から離れて飛んでいく」からイメージしやすい。rack(棚)を使った fly off the racks も同様の意味で使われる。いずれも複数形のshelves, racks が用いられるので注意したい。sell like hot cakes という表現も「飛ぶように売れる」の意味。

 新型コロナウィルスの感染拡大による外出自粛で内食需要が伸び、家庭用の缶詰や冷凍食材が国内外で好調のようだ。記事では、米国内でレストランが休業を余儀なくされる一方で、スープや野菜、魚用の缶詰需要が一気に伸び、缶詰製造ラインでの雇用が増えている。前回のheadlineでは、farm-to-tableの窮状を伝えたが、人間の生活において不可欠な衣・食・住のうちでも食については毎日新たな消費をし続けないわけにはいかないわけで、食材が余っている場所からどのようにして必要としている場所に届けるのかが重要になってくる。コロナ禍後の新生活でも賞味期限の長さにアドバンテージがある缶詰の活用が活かされることになるだろう。

 

NYT April 18, 2020
Growers in limbo as farm-to-table link breaks
’農場から食卓へ’の連携が崩壊し生産者は身動き取れず

(be) in limbo: 不安定な/中途半端な/どっちつかずの/宙ぶらりんの 状態になっている
farm-to-table: 農場から食卓へ、生産者から消費者へ

 limboを辞書で調べると、キリスト教に関する語として地獄の辺土(天国と地獄の間で、洗礼を受けずに亡くなった幼児などの霊魂が留まる場所)と出てくるがどうも馴染みがなく、そこから転じた、不確実な状態や無視された状態、身動きの取れない状況を表現するワードとして頻出する。新型コロナウィルスの出現で様々なイベントが中止や延期に追い込まれているが、先が見えない宙ぶらりんの状態になっていることが多く、新聞記事にも最近、be動詞+in limboやremain in limbo(棚上げされたままになっている)といった使い方を多く見受ける。

 4/17のThe Japan Times には、NPB  still in limbo as CPBL, KBO get ready to play ball という見出しがあった。CPBL(Chinese Professional Baseball League: 台湾プロ野球)とKBO(Korean Baseball Organization: 韓国プロ野球)は開幕の準備が整ったが、NPB( Nippon Professional Baseball: 日本プロ野球)はいまだ開幕の見通しが立たず。既に台湾のプロ野球は開幕し、韓国は5月5日に無観客で開幕することを決めている。

 記事では、1970年代に始まったとされる farm-to-table、地元の農場から直接仕入れた新鮮で安全な食材を提供するダイニングスタイル。COVID19の感染拡大によりレストランが閉まり、イベントが中止され、学校が休校となったことで食材の行き場に困りニッチもサッチもいかない状態を実例をいくつか挙げながらその惨状を伝えている。

NYT April 7, 2020
Doctor helped hay fever sufferers with his pollen reports
(Frankland)医師は花粉研究によって多くの花粉症患者を救った

hay fever: 花粉症(スギ花粉等にはpollen allergyも使われる)、枯草熱。 hayは干し草。 
pollen: 花粉。pollen countで(一定量の空気中の)花粉数

 花粉症の方にとっては今年は例年よりつらい春をお過ごしされたことと推察致します。新型コロナウィルスCOVID-19対策で周囲に気を使い咳をぐっとこらえ、痒い目や鼻に触れることもはばかられたことでしょう。それぞれが予防法や効果的な薬で乗り切っていると思いますが、花粉症発生のメカニズムや治療薬に関しては先日108歳で亡くなったDr. William Frankland氏の長年の貢献によるところが大きいようだ。20世紀を代表するアレルギー専門家(allergist)のFrankland氏による花粉に関する数々の研究がアレルギー原因物質の究明や、現在の有効な予防接種の礎を築いた。

NYT April 4, 2020
Undocumented, under the radar, but ‘essential
不法滞在で目立たないが、必要不可欠な存在

undocumented: 文書化されてない/書類がない→滞在許可証のない、不法滞在の、不法移民の
under the radar: レーダーより下で→捕捉できない、気づかれない、目立たない、秘密裏に
essential: 不可欠な、非常に重要な、本質的な、基本的な;本質的要素、骨子、要点

 猛威を振るっている新型コロナウィルスは世界の隅々まで影響を及ぼしている。アメリカにおいても果物の多くは今でも人の手摘み(fruit picking)で行われている。行楽でたまに行くいちご狩りやブドウ狩りは楽しいが、仕事として行う果物の収穫は過酷で、収入は微々たるものだろう。新型コロナウィルスの影響により外出制限がある中で、今やその過酷な労働を支えているのが不法移民たちだ。そうした手摘みの労働者に占める不法移民の割合は75%近いと言われている。連邦政府は彼らの存在は、アメリカにとって ’必要不可欠な’ 存在として認識され、彼らの多くは国土安全保障省( the Department of Homeland Security )が “critical to the food supply chain” (食に関するサプライチェーンに必要な” 存在として認めたレターを所持しているというのだ。不法移民による農作業は何十年も(for decades) 公然の秘密(open secret)ではあったが、このレターによって彼らが農場労働者としての資格を手に入れた格好だが正式なビザが下りたわけではない。状況が一変すれば国外退去を命じられるリスクは常にあり、安価な労働マーケットの調整弁であることに変わりはないのだ。

JT March 31, 2020
Warming wreaks havoc on edible kelp
温暖化により昆布危機に

wreak havoc on ~: ~に大きな被害をもたらす、~を台無しにする
wreak: (被害、破壊などを)引き起こす
havoc: (災害などによる広範囲の)大損害、大規模な破壊、大混乱、無秩序
kelp: 昆布などの大型で褐色の海草。ワカメは wakame seaweed や brown seaweed などと表現すれば区別できる。

 wreak havoc on~/play havoc with~は、自然災害を含めた大災害や大規模な破壊行為などの際に使われる表現で、新聞にも頻出する。気候変動による海水温の上昇により失われてしまう海洋資源に関する北海道大学の調査の記事を取り上げてみた。

 北大グループの調査によると、地球の気温上昇が現在のペースで続くと北海道周辺の海水温が2090年代には1980年代に比べ10℃程度上昇。昆布(edible kelp)が生息できる水域が0~25%まで減少するという。おでんや昆布巻きに用いられるナガコンブなど4種類は、たとえ温暖化のペースが鈍ったとしても2040年代には食卓から消えてしまう恐れがあり、昆布などを主食とするウニ(sea urchin)も生存の危機にさらされる、と伝えている。

 

JT March 17,2020

Social  distancinggains steam as coronavirus spreads
コロナウィルス感染の広がりにつれ社会距離対策勢い

social distancing: 人と距離を置き接触を避けること、自主的な隔離
gain steam: (活動などが)勢いを増す、広まる、勢いづく

欧米での感染が急増した3月初頃から social distancing という表現がテレビニュースや新聞で目立ってきた。てっきり今回のCOVID-19発生に伴い出来た新語かと思ったら言葉としては以前からあったようだ。個人間での物理的な距離を取ることにより感染のリスクを防ぐ目的だが、具体的には、lockdown(都市や国の厳重な封鎖)、集会の禁止(cancellation of mass gatherings)、学校閉鎖(school closure)、在宅勤務(work from home, WFH)、時差出勤(staggered commuting times)、人込みを避ける(avoid crowded spaces)、不要な接触を避ける(avoid unnecessary contact with others)、等々。

 

NYT February 24, 2020

No choice but to bend to Generation Z
Z世代 に従う 以外の選択肢はない

no choice but to ~: ~以外の選択肢はない、~するしかない
bend to ~: ~に従う、に屈する
Generation Z: Z世代(一般的に1995年以降生まれの世代)

アメリカでは一般的に社員を5つの世代に分けて語られることが多い
1. Traditionalists(1928-45 生まれ) : the Great Depression( 世界大恐慌 1929-30年代 )とWorld War Ⅱ( 第二次世界大戦 1939-45 )を経験した世代だが明確な定年制がないアメリカでは労働市場に多く存在し、自己犠牲、勤労、規律や権威が心地よい世代だ。
2. Baby boomers(1945-65 生まれ ): ビジネスキャリアを最優先に位置付け、より上位の肩書と個室を目指して競争し家族を顧みない世代だ。
3. Generation Xers(1965-1980 生まれ): かぎっ子世代で24時間ニュースが流れている時代に成人し、雇用不足を経験し
たため悲観的で冷めた世代。
4. Millennials(1980-1995 生まれ): ベビーブーマーに育てられ、オープンコミュニケーション、共同作業、打ち解けた雰囲気に慣れた人々で、チームミーティングや定期的なフィードバックが好きで親をファーストネームで呼んだ世代だ。
5. Generation Zers(1995~ 生まれ): X世代の親に育てられた世代で最新のテクノロジーに詳しく、現実的で意欲的なデジタルネイティブだ。彼らの多くはFacebookではなくSnapchat(個人的には名前は知っているが)を使っているらしい。彼らは柔軟性に富み社内で様々な新しいことに挑戦することを好み、紙ベースの書類は使わず環境問題にも敏感で、プラスチックのストローが環境に良くないと知ればすぐに金属のストローに変えられる世代なのだ。

ビジネスでは上記の5世代が混在したチームがプロジェクトを行うこともあり、マルチ世代をうまく調整しプロジェクトを成功に導くためのコンサルティングが流行っていて成長産業になっているという。採用に関しても自分の紹介ビデオを送るか履歴書を会社のDropboxやGoogle Driveにアップロードすることにより提出するような時代では世代間ギャップを埋める、まさにニッチなビジネスは必要だろうし、助かる上の世代も多いだろう。

華やかな印象のあるアメリカのミレニアル世代だが平均の純資産額は8,000ドル未満で、Z世代の17%は貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。2018年の調査では、19-29歳の世代では全体で1兆ドルの負債があり、そのほとんどが学生ローンだ。

 

NYT February 13, 2020

Outbreak is putting E.U. at risk of recession
(新型コロナウィルスの)発生によりEUは景気後退の恐れ

outbreak: (戦争・暴動・病気・火山などの)突発、発生、爆発
put A at risk of B: AをBの危険にさらす
recession: 景気後退 経済用語ではGDPが2四半期以上連続でマイナスになる状態を指す場合が多い。

欧州においても新型コロナウィルスの感染者が確認されているが人数はそれほど多くない。一方で、経済に及ぼす悪影響は計り知れない。脆弱なドイツ経済だけでなくユーロ経済圏全体が景気後退に陥るリスクが高くなりつつあるようだ。記事ではドイツ自動車大手のダイムラー社を取り上げ、ドイツの自動車産業が中国頼みであり生産と販売双方で大きく中国に依存している構造から、新型コロナウィルスの影響が長引けばドイツや周辺国の部品サプライヤーを含めた多くの企業が存続の危機に瀕する様子を伝えている。

中国国内における自動車販売台数は日本を抑えてドイツがトップだ。ダイムラー社は昨年ベンツを70万台近く中国で販売しており米国での売上台数の2倍以上だった。消費マーケットとともに生産拠点としても重要な中国だが、新型コロナの終息が見えておらず経済の先行きを見通すのは困難な状況が続いている。ドイツ銀行のエコノミストは、今年前半にドイツがrecession入りする確率は “quite probable(かなり高い)” と述べている。ちなみに、確信の度合いを表現する副詞は様々あるが、確率の低い順から並べると次の通りとなる。maybe/perhaps/possibly(50%程度かそれ以下) → probably → certainly/surely → definitely(100%の自信)。初めの3語 maybe/perhaps/possiblyの確度の順位付けはネイティブスピーカーによっても地域差があるのか個人によるのか意見が割れるが、いずれも確度が低いことに注意が必要だ。

 

JT February  4, 2020

Motor leader doubles down on EVs in bid to triple sales
モーター最大手 売上高3倍を目指しEV向け投資を強化

double down: 投資などを2倍にする、倍賭けする、強化する、イチかバチかの賭けに出る。 
in bid to: 正しくは in a bid to だがヘッドラインではしばしば冠詞 a や the は省略される。~するために、~することを目指して。

Motor leader は日本電産( Nidec Corp. )を指すが、世界の精密モーター大手企業が今後、EV( Electric Vehicle )向け駆動モーターシステム製造への投資を加速させる方針だ。駆動モーターはガソリン自動車のエンジンにあたる主要部品であり、日本電産の成長戦略の2本柱のうちの1つで大連の新工場に元々の計画の2倍の1,000億円を、ポーランドとメキシコにそれぞれ500億円を投資する。もう一方の柱は、モーター関連の企業をM&Aにより取得するとしている。その2本柱の成長戦略により、2020年3月期の予想売上1兆5,500億円を2025年までに5兆円に引上げる計画だ。

 

JT January 23, 2020

Paternity leave controversy: It’s time to walk the talk
父親の育休論争 有言実行の時

paternity leave: 父親の育児休暇、maternity leaveは母親の育児休暇、産休
walk the talk: 有言実行する、自分で言った通りのことをする

walk the talkと似た表現で talk the talk and walk the walk があるが、これも、言ったことをきちんと行う、という意味。talk the talk は、言うべき時に言うべきことを言う、の他に、言うだけで実行しない、という意味で使われることが多い。また、walk the walk で不言実行の意味だ。

小泉進次郎環境大臣に子供が生まれ、かねてより2週間の育児休暇の取得を宣言していた小泉大臣は早速実行に移した。国内では賛否様々な意見があるが、20年も前に当時のイギリスのトニー・ブレア首相も2週間育休を取っているし、その後も多くの国で首相や閣僚が普通に産休や育休を得ているようだ。2018年にニュージーランドのArdern 首相は出産後6週間の産休を取得している。

OECDのデータによると、日本では1日あたり家事に従事する時間は男性が41分で女性は224分と、OECD加盟国の中で最も差が大きい。一方で、父親の育児休暇に関しては世界で最も寛大な権利が付与されているという。新生児を持つ父親と母親は最大1年間の育児休暇を取ることができ、雇用者はその間は雇用を保障することが法律で定められている。ところが、現実は過酷で該当者の男性のうちたった6%しか育児休暇を取っていない。その要因として、日本独特の企業風土と個々人のマインドセットが挙げられることが多いが、実際問題として人事権とボーナスを含めた報酬を決定する権限を持っているのが育休を取る人の上司や人事部だったりする。人手不足が叫ばれている中、多くの組織で、左遷や昇格の遅れを恐れて言い出すことすらはばかられるのではないだろうか。企業や行政のトップが強制的にでも取らせるよう指示し、そのことによる仕事上の不利益は絶対に生じないと組織の隅々まで浸透させる必要があるだろう。

 

NYT January 18, 2020

Germany mired in 5G debate
ドイツ 5G議論で窮地に

mired in: (be) mired in で、窮地に陥っている、ぬかるみにはまっている、の意。mire は名詞: 泥沼、湿地、窮地。 動詞: 窮地に陥れる、巻き込む、の意。mired と過去形になっているが、ヘッドラインでは多くの場合「過去形は受動態を意味する」ので、Germany is mired in 5G debate ということ。

ドイツ経済にとって自動車産業は国の根幹を成し、中国マーケットにおいてもそのプレゼンスは高く、中国国内の販売台数の約25%はドイツ車だ。日本勢も頑張っているが20%ちょっと。記事はドイツのメルケル首相( Chancellor Angela Merkel )と中国の李国強首相( Premier Li Keqiang of China ) がベルリンで会談している写真付きだ。2018年7月のもので、運転手のいないフォルクスワーゲンの後部座席に並んで座り、自動運転の車で談笑している。

その時から18か月後、ドイツは5G( 第五世代移動通信システム )のシステム構築に関し中国のファーウェイを採用するかどうかで窮地に陥っている。ドイツがファーウェイを受け入れるかどうかは、今後当面の中国との関係を形作るだけでなくヨーロッパ全体に大きな影響を及ぼす。一方で、ファーウェイ排除を迫るトランプ政権からの外圧が激しく、同社を受入れた場合、ドイツ車やその他製品に対するアメリカからの懲罰的な関税引上げが予想される。駐ドイツアメリカ大使の Richard Grenell氏は “The West should have a joint solution to 5G because we view the world the same way.”と述べて釘をさす一方、駐ドイツ中国大使のWu Ken氏は “If Germany were to make a decision that led to Huawei’s exclusion from the German market, there will be consequences. The Chinese government will not stand idly by.” と警告を発している。

 

JT January 4, 2020

Interpol issues wanted notice for fugitive Ghosn
国際警察、海外逃亡したゴーン容疑者を指名手配

Interpol: International Criminal Police Organization( ICPO ) 国際刑事警察機構
issues: ~を発行する/出す の意味だが、現在形であることに注意。新聞の見出しでは、直近の出来事を過去形ではなく現在形で表わすことが多いので注意が必要。Interpolは火曜日、つまり1月2日にwanted notice を出した、と記事で述べている。
wanted notice: 指名手配書
fugitive: 逃亡中の、脱走した、亡命した; 逃亡者、脱走者、避難民

今年初めてのなるほどHeadlineが、何ともお恥ずかしい記事となってしまったのは残念だが、今回のゴーン被告の逃亡劇の全容が明らかになることは当分ないだろう。ゴーン被告が国籍を有し、同氏をビジネス界のヒーローとして扱うレバノン政府は、日本との間に犯罪人の引き渡し条約がないために、捜査協力の姿勢は示しても引き渡すことはないとみられている。

それにしても不思議で不可解なのは日本国内でのゴーン被告の扱いぶりではないだろうか。素人目に見ても逃亡の恐れのある被告に対し、東京地検は同氏が4冊所持していたパスポートのうち、フランス国籍のパスポートを所持させていたという。また、指定された住宅には24時間監視カメラが設置されていたが、同氏が12月29日に住宅を出てそのまま戻らなかったことが分かったのが1月3日になってからという。12月31日にはゴーン被告自身がレバノンにいることを自ら語っていたにも関わらずだ。今回の海外逃亡劇では、関係する東京地検、警察、同氏の弁護団、関西国際空港の担当者、等の失態が連鎖しないと起こりえない事案といっていいだろう。何とも平和な国のおめでたい事件で終わらせては決してならない。

 

JT December 26, 2019

FSA calls for TSE streamlining
金融庁東証合理化求める

FSA: Financial Services Agency 金融庁
call for: 要求する、促す
TSE: Tokyo Stock Exchange 東京証券取引所
streamlining: 簡素化/合理化すること

英字新聞でも日本の新聞でも略語が多用されるので主だったものは押さえておけば今回のHeadlineのように目にした瞬間内容がつかめるだろう。同日のJapan TimesのHeadlineでは、LDP (Liberal Democratic Party: 自民党)、SDF (Self-Defense Forces: 自衛隊)、RWC (Rugby World Cup)、BOJ (Bank of Japan: 日銀)などの略語が見られた。

記事の内容は、金融庁が東京証券取引所(東証)の市場改革に関する報告書の中で改善案を示した。現在、東証には1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場があるがそれを再編し3市場にすることと、再編後の1部にあたるプライム市場で、上場する企業は流通時価総額100億円以上を目安とし流動性と高いガバナンスを求めることが大きな柱となっている。また、2部市場とジャスダックに属する一定の時価総額を有する企業の上場を想定したスタンダード市場を創設し、マザーズ市場などの新興企業向けにはグロース市場を作る案を示した。

 

JT December 15, 2019

America’s global clout is waning
アメリカの世界的影響力弱まる
 

clout: 政治的影響力、勢力 
wane: 衰える、力が弱まる、月が欠ける、潮が引く。名詞で、人生・時代の終末、衰退の意味もある。

トランプ大統領が誕生してから丸3年が経とうとしているが、明らかに世界におけるアメリカの影響力は弱まりつつある。かつての親密な同盟国だったフランス、エジプト、パキスタン、アフガニスタン、メキシコ、トルコ、ドイツ、などこの3年間で静かにアメリカから離れつつあるようだ。トランプ大統領自身、9月の国連総会で”The future  doesn’t belong to globalists. The future belongs to patriots.” と述べ、未来はグローバリズムの支持者ではなく愛国者のためにあるといった主張を貫いている。

アメリカは依然超大国であるものの、影響力の衰え( waning influence )は確実に世界の地政学的な地図を塗り替えつつあり、アメリカにとって強力な敵国であるロシアと中国にその道を開いてしまっている。今や、長い間多くの国に疑念の目を向けられてきたロシアと中国がそうした国々に軍事力と経済力を背景に触手を伸ばしているのである。

 

NYT December 5, 2019

Speeding toward a tipping point
危機的な転換点に向かって加速

tipping point: 重大な変化が起きる転換点、元に戻れなくなるポイント、小さな変化の積み重ねが突如劇的変化をもたらす瞬間

愛読書の1つである「The Tipping Point」(Malcolm Gladwell 著) が出版されたのは2000年だが、この本の出版を機に ‘tipping point’ という表現が様々な場面で用いられるようになったのではないだろうか。本文では、最近の気候変動がもたらした世界各地の被害を例に挙げて、地球の気温上昇とそれに伴って起きる氷解と海面の上昇に警鐘を鳴らしている。いくつかの専門機関は、”the acceleration of ice loss and other effects of climate change have brought the world “dangerously close” to abrupt and irreversible changes, or tipping points.” と気候変動による氷の減少の加速などの影響が、突然現れて取り返しのつかない (abrupt and irreversible) 変化に危険なほど接近した、と警告した。今年1年でグリーンランドの氷は最近の年平均より20%多い3,500億トン減少し海水面を1ミリ上昇させる要因になったようだ。全体では、年間4.5ミリ水面が上昇したようだが、それだけ大量の氷が解けても1センチにも満たないのか、などと考えてはいけないのだろう。記事によると、グリーンランドと南極の氷が全てが解けたとすると何と66メートル海面が上昇するとのことだ。

現在、マドリードでCOP25( 第25回気候変動枠組み条約締約国会議) が開催されているが、日本は世界の流れとは逆行するかたちで石炭火力発電を継続する意向を示し、温暖化ガス削減目標も達成が難しい現状で、欧州の主要国からは大きく後れを取っている。小泉環境大臣の演説を受けて日本は「気候行動ネットワーク」から温暖化対策に消極的な国に授与する不名誉な「化石賞」を再度受賞してしまった。

 

JT November 29, 2019

Man pleads guilty to fatal rampage on bullet train
被告の男 新幹線殺傷事件有罪を認める

plead guilty to ~: ~の罪状/有罪を認める。plead not guilty で無罪を主張する、の意。pleadは嘆願する、お願いする、の意味で頻出し plead for help: 必死で助けを求める、plead for cooperation: 協力をお願いする、plead for mercy: 慈悲を請う、となる。
fatal: 死者を出す、命にかかわる; 宿命的な; 重大な
rampage: 凶行、大暴れ、暴力事件

2018年6月東海道新幹線内で乗客1人が斧( machete )で殺害され、2人が重傷を負った事件は凶悪犯罪として一年半経った現在でも記憶に新しい。被告の23歳の男は罪状の殺人や殺人未遂の罪を認めたが、「無期懲役刑で一生刑務所で生活することが夢だった」と話したという。東京から大阪に向かう新幹線のぞみでの事件で、だれでもその場に居合わせた可能性があり何とも恐ろしい世の中になったものだ。

本文からいくつか法律用語を拾ってみたのでご参照ください。indictment: 起訴、告訴 court hearing: 法廷審問 lay judge trial: 裁判員裁判 lay=素人なので理解はできるが正式な用語に使われているのが興味深い。裁判員裁判制度はlay judge system/citizen judge system となる。prosecutor: 検事、検察官 psychiatric examination: 精神鑑定 the accused/ defendant: 被告人。

 

JT November 25, 2019

Bellwether H.K. election has record turnout
今後を占う香港選挙、記録的投票率

bellwether: 指標や先導となるもの、先導者、首謀者、先端を行く人/もの、主要株、指標銘柄
turnout: 投票率、投票者数、人出、出席、生産高

bellwetherはもともとbell(鈴)+wether (去勢された羊)で、羊の群れを先導する鈴付きの羊のこと。wetherはweather(天気、天候)と同音だが a を加えないように注意が必要。wether 単体で見聞きすることは滅多にないだろう。Bellwether bondで債券の指標銘柄、bellwether caseで先例となる訴訟、という意味になる。turnout は名詞だが、turn out は動詞で、スイッチを切る、ライトなどを消す、生産する、追い出す、解雇する、などの意味で使われる。また、例えば The weather turned out to be fine. のように、結局~になる、を表わす用法はよくでてくる表現。

11月24日に香港で行われた地方議会の議員選挙(district elections)では投票率が71.2%と、前回2015年の47%から大幅増加となった。6月以降の市民による大規模デモへの支持の高さと、力ずくで抑え込もうとする中国政府への反発が投票率と投票結果に表れた。全18区452議席のうち民主派が85%の385議席を得て、親中派の59議席(13%)を圧倒した。前回は民主派が126人(29%)、親中派が298人(69%)だったので今回の選挙は香港市民の明確な意思が示された結果と言っていいだろう。この地方議会は地域に関わる身近な問題を討議し政策を政府に提言する機関で実質的な権限は小さいが、香港の行政長官を決める選挙委員1,200人のうち117人が割り当てられることになっている。

民主派の圧倒的勝利によってデモ参加者が主張してきた5大要求が今後さらに強まる可能性が高い。このコラムで6/16に取り上げた「逃亡犯条例」改正案の撤回は既に実現したが、残りの4つの要求である、①デモを暴動とする政府見解の撤回、②デモ参加者の逮捕・起訴の中止、③警察の暴力行為を調査する委員会の設置、④普通選挙の実施、の実現に向けた動きが継続することになる。

 

NYT November 7, 2019

Envoy now tells of quid pro quo over Biden
大使、バイデン氏問題の見返りを証言

envoy: 大使、使節、代表
quid pro quo: 見返り、交換条件、対価

この見出しのenvoyはトランプ大統領に近いとされるゴードン ソンドランド(Gordon D. Sondland) 駐EU大使だが、彼はU.S. ambassador to the European Unionなので envoyはambassadorと同義。新聞見出しでは同じ意味であればとにかく短い単語が好まれるので外交問題でのenvoyの使用頻度は高い。Quid pro quoはラテン語が語源だが、最近、テレビや新聞で目にする機会が多い単語で今回のウクライナ疑惑ではぴったり当てはまる。

ソンドランド大使は “I said that resumption of the U.S. aid would likely not occur until Ukraine provided the public anticorruption statement that we had been discussing for many weeks.” と証言し、ウクライナによる(バイデン氏が関与した)腐敗問題の公表をアメリカの軍事支援の再開の交換条件としたことがわかる。ウクライナはロシアと国境を接していて軍事紛争を抱えておりアメリカの軍事支援は国の存亡にかかわる重要問題だ。

一方のバイデン氏はオバマ政権時の副大統領だが、当時ウクライナに汚職撲滅を求めて検事総長の解任を要求したとのこと。では、なぜアメリカの副大統領がよその国のそこまでの内政干渉をするのかと疑問を持つが、ウクライナの検察が汚職問題に関して捜査を始めた大手ガス会社の幹部にバイデン氏の次男ハンター バイデン氏が就任していたというのだ。息子を守るために検事総長の解任要求をしたと受け取られかねない行為と考える人も多いだろう。民主党はテーラー現ウクライナ代理大使やヨバノビッチ元ウクライナ大使ら10人以上を公聴会で証言させることになっておりこのドラマに今週も目が離せない。

 

NYT November 2, 2019

With just two defectors, impeachment process is likely to stay highly partisan
造反はわずか2議員、弾劾手続きは極めて党派色の強いものに

defector: 造反議員、離党者、造反者、脱会者。
impeachment: 弾劾、告発、非難。
partisan: (形容詞)党派心の強い、(名詞)党派心の強い人。また、頻出する bipartisan:超党派の、の意味で、bipartisan agreement は (対立関係にある) 2党間の合意。

10月31日のアメリカ下院本会議でトランプ大統領の弾劾に向けた調査の手続きを定めた決議案が賛成多数で可決した。ことの発端は、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との会話の内容。アメリカがウクライナに軍事支援をする見返りに、民主党の大統領候補と目されるバイデン前副大統領に関する不正調査をウクライナ政府に求めた、というもの。アメリカ連邦法では、外国人に選挙支援を求めるのは違法であり、連邦法に抵触する可能性が高い。トランプ氏は「バイデン氏の調査要請は腐敗撲滅が目的で、ウクライナへの軍事支援とは無関係」との立場を通している。

今回の弾劾に関する決議案は民主党が過半数を占める下院において、賛成が232票で反対が196票で可決した。民主党から2名の造反者(defector)が出た一方で、意外にも共和党から賛成に回った議員はゼロで共和党の結束の固さが浮き彫りになった。ただ、大統領を罷免するには上院(定数100名)で2/3以上の弾劾賛成票が必要となるため、共和党から20名程度の造反者が必要となるようだ。

 

JT October 25, 2019

Scrutiny intensifies over Facebook’s Libra cryptocurrency plans
フェイスブックの暗号通貨リブラ構想に対する監視強まる

scrutiny: 監視、精密な調査、精査、凝視、投票検査
cryptocurrency: 暗号通貨

Cryptocurrency の日本語訳として長い間「仮想通貨」が使われてきていたが、最近のメディアでも「暗号通貨」が定着してきた。Crypto はそもそも暗号を意味し、暗号学=cryptographyとなる。従って、やっと本来の単語 cryptocurrency の正しい訳語に戻ったと言える。ここ最近では英語媒体の記事でも日本の新聞でも 同様の意味で digital currency(デジタル通貨)が頻繁に用いられている。

10月23日に開かれたアメリカ議会の公聴会で、フェイスブックが主導して推進している暗号通貨リブラ構想に対して多くの批判が展開された。グローバルな金融システムへの影響やマネーロンダリングに対する懸念、プライバシー保護等に関して相当強い警戒感があらわになった。公聴会でフェイスブックのザッカーバーグCEOは、アメリカ当局の承認なしではどの地域でも始めない、と発言し法令順守の立場を鮮明にした。しかし、現行の法的枠組みの中でリブラの信頼性が担保できるのか、あるいは、この新たな金融サービスを対象とした新制度を構築すべきなのか。いずれにしても相当な時間を要することは確実で、当初の2020年前半としていたサービス開始予定ははるかに遠のいた。

今年6月に発表されたリブラ構想によって国際的にデジタル通貨の議論が一気に高まったのは事実で、中国は「デジタル人民元」の発行を検討しており、スウェーデンは「e クローナ」を2021年に発行する計画を発表した。ザッカーバーグ氏は中国カードを使い “While we debate these issues, the rest of the world isn’t waiting. China is moving quickly to launch similar ideas in the coming months.”と指摘し、アメリカ主導によるデジタル通貨実現の必要性を訴えた。

 

NYT October 16, 2019

Meat companies on meatless bandwagon
食肉会社、肉無し肉(人工肉) の流行に便乗

bandwagon: パレードで楽隊を乗せている飾り付きワゴン車、世間の流行・はやり、人気のある政党・政策・運動、等。join/jump on/climb on/get on/hop on the bandwagon で、時流に乗る、優勢な側につく、の意。join the AI bandwagon: AIの勢いに便乗する。

日本で生活しているとあまり感じることがないが、アメリカでは最近、植物性タンパク質でできたバーガーなど、見た目も味も肉にそっくりな食品が流行っていて結構売れているようだ。大統領は別にして、多くのアメリカ人は地球温暖化や環境問題に敏感で、温室効果ガスに占める畜産の割合が高いため植物ベースのタンパク源に高い関心が集まっているのだ。CNNによると、畜産業からの温室効果ガスの排出量のうち、牛によるものだけで41%を占めており、畜産業から出る温室効果ガスは、世界全体の排出量の14.5%を占めている。

アメリカのスタートアップ企業、Beyond Meat や Impossible Foods がこの meatless meat のマーケットで著しい成長を遂げると食品大手のネスレや Tyson、Smithfield、Perdue、Hormel社がこぞって植物ベースのバーガー、ミートボール、チキンナゲットを売り出した。ネスレは9月に植物由来のバーガー “Awesome Burger” を発売し話題になっている。Awesomeというネーミングの大胆さも手伝ってヒット商品になるのではないだろうか。アナリストの予想では、’肉を使わない肉’ のマーケットは2030年までにUS$850億(9.2兆円)になるという。

 

JT October 8, 2019

WeWork’s startup party ends with 2,000 jobs on the chopping block
ウィーワークのスタートアップの宴、2千人のリストラに終わる

on the chopping block: chopping blockは、木を切るための台、まな板(cutting board)。on the chopping blockで、(人員が)削減対象になっている、の意となる。

Weworkは、アメリカに本社を置くWe Co.が運営するシェアオフィスの会社。9月中旬のIPOを目指していたが、創業者でCEOだった Adam Neumann氏と会社の利益相反行為が浮上し、企業統治のずさんさが問題視され新規株式公開は延期された。Neumann氏は議決権の過半数を有するが、取締役会の複数のメンバーから辞任を促され、大株主のソフトバンクグループも辞任支持に回りCEOを辞任した。ソフトバンクグループはWeWorkに100億ドル以上投資しているが、「創業者を信頼し経営には口を出さない」姿勢がむしろ問題を大きくした可能性もある。

結果として従業員2千人(他のメディアでは5千人とも報道されている)のリストラや、非主力事業の売却や撤退といった事業の縮小均衡の路線に方針変更せざるを得なくなった。当面は、赤字体質からの脱却と運転資金の確保が最優先課題となりそうだ。

 

NYT October 4, 2019

Ireland vanquished, Japan aims for Cup
日本、アイルランドを破り賜杯を狙う

vanquish: (他動詞)負かす、破る、同義語:defeat, (自動詞)勝つ、勝者となる
aim for: ~を狙う、目指す

vanquished と過去形になっているが、ヘッドラインでは多くの場合「過去形は受動態を意味する」ので Ireland was vanquished by Japanで、日本に敗れた、ということ。コンマ (,)は and の代用で使用されている。Cupは大文字になっているので、固有名詞である Rugby World Cup を指している。Cupは優勝カップを意味するので、8強入りした上で優勝を目指す、となる。

ラグビーワールドカップ(W杯)で、10/5の試合で日本はサモアに勝ち3連勝とし、9/28のアイルランド戦では、後半を零封し19-12で勝利を収めた。日本の各紙はこの勝利を大金星やまぐれ、また、海外のメディアも同様の意味の upset や fluke を使い驚きを表現したが、この強さはまぐれでも番狂わせでもない。マイケル リーチ主将は W杯の前に “You need to very brave in what you say; we want to make the quarterfinals, but ideally, we want to win the World Cup” と発言し、決勝トーナメントに進出し優勝したいと言っていた。2015年のW杯で3勝1敗としながらボーナスポイントの差で8強入りを逃した悔しさから、世界一の練習量を自らに課して厳しい練習に耐え抜き、体力を増強し、戦術を磨いて自信をつけてきたからこその発言内容だった。いずれにせよ、次戦の宿敵スコットランド戦で引き分けか勝ちで自力での8強入りが実現する。

 

NYT September 25, 2019

Travelers left Thomas Cook behind
旅行者、トーマスクックを置き去り

leave ~ behind: 置き去りにする、置き忘れる、(場所などを)あとにする

英国のThomas Cook氏(1808-1892)が1841年に創業し、178年続いた老舗の旅行代理店のThomas Cook Groupが9月23日にロンドンの裁判所に破産申請を行い(filed for bankruptcy)、経営破綻した(closed shop)。負債はUS21億ドル相当あり、2.5億ドルの追加の資金調達交渉が合意に至らなかった。直ちに営業停止したため、世界各地で60万人の旅行者が足止めを食らい、2万人以上の授業員が失業すると伝えている。

今回の破綻(collapse)の原因として、主に4つの点を挙げている。
1. インターネット 旅行ビジネスでは急速にインターネット化が進行したが、トーマスクックは地価の高いメイン通り中心に600店舗を構え、電話によるサポートが中心だった。
2. パッケージツアー 今では誰でも航空券、世界中のホテルの部屋やレンタカーを自分で探して手配できるため、彼らの得意とするパッケージツアーのニーズが減少。
3. 航空会社 2000年代前半に航空会社の運営を開始したが、LCCとの競争も激しく経営の足かせとなってきた。
4. BREXIT 英国のEU離脱に伴う不透明感から海外旅行を控える傾向が続いていた。

経営破綻や倒産、廃業に関する表現は、見出しの婉曲的な表現の leave ~ behind の他に、bite the ground, close its doors to the public, get out of business, go bankrupt, go bust, go out of business, go into liquidation, liquidate などがある。

 

JT September 14, 2019

Nation’s centenarians top 70,000 for the first time
日本の100歳以上、初めて7万人超す

centenarian: 100歳(以上)の人、100歳(以上)の。接頭辞cent-: 100の、1/100の
top: 動詞で、~を超す、~より勝る。

Centenarianもtopも難しい単語ではないが、なかなかとっさに出てこないのでこの機会にしっかり覚えたい。

毎年この時期(敬老の日前)になると厚生労働省から高齢者調査結果が発表されるが、100歳以上の人は71,238人。調査が始まった55年前の1963年には153人で当時の人口は約1億人だった。人口は55年で約25%伸びただけなのに、100歳以上は465倍になっている。また、目を引くのが、100歳以上のうち女性の比率が88%と圧倒的なことである。個人的には、80歳まで健康でいられれば十分だと思っているが、目覚ましい医療技術の進歩のおかげでもっと長生きすることになるかもしれない。長寿化は喜ばしいことだが、社会保障の問題を含めて高齢化先進国としての日本の取組みに世界が注目している。

 

JT September 4, 2019

Casino giants crank up PR to snag first Japanese licenses
カジノ大手、日本でのライセンス1号を目指しPR開始

crank up: ~を始める、準備する。映画などで撮影終了を意味するクランクアップは和製英語でむしろ逆の意味。撮影終了の意味ではwrapが使われるようだ。crankは名詞で、変わり者、凝り性の人、気難し屋、不平を言う人、の意味もあるので注意したい。
snag: 素早く捕まえる、さっとつかむ。他に、妨害するの意味でも使われる。名詞では、思わぬ障害、故障、欠点、の意味もある。

2016年12月、統合型リゾート(Integrated Resort)整備推進法案、通称カジノ法案が成立。第一条に、目的として「観光、及び、地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するもの」と唱っている。長年カジノを違法としてきた日本でカジノが解禁されるということで注目された法案だが、ギャンブル依存や治安の悪化、マネーロンダリング、等に対する懸念から反対する声も多い。

政府によるIR設置に関する基本方針の策定は今年11月頃になると見られていて、その後、IRを設置する3自治体を正式に決定することになっている。選ばれた各自治体はIRを開発するIR業者を選定することになる。世界のIR事業者はターゲットとする自治体に事前に事務所を構えたり、地域のイベントや説明会に協賛、出展などしてPR活動を熱心に行っている。

 

JT August 27, 2019

Looming recession to compound Hong Kong’s woes
忍び寄る景気後退が香港をいっそう窮地に

looming: loom+ingでloomの現在分詞形。(分詞:現在分詞/過去分詞については拙書「海外で活躍できる英語勉強法」p82-87ご参照)。意味は、危険や困難が不気味に迫る、ぼんやりと現れる。
to compound: 見出し文法の1つ「to+動詞の原形」は直前にbe動詞が省略されていて、「~する予定」「~の見込み」を表わす。未来を意味する「will + 原形動詞」の代替表現。compound: 事態を悪化させる、困難や問題をひどくさせる、の意。
woes: woeの複数形で、災難、災い、不幸。

香港の「逃亡犯条例」改正法案を契機とするデモが長期化しており、アジアの貿易のハブであり国際金融センターに景気後退の恐れが出てきた。ホテルやレストランの予約は激減し、大規模な国際会議もキャンセルに追い込まれている。4-6月の前期比成長率はマイナスo.4%となり、7-9月の第3四半期もマイナス成長の見込みで景気後退が確実視されている。

8月に香港で150億ドルで株式上場すると見られていた中国最大のEコマース企業アリババグループは延期を決定した。背景には、中国を代表するアリババが香港で上場すれば香港を利することになり、一連のデモを激しく非難する中国政府の思惑も見え隠れする。今年の個人消費が20-30%減少すると予想するエコノミストもおり、デモの更なる長期化は観光とビジネスに大きく依存する香港の存在意義を根本から問い直すことになりそうだ。

 

NYT August 19, 2019

A dragnet to find who is, and who isn’t, Indian
インド政府、不法移民を徹底捜査

dragnet: 地引き網/底引き網、包囲網、警察の捜査網

drag(引きずる)+net(網)から地引き網/底引き網だろうと想像がつく単語だが、転じて、包囲網や捜査網などの意味で用いられる。日本とも関係の深いインドのカシミール地方とアッサム地方がここ最近大変なことになっている。インドとパキスタンは、両国とも1947年に英国から独立したが、異なる宗教と度重なる国境紛争により隣国でありながら独立以来関係が悪いままだ。インドの宗教に関しては国民の80%がヒンズー教で13%がイスラム教徒である。両国が領有権を争っているカシミール地方のジャム・カシミール州はインドに属するが、唯一イスラム教徒が多数を占める州となっている。1947年の独立時点で当時のカシミールの藩王がヒンズー教徒であったため、住民の8割がイスラム教徒であったにもかかわらずインドへの所属を決めたという歴史的背景があり特別自治権が認められていたが、8月に入りインド政府はその自治権をはく奪したのである。それに対してパキスタンはインド向け直行列車を停止したり国内でのインド映の上映を廃止等の措置を取っている。

一方、アッサムでは本人、または父母が1971年のバングラデッシュ独立戦争以前からアッサム州に住んでいたことを証明できる書類の提出がインド国民として住民登録するための条件としており、その提出期限は8月31日だ。アッサム州の人口33百万のうち4百万人が不法移民とみなされ市民権を失うかもしれない。もともとバングラデッシュはイスラム教徒が圧倒的でバングラデッシュ独立戦争の混乱に乗じてアッサムに逃げ込んだ人々とその子孫が多く、ヒンズー教徒61%に対し34%がイスラム教徒となっている。

モディ首相率いるインド人民党(BJP)はヒンズー教至上主義をかねて掲げており、長年に亘り懸案となっていた、”イスラム教徒の多い”2州でインパクトのある政策を強行しており、パキスタンのみならず各国から移民排除とも取れる政策に対する非難の声が上がっている。

 

JT August 6, 2019

Japan firms join exodus from China’s factories as tariffs bite
米国の対中関税の影響により日本企業も中国から大量出国

exodus: 大量出国、集団移動、the Exodusは、モーゼに率いられたイスラエル人のエジプトからの脱出「出エジプト」のこと。
bite: 効果が表れる、政策などが悪い影響を及ぼす。

米国の中国に対する段階的な関税引き上げがじわじわと中国に拠点を置く企業に多大な影響を及ぼしている。世界の工場と言われてきた中国だが、もう10年以上前から過度な集中によるリスク分散と人件費の高騰などのコストアップが嫌気されチャイナ+1の候補としてアセアン諸国に生産工場をシフトする動きが活発だった。そして今回、昨年からの米国による一連の関税引上げにより中国から大挙してアセアンを中心としたアジアに大量出国する流れに日本のトップ企業の多くが加わっている状況を具体例を列挙し伝えている。

 

JT August 2, 2019

Japan set to cross S. Korea off ‘white list’
日本、韓国を「輸出優遇国リスト」から除外へ

set to: 本腰を入れる、喧嘩/議論などを始める、本格的に取りかかる
cross A off/cross off A: Aを(名簿から)削除する

日本政府は8月2日、輸出管理の簡素化を実施している優遇対象国から韓国を除外する決定をした。この決定により、韓国向け輸出のほとんどの品目が個別審査の対象になる。この一週間、The Japan Timesではこの話題を毎日のように取り上げていた。いずれも似た表現で、Japan set to remove S. Korea from ‘white list’/ South Korea removed from ‘white list’ / Seoul taken off ‘white list’ / Abe to endorse S. Korea ‘white list’ removal などだ。

一方で、The New York Timesではこの一週間この話題を全く取り上げていなかった。米国メディアのこのテーマへの関心の低さを改めて思い知らされたが、今週はTrump関連、民主党の党首選び、英国首相に就任した話題に事欠かないBoris Johnson、香港の「逃亡犯条例」関連の続報などホットな話題が多すぎたとしてもね。Forbesでは、Japan Ejects(追放する) South Korea From Export ‘White List’ As Trade Relations Fray(喧嘩、口論)という見出しを使っていた、と元同僚が教えてくれた。

 

NYT July 27-28, 2019

U.S. rolls out more farm aid
アメリカ、さらなる農家向け補助金を公表

roll out: 公開/公表する、(巻いてあるものを)転がして伸ばす、大量生産する、(新商品などを)売り出す。 roll out a new policy:新方針を公開する、roll out a new product:新商品を発売する
aid: 援助、補助金。 farm aid:農家向けの補助金/援助

トランプ政権は、中国との貿易戦争により被害を被った農家に対しUS160億ドル(1.7兆円強)の支援パッケージを公表した。トランプ政権発足以降、中国を初めEU、メキシコ、カナダ等に対して関税引上げを実施したが、それに対する各国・地域からの報復関税(retaliatory tariffs)の結果、アメリカ国内では、大豆を初めとする農産物の売上げが落ち込んでいる。2018年の全米の農業収入は前年比16%減少した。今年は大豆の作付面積を600エーカーから60エーカーに減らした農家の例や、ウィスコンシン州だけで2018年に49軒の農家が倒産を申請した例を挙げてその窮状を伝えている。
トランプにとって農家票は主要な大票田だけに彼らの経済的な痛みを和らげる対策として巨額の補助金をばらまく必要に迫られている。

 

JT July 17, 2019

Beijing logs 6.2% GDP growth, slowest in 30 years
U.S. and China giving Japan a way to cash in
中国、GDP成長率6.2%を記録、30年間で最低
米中関係が日本に恩恵

log: 記録する
cash in: 利益を得る、儲ける、利用する、便乗する

中国の2019年4-6月期の経済成長率が6.2%となった。過去30年で最低の成長率とのことだ。トランプ米政権との貿易戦争が長期化し、製造業の不振が顕著で米国向け輸出の減少は今後も続くとみられる。中国国内生産の低迷を受け投資も落ち込み、1~6月の製造業の投資額は3%増にとどまった。外資企業中心に工場の海外移転が進んだのが大きな要因だ。

記事では、米中の悪化した関係の改善が期待できない中、中国は日本との関係改善を急速に進めてきている。ある調査では、中国人の日本人に対する好感度が上昇しており、2018年には日本を好ましい”favorable”とする中国人の割合が42.2%と前年比11%増加し、調査を開始した2005年以来最高を記録した。来日する中国人の観光客が増加するに伴い、清潔さ、安全性、高品質な製品と洗練されたサービスなどに加え、日本人の礼儀正しさと謙虚さへの評価が高まっているようだ。日本ブランドの衣類や医薬品・化粧品への信頼はゆるぎないが、中国が直面している高齢化社会や環境分野など、日本が先行している分野への投資によりビジネスの活路があるとしている。

 

NYT July 5, 2019

After changing Greece, he’s poised to lose it
ギリシャに変化をもたらしたが、彼は政権を失う準備ができている

be poised to ~: ~する用意ができている、いつでも~できる。

heは、与党だった急進左派連合(SYRIZA)のリーダーであるチプラス(Alexis Tsipras)首相。この記事は7/5付けだが、7/7(日)に投開票が行われたギリシャの総選挙で中道右派とされる New Democracy Party(ND:新民主主義党)が単独過半数を獲得し、2015年から続いたチプラス政権が終わりを告げた。大方の予想通りの結果であろうが、2015年に金融危機下にあったギリシャで、反緊縮財政を訴えて熱狂的な支持を得て政権奪取したまでは良かったが後が続かなかった。チプラス政権は改めて民意を問うため緊縮策を受入れるか否かの国民投票を実施したが、結果はNo(緊縮反対)が圧倒的多数を占めた。一方で、国民投票が”EUに残ること”を前提にしていたため、EUからは金融支援継続の条件として年金給付の抑制や増税などを含む財政改革の法制化を受入れざるを得なかった。

今回の投票ではチプラス首相率いる前政権の明らかな公約破棄と、生活が改善しないことに対する国民の失望がNDの復活勝利につながったわけだ。結果的には、2018年8月にEUによるギリシャに対する財政支援は終了し、自力再建へと向かっているが、国内総生産(GDP)は財政危機前の2008年比マイナス25%程度、失業率は20%前後と高止まりしたままだ。

チプラス氏はまだ44歳と若い。今回の結果は本人もおそらく納得の敗北であり、be poised to ~ には、結果が見えていて事前に十分に備えている、といったニュアンスなのだろう。そして、低所得者層の支持を背景に、虎視眈々と政権の再奪取に照準を定めようとしているのではないだろうか。

 

JT June 28, 2019

Japan’s pitch for free flow of data faces uphill battle
日本の自由なデータ流通に対する意気込みは困難な戦いに直面

pitch: (名詞) 宣伝文句、売り口上、(投資家向けの)短いプレゼン、投球、勾配、傾斜、音の高さ、等。 (動詞) 投げる、商品を市場に出す、売り込む、テントを張る、など。
free flow of data: 自由なデータ流通、ここでは、安倍首相が2019年1月のダボス会議で提唱した”Data Free Flow with Trust” (信頼あるデータの自由な流通)を意味する。
uphill: 上り坂の、骨の折れる、困難な

2日間のG20大阪サミットが「大阪宣言」(全文は7月1日付The Japan Times 2-3ページに掲載)を採択して閉幕した。安倍首相は、国境を越えた自由なデータ移動を認める「データ流通圏」を提唱し、今回の開催場所から「大阪トラック」と名付けて国際ルール策定の開始を宣言した。誰もが予想したことであるが、米中が5Gを巡り貿易戦争に発展しており、この点でも互いに批判の応酬に終わった。

EUにおいては、すでに2018年5月に施行済みのGDPR(General Data Protection Regulation: EU一般データ保護規制)で、個人データの取扱いにつき、データの収集・保護・変更・開示・閲覧・削除等、厳格な規則を定めており、EEA(欧州経済領域)の域外への個人データの移転は原則禁止という厳しいルールが存在している。
また、人口14億人を擁し、将来のデータ大国であるインドのモディ首相は会合に参加しないなど、スタート位置に立たせることさえ困難な状況と言っていい。もとの概念のfree flow of data(自由なデータ流通)に「信頼性のある」(with trust)を付け加えたのが安倍首相の新味であるが、何をもって「信頼」するかは国によって異なり、G20や164か国が加盟するWTOで定義を明確にできるのか、厳しい環境での戦いに直面することになる。

 

JT June 16, 2019

H.K. extradition bill put on hold
香港で「逃亡犯条例」法案を延期

extradition: 逃亡犯の引き渡し、送還
bill: 法案、議案 (billが議会で可決されるとact/law(法令)となる)
(be) put on hold: 延期された、保留となった

香港のCarrie Lam 行政長官は、一週間にも及ぶ前例のない(unprecedented) 一般市民や学生の抗議やデモを受け、逃亡犯や刑事事件の容疑者を中国に引き渡す法案を通す手続きを期限を定めず(indefinitely)延期することを発表した。十分予想されたことではあるが、中国の司法制度に不信感を持つ香港市民や欧米諸国の反発が予想以上だったことが背景にある。

1997年の中国返還以降も、英中間の取り決めで、香港に高度な自治を認め、金融、貿易を中心とした経済発展の基礎となってきた「一国二制度」のもと英国式の司法制度を維持している。一方、中国の司法は検察や裁判所も中国共産党の指導を受ける構造になっているとのことだ。もし香港が司法の独立を失い、これまで謳歌してきた自由が脅かされることになれば「一国二制度」が崩壊するかもしれないという身に迫った危機感が一気に高まった状況が続いているのである。

 

NYT June 12, 2019

Companies aim slings at Goliaths of tech world
多くの会社がIT業界の巨人たちを狙い撃ちに

sling: 石を飛ばすための道具・投石器、などの表記になるが、現代人には馴染みのない代物。武器となる石を包むための中央の幅広い部分と、その両端の細長いひもでできている。狩猟の道具であり殺傷能力の高い武器となる(実物はWikipedia「投石器」ご参照)。
Goliath: ゴリアテ( 旧約聖書に登場するペリシテ人の巨大な兵士)、巨大企業、強大な影響力を持つ人や組織。ここでは主にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を指す。

これまで急速な成長を遂げてきたGAFAを初めとしたIT大手企業(tech giants)だが、最近では、個人情報漏洩問題、独占禁止法(米では反トラスト法)違反の疑い、データの寡占の警戒感や、グローバルでの課税対策、等々、解決すべき問題が噴出している。記事では、ソフトウェア大手や個人規模のレストランがそうしたtech giantsの圧倒的な市場支配力によっていじめを受け不利益を被っている例が挙げられている。企業や消費者から多くの非難を受け、米では司法省(The Justice Department)がグーグルとアップル、連邦取引委員会( The Federal Trade Commission)が担当し調査することになったことを伝えている。

旧約聖書に登場する「ダビデとゴリアテ」(David and Goliath)は、のちにイスラエルの王となる羊飼いの少年ダビデが、ペリシテ人の巨漢兵士ゴリアテをスリングの一撃で石を眉間に命中させ一瞬にして倒すというストーリーだ。この故事が、弱いものが巨人や巨大組織を打ち負かすことの例えとして使われている。それまでは各陣営から選出された最強の兵士が剣を交えて戦って勝敗を決めていた。大きくて力の強い者が勝つという従来の戦いを当然のこととして構えていた巨人ゴリアテに対して、意表を突く形で、また、ゲームのルールを変えたことにより大方の予想に反して羊飼いの少年ダビデが勝利したわけである。そうした例は過去から枚挙にいとまがないが、今回の件でも大胆なルールの変更や、相手が予想しなかった奇策を打ち出せるかが鍵となるだろう。

筆者の愛読書の1つである、Malcolm Gladwell氏の著書「DAVID AND GOLIATH」にその臨場感溢れる戦いぶりの詳細や歴史検証、弱者が強者に勝った多くの例が描かれているのでご興味のある方は是非原書で読むことをお勧めする。

 

JT June 5, 2019

1 in 4 over 80 still behind the wheel: survey
80歳以上の4人に1人が車を運転:政府調査

over 80: 80歳を超えた人( 80歳を含まない )だが、記事本文では、aged 80 or older ( 80歳とそれより高齢者)との記述があるので over 80で80歳以上といいたいのがわかる。その数字を含む「以上」に相当する英語がないため、その数を含まない「超」を表わすoverを使っている。ヘッドラインにはそこまでして短いワードを使いたいんでしょうね。
behind the wheel: wheelはsteering wheelのことで車のハンドルだ。自動車関係のカタカナ用語はその多くが和製英語で通じないものが多いので注意されたい(別の機会に詳述したい)。ハンドルの後方( behind)にいて運転席に座ってハンドルを握っている姿をイメージすると分かりやすいでしょう。behind/at the wheelで、運転して(いる)、の意。

 最近、高齢者による重大な自動車事故が大きな社会問題となり多くのメディアに大々的に取り上げられている。60歳以上を対象にした政府の調査で、80歳以上の4人に1人が今でも運転しているとの結果が出た。高齢の運転者の割合は、電車やバスなどの公共交通機関が限られる地方の方が高く、買い物や病院通いに車が不可欠な足になっていることがあらためて裏付けられた格好だ。
警察庁( National Police Agency )によると、重大事故に占める75歳以上のドライバーの割合が2008年には8.7%だったのが、2018年には14.8%になっている。筆者もあと20年するとその域に達するがそれまでには安全な自動運転車が実現していることを望むばかりだ。

 

NYT May 27, 2019

Thawing Arctic entices China
Beijing sees a faster path to Europe and new
 energy sources, worrying the U.S.
氷解する北極が中国を呼び込む
中国はヨーロッパへの近道と新たなエネルギー資源を視野に入れ、それがアメリカの悩みの種に

thaw: (他動詞) 雪や氷を解かす、解凍する。(自動詞) 雪や氷が解ける、打ち解ける、緊張などが和らぐ。ここでは、氷解しているの意の現在分詞。
(the) Arctic: 北極、北極圏。arctic: 北極(圏)の、厳寒の。
entice: 惹きつける、呼び込む、誘い入れる、そそのかして~させる。

 北極は氷解し続けており、中国は北極圏においても影響力の拡大のチャンスを手中に収めつつある。気候変動による北極の厚い氷の減少と、ロシアを初め北極圏の国々への経済支援をテコに「氷上のシルクロード」( Polar Silk Road)を着々と伸ばしている。これまで、アジアとヨーロッパを往来する船はスエズ運河を経由する航路を利用していたが、この北極海のルートに変えることにより航海距離は3分の2に、航行時間は10日ほど短縮され1ヵ月で到達する。これにより燃料費量も50%近く削減されるようだ。アメリカの地質調査所の報告(2018)によると「未発見で技術的に採掘可能な世界資源のうち約22%が北極圏にある」(Wikipediaより引用)といわれており、氷下に眠る原油、天然ガス、鉱物資源や漁業権益に触手を伸ばしている。ロシアとは、2017年12月にヤマル半島で資金援助する形でLNG開発プロジェクトである「ヤマルLNG」正式に稼働し、3本の生産ラインで毎年中国に400万トンのLNGが供給されている。この量は中国が輸入するLNG総量の8%に相当し、氷上のシルクロードの重要拠点になっている。また、先日上海で国内2船目となる砕氷船( icebreaker) Snow Dragon 2を完成しお披露目した。
最近では、米中間の関税の応酬による貿易戦争がヒートアップしているが、アメリカの手薄な北極圏でロシアと手を組み、虎視眈々とヨーロッパ市場へのアクセスと原油や天然ガスなどの鉱物資源、そして海産物まで一気に手に入れようと躍起になっている。

 

NYT May 20, 2019

A nation brought to its knees
Collapse of the economy in Venezuela is the worst in the world outside of war
破綻した国家
ベネズエラの破綻した経済は戦争以外では最悪

(It was) brought to its knees: (国家・組織など) 破綻した、崩壊した。A nation (that/which was) brought to its knees. と受動態になっているので、国家が破綻させられた、という記事。

ベネズエラの経済破綻は、ムガベ政権下のジンバブエの破綻、ソビエト連邦の崩壊、キューバの破綻と比べても、それらのペースを凌ぐ。一国家として、戦争以外では最悪の経済破綻を経験しているとの見方がエコノミストの間では一致している。何しろ、インフレ率が直近では130万%で、IMFの見立てでは年末までには1,000万%に達するという。ベネズエラの通貨ボリバルソベラノ(Bs)の価値が、1年間でUSドル比 770分の1となり、最低賃金の40千Bs /月(760円相当)ではパン8斤が買える程度という。また、最近2年間で国外脱出により人口が10%減り、今年のGDPが2013年比マイナス62%になるとの予想がIFMからされている。Toas島の病院では医薬品がなくなり、患者もいなくなった、と悲惨な写真付きでレポートされている。
 ベネズエラと言えば世界最大の原油埋蔵量があるとされるが、昨年のこの時期にマデュロ大統領が再選を果たして以降、経済状況は一層悪化している。2013年に大統領就任以来の失政が原因だ。国内物価の価格統制や外資企業の資産接収などにより国内外の批判を浴び、米国からの経済制裁が一層強化されている。4月末には野党指導者のグアイド国会議長が国軍にクーデターを呼びかけたが不発に終わっている。

 

JT May 11, 2019

Two sides in last-ditch discussions on trade deal
U.S. slaps tariff hike on more China imports
米中2国間で貿易に関する土壇場の協議
アメリカがより多くの中国製品の輸入に対して関税引上げ

last-ditch: 土壇場の、絶体絶命の、最後の望みを賭けた、ギリギリの。ハイフン(-)がないlast ditchは名詞で、最後の防御の場、土壇場。 
slap: (税金や制限などを)課す、の意。slap X on Aで、AにXを課す、になる。slapは、ピシャリとたたく、平手打ちをする; (励まし・称賛を表わし)肩などをたたく、の意で使われるのが一般的だがビジネスではよく出くわす表現。

 大方の予想通りではあるが、米中の土壇場の協議は合意に至らなかった。これにより米国が5月10日に中国製品2,000億ドル分の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げると決定した。対象は6,000品目近くに上り、家具や家電など一般消費財が多く含まれておりアメリカの消費者に与える影響は大きい。これに対し中国は報復関税を準備しており、600億ドル分の米国製品に対して追加関税を示唆している。
米国商務省の発表では、3月の対中国の貿易赤字は国別では相変わらず断トツの283億ドルだが前年比6.2%減少し2019年に入り3ヶ月連続で減少している。対日の赤字も8.8%減少し61億ドルとなったが、中国、メキシコに次ぎ3位に位置している。4月から始まった日本との貿易交渉では対日赤字の縮小を目指しているため、トランプ大統領の5月末の国賓としての来日と、6月下旬のG20 での首脳会談のタイミングに合わせて日米間でもすでに厳しい交渉が連日行われている。

 

JT April 19, 2019

Ode to our lady of Europe
ヨーロッパのノートルダムへの賛歌

ode: 賛歌、特定の物や人のための抒情詩
our lady: フランス語のノートルダム(Notre Dame)の英語訳=私たちの貴婦人

 4月15日にパリのノートルダム大聖堂( Notre Dame de Paris )で大規模な火災が発生し、その尖塔や屋根が焼失してしまった。2013年に着工850年を祝ったこの大聖堂はヨーロッパ最大のカトリック教会といわれており、フランスの歴史、政治、宗教、文化の象徴的な存在でありフランス国民はもとより世界中の人々に大きな衝撃を与えた。
 Notre Dameはフランス語でOur Ladyの意味で、「私たちの貴婦人」= 聖母マリアを指し、この大聖堂は数あるNotre Dame寺院の中でも最古にして最大のものだ。内部には聖母マリアの象徴であるバラの窓やステンドグラスが有名だが、キリストがはりつけされた時かぶっていた「いばらの冠」など重要な文化財など多い。また、1431年の英国のHenry VIのフランス王としての戴冠式、1804年のNapoleon Iの戴冠式や、ドゴール氏とミッテラン氏、両元大統領の葬儀もここで営まれている。1991年にはユネスコの世界遺産に登録され、年間1300万人の観光客が訪れている。

 

NYT April 1, 2019

Italy’s deal with China signals shift in geopolitics
イタリアの中国との取引は地政学における転換の前兆となる

Rome says it is leading the West in signing up for Belt and Road program
イタリア政府によればイタリアは「一帯一路」構想にサインすることで西側諸国をリードする

signal: 動詞で、示す、示唆する、知らせる、前兆となる。
shift in geopolitics: 地政学上の転換 
Belt and Road program: 中国が進めている広域経済構想の「一帯一路」。Belt and Road Initiative  もよく使われる。

 3/23に中国の習近平国家主席とイタリアのコンテ首相がローマで握手を交わし、「一帯一路」構想で協力する覚書にサインした。すでに署名しているEU加盟国は10か国以上あるが、主要7か国(G7)ではイタリアが初めてだ。EU主要国からは反対の声が上がっているものの、地域経済を活性化し大量に雇用が見込める「一帯一路」頼みにならざるを得ない国内事情はまったなしだ。中国はインド洋、中東を経てヨーロッパまでつなげる海のシルクロードの終点にイタリアを位置付けている。主要な事業の1つがアドリア海に面したトリエステ港の整備強化だ。ターミナルに加えて周辺の鉄道網の整備に中国の国有企業が投資する見通しで、今後、その運営に対して中国が経済的に大きな影響力を及ぼすことになるだろう。
 今回の覚書で合意した項目はエネルギー、金融、製鉄所の建設などを29に上るとのことだ。アメリカが内向き志向を強めて世界での存在感を弱める一方で、中国が激しく勢力を広めつつありヨーロッパにおいてもさらに中国色が強まっている。

 

JT March 30, 2019

Cash-obsessed Japan slowly buying into digital payments
現金決済にこだわる日本が徐々に電子決済を受入れ

cash-obsessed: 現金支払いにとりつかれた、現金支払いにこだわる 
buy into~: ~を受入れる、信じる

 2015年のデータでは、個人消費のうちキャッシュレス決済の比率がおよそ20%の日本は、約90%の韓国、60%の中国、45%の米国と比較しても現金決済の割合が突出して高い。毎年記録を更新している外国人旅行者数や今年10月に予定されている消費税の10%への引上げ、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け官民が一体となってその比率を上げることに躍起になっている。経産省は2018年4月に公表した”Cashless Vision”ではキャッシュレス決済比率を2025年までに20%から40%へ引き上げることを目的としている。

 

NYT March 20, 2019

A resurgent Levi’s prepares to go public 
よみがえったリーバイスが再上場へ準備

resurgent: 生き返った、よみがえった;復活者 
go public: 株式を公開する、上場する

 おそらく40代以上の日本人にもなじみが深いであろうジーンズ大手のリーバイス( Levi Strauss & Company)。何と1985年以来34年ぶりにニューヨーク証券取引所に上場することになった。現実に3月21日に上場しUS$22.41の値を付け、時価総額は8,8000億円を上回った。記事によると、創業が165年前(1854年)で、1873年にブルージーンズを開発した、とある。19世紀中盤のカリフォルニアのゴールドラッシュの波に乗り、アメリカ西部のカウボーイや炭鉱夫のユニフォームとなり、ハリウッドの映画スターが身に着け、若者に広く浸透したのであるが、1990年代に入りファッションの多様化と低価格を売りにしたフライべートブランドの台頭により困難に直面したのである。ところがここ10年ほどで、イメージ刷新とオペレーション、それに最近の流行であるアスリージャーウェア(athleisure* wear)の商品を取り揃えることで見事によみがえったようだ。*athleisure=athlete+leisure: スポーツウェアと普段着を兼ねたファッション

 

JT March 14, 2019

Japan to forgo N.Korea rights motion at U.N.
Move apparently aimed at persuading Pyongyang to hold talks over abductions issue

日本は北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を国連に提出することを見合わせる
この対応は明らかに日本人拉致問題に関して北朝鮮に会談を持つよう働きかける狙い

forgo: 見合わせる、差し控える、という動詞。似た単語のforegoは、①~に先行する、先んずる、
② =forgo という意味。紛らわしいのでしっかり区別して覚えておこう。

rights: この文脈では human rights を表わす。
motion: (議会等での)動議、発議、提議

move: 処置、手段、対応

記事では、日本政府が2008年から継続してきた、国連人権理事会に対する北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を今年は見合わせる(forgo)ことを伝えている。昨年まで11年間EUと共同でその決議案を提出してきたが、昨年6月と今年2月の米朝首脳会談でトランプ大統領が金正恩委員長に拉致問題を話題にしたことを受けての措置なのは明らかだ。この政治判断の是非は置いておくとして、安倍首相にとってはこの好機を逃さず、日朝首脳会談の開催に意欲を示している。

 

NYT March 6, 2019

Bearing the brunt of Trump’s trade war
トランプによる貿易戦争の矢面に立つ

brunt: (攻撃の)矛先。bear the brunt of ~: ~の矢面に立つ、影響をもろに受ける。

 アメリカの地方都市の照明器具を扱う小規模小売店主の話を記事にしている。トランプ大統領が仕掛けた中国に対する貿易戦争によってアメリカの至る所でその影響をもろに受けている。デラウェウア州のその店は主力商品の照明器具の大半を中国から輸入しショールームで販売しているが、昨年9月からその輸入商品に対して10%の輸入関税が課されているのだ。その小売店が扱う商品のサプライヤーからは続々と価格引き上げの通達が届いている。これまで利幅を減らして小売価格を据え置いてきたが、今年の3月からは10%から25%に関税引き上げが予定されていたためいよいよ顧客に価格転嫁するか判断を迫られている。3月の税率引き上げは中国との交渉に進展があったとして延期になったものの待ったなしの状況だ。

 

NYT February 28, 2019

Trump drops hard line for talks with North Korea
President appears willing to accept less than full nuclear disarmament

トランプ、北朝鮮との会談で強硬な態度を弱める
大統領、完全な非核化に満たない条件を受けいれる用意

hard line: 強硬策(路線)、強硬な態度
drop: 取り下げる、中止する、放棄する

 今週は2/27-28の米朝会談が大きな話題になっていたが、大方の予想に反して、終わってみれば非核化の合意に至らなかった。見出しは2日間の会議の初日を終えた後のものだが、その段階では完全な非核化ではなく、北朝鮮が求める段階的非核化を受入れるのではとの憶測が流れていた。
 ところが、である。2日目の午前の会議を終えたところで、予定されていた昼食会は中止となり合意文書の署名はなされなかった。”Basically they wanted the sanctions lifted in their entirety, but we couldn’t do that.” (北朝鮮が経済制裁の完全な解除を求めたが、我々は合意には応じられなかった)ということである。非核化の進展がないことは事前にわかっていたことであるし、北朝鮮が経済制裁の解除(完全な解除ではないにしろ)を求めてくることは初めから予想されていたことなのでこの結末は大方にとっても意外であったろう。3/1のNYTの見出しは、North Korea talks end with no deal (北朝鮮との会談は何の合意もなく終結した)であった。

 

NYT February 18, 2019

Moving time for Wall St. banks in London
With their subsidiaries spread out in Europe, no one city will dominate

ロンドンにあるウォール街の銀行にとって引越の時期が来た
アメリカの大手銀行の子会社はヨーロッパ各地に分散し、どの都市も覇権は握れない

 今週は難しい単語や表現はない。Wall St.はニューヨークのウォール街でアメリカの金融界を表わし、Londonは英国の金融の中心地Cityのことも意味している。subsidiariesは子会社や支店を含めたグループ企業群とみていいだろう。

時期を同じくしてホンダが、ロンドンの西120キロにあるスウィンドンの製造工場の閉鎖を発表し、3,500名の従業員が解雇される見通しとなった。部品サプライヤーや関連企業を含めると地域経済のみならず英国経済にとって壊滅的な打撃を懸念する声が多い。

世界の金融市場に占めるCityの存在はご存知の通り巨大で、現実味を帯びてきた3月末の合意なき(no-deal)離脱に向けて金融業界の動きがにわかに活発になってきた。近隣の1都市だけで吸収できるはずもなく、より大きなパイを手に入れようと狙っている候補地としては、Frankfurt, Luxembourg, Paris, Madrid, Milan, Amsterdamが挙げられている。ちょっと意外と思われるほど大きな恩恵を受けると見られているのがアイルランドの首都Dublinだ。多くの米系銀行だけでなく大手の英国の銀行もDublinを大幅に拡張することを表明している。これまで米系銀行がロンドンから異動させた行員は1,000名に達していないが、EUからの離脱の期限である3月末に向けて5,000名まで膨らむ可能性があることを記事では伝えている。

 

NYT February 16, 2019

Huawei hits a snag in its efforts to gain a foothold in Europe

hit a snag: snagは、思わぬ障害、欠陥、難点。hit a snagで、思わぬ障害にぶつかる、の意。gain a foothold: footholdは足がかり、地盤。gain a footholdで、足がかりを作る、地盤を築く、の意。

 アメリカ司法省は今年1月に、自国の通信会社から企業情報を盗んだとしてファーウェイを起訴したが、さらに東欧諸国に対してもファーウェイ製品の購入を見直しするよう要請し、従わなければ軍事支援が困難になる旨通知した。中国は東欧諸国に対して、インフラや通信事業支援をテコに友好関係を構築してきたがアメリカから思わぬ横やりが入った格好だ。

 ただ、当事者の東欧諸国の対応は一枚岩ではない。ポーランドはIT分野に対する投資判断は安全性を最優先し、安全保障の脅威となるような通信業界への参入はさせない方針を示している。また、チェコでは政権内部でも賛否両論あり方針が固まっておらず、ハンガリーは5Gの整備でファーウェイと協働しており直ちに見直す方針は示していないのが現状だ。

 

NYT February 7, 2019

Trump calls for peace, but barbs still flying

barb: 釣り針などの先端の返し、有刺鉄線のとげ、とげのある言葉、痛烈な言葉。トランプ大統領はunity(結束)という言葉を何度も使い、peace(平和、ここでは党派を超えた協力の意)を求めた(call for)ものの、批判的な痛烈な言葉が飛び交った、といったところ。

慣例では、1月最後の火曜日(1/29)に行われる State of the Union speech(一般教書演説)が、それまでに予算案が成立せず、一部の政府機関が閉鎖された影響で一週間遅れの2/5に行われた。メキシコとの国境の壁の建設に固執して支持基盤である保守層をつなぎとめる狙いがあったが、先の中間選挙で下院の過半数を得た民主党議員は痛烈な批判や冷めた沈黙で応えた。経済の成長と雇用の好調、中国との不平等な貿易慣行の是正への行動、初の米朝会談の実施とベトナムでの2度目の会談の日程など、自身の実績を明かした。上院では共和党が過半数を占めるもののねじれ議会の状況で大統領の任期があと2年となり、壁建設を含めトランプ政権の展望は開けないままだ。

 

JT January 31, 2019

Dublin, EU present united front as London looks to drop border ‘backstop’ 

Brexit is now a ‘game of chicken’

united front: 共同戦線、一致した態度。backstop: 球場などのバックネット、逆戻りを防ぐ安全策・安全装置。
game of chicken: =chicken game: チキンレース。別々の車に乗った2人が一直線上を互いの車に向かって突進するゲーム。転じて、交渉において当事者の2者がともに強硬な態度を取り続けると悲劇的な結末を迎えてしまうにも拘わらずプライドが邪魔をして双方ともに譲歩できない状況の比喩として用いられる。

DublinはEU加盟国であるアイルランドの首都でありアイルランドを指すが、アイルランドとEUは英国のEU離脱に対し一致した態度(united front) を取っているが、英国は英国の一部である北アイルランドとアイルランドの国境に関する安全策を変更することを視野に入れている。ここでのbackstop(安全策)というのは、こういうことだ。英国とEUは過去の度重なる紛争を避けるために、離脱後も北アイルランドとアイルランドの境に物理的な国境を復活させない方向で合意している。しかしながら、離脱協定にはその具体策が見つかるまでは英国全土をEUの関税同盟に残しておくという「安全策」が加えられたのだ。これには英国内の離脱推進派からは、EUルールに拘束され続ける、との反発の声が多く、メイ首相は議会で大差で否決された代替案としてこの「安全策」を修正する方針を発表したのである。
この判断は、EUから見ると、苦労して英国を除くEU27ヶ国の合意を取り付けた”英国に十分配慮した”離脱案に対してEUへの要求をさらに引上げたことを意味するのである。EU側は、離脱協定の再交渉はしないとの姿勢は変えておらずまさにチキンレースの両者が衝突寸前の状況である。

 

JT(The Japan Times) January 25, 2019

Nissin pulls Osaka ads following ‘whitewashing’ uproar

whitewashing: whitewashの原義は肌を白くする化粧水、壁を白く塗る塗料だが、転じて、過失や悪事などの隠ぺい、粉飾、取り繕い、といった意味で名詞と動詞で使われる。uproar: 騒動、大騒ぎ。 following: 前置詞でafterと同意。

 テニスの大坂なおみ選手が昨年のUSオープンに続き1/26のオーストラリアオープンの決勝に勝利しグランドスラム2連覇という偉業を成し遂げた。第2セットの後半は固唾をのんでテレビに釘付けになっていたが、相手のクビトバ選手との激戦は観る者全てに感動を与えてくれたのではないだろうか。
 その一方で、日清食品ホールディングスは自社の広告の中で登場する大坂選手のアニメキャラクターが実際の肌の色より白く描かれているとの議論が起き、大騒ぎになったことを受けてユーチューブ動画を削除した。日清食品は「実際より白くする(whitewashing)する意図は決してなかったが、騒動になったことを受けて、今後は多様性(diversity)の問題により配慮する」と表明した。
 当社は錦織選手のスポンサーでもあり、錦織選手のアニメキャラクターの肌の色より大坂選手のほうがやや濃く表現されているが、実際よりは白くなっているのは事実。筆者自身も動画を見たときは、あまり似てないな、くらいの印象しか持たなかったが、biracialの方を含め多くの人が違和感を抱いたことは容易に想像できる。日本でもDiversityという言葉を最近よく見聞きするようになったが、自分自身のこととして真摯に受け止めて実践していきたい。

 

NYT January 22, 2019

China slump seems likely, just as globe needs a lift

a lift: 見慣れた単語だが(イギリス)英語では米語のelevatorのこと。人を車に乗せてあげること、便乗、援助、活気づける力といった意味。give him a liftで彼を車に同乗させる;彼を愉快な気分にさせる、といった意味になる。

この記事では、前日に発表された中国経済の成長率が、予想されたことではあったが、減速し2018年の成長率は6.6%と1990年以来の低い伸びとなり、10月~12月の第4四半期は6.4%とリーマンショック直後の2009年以来の低水準となった。今や世界経済が中国に大きく依存しておりユーロ圏や米国、資源国などの景気を引き上げてくれるはずの頼みの中国で、米中貿易戦争の影響が色濃く出てきた昨年秋以降にさらに低下した。国内では自動車の販売・生産とも前年を下回り、スマートフォンの売れ行きも下がっており中国経済を牽引してきた消費の伸びも低下している。これまで大挙して世界の工場となった中国に進出してきた外資企業は、最近の人件費高騰もありベトナムやインドネシアなどの東南アジアにサプライチェーンをシフトし始めた。

 

NYT January 16, 2019

Theresa May, Britain’s Kafkaesque prime minister

Kafkaesque: カフカ的な、という意味。カフカ( Franz Kafka, 1883-1924)はチェコ出身の作家であるが、カフカ的とは、カフカの作品を思い起こさせるような不条理で非現実的なことに対して表現することが定着しており、文学に限らず政治を含めて広く用いられている。

記事では、カフカの短編「家父の気がかり」(1919)に出てくるOdradek(オドラデク)は想像できる限り最も奇妙な生物の1つとして描かれている。”一見すると平たい星の形をした糸巻きみたいだ”という一節を引用している。作品中では、このOdradekは本当に糸が巻き付いているように見える。ただ、その糸はちぎれてボロボロになっていて結びついているというよりぐちゃぐちゃにもつれ合っていてその糸くずは各々異なる色と材質のようである、といった表現でOdradekを説明しているのである。現在の英国のEUからの離脱(Brexit)に関して、英国議会下院は、1/15にEUと合意したEUからの離脱案に反対多数で否決した。政権与党からも多数の反対票が投じられ英国政治の混迷はいっそう深まり、EU離脱の行方は3月末の期限に向けて一段と不透明になった。

 

NYT January 8, 2019

Border wall that elevated Trump now boxes him in

box him in: 彼の動きを封じる/制限する、彼を狭いところに封じ込める、という意味。ここでのboxは、ボクシングや殴る意味のboxではなく、箱のboxで、箱に詰めて身動きできないイメージ。

トランプ大統領の看板政策であるメキシコとの「国境の壁」( Border wall) 建設費の予算計上を巡って民主党との対立が長引いており、政府機関の一部閉鎖が終了する目途が立っていない。不法移民対策として一貫して「国境の壁」の必要性を主張しており、予算を巡る国内政治の停滞がトランプ政権の外交にも影響を及ぼしており、それを理由に、1月下旬のダボス会議を欠席することを得意のツイッターで明らかにした。トランプを引き上げてきた「国境の壁」が今となってはまさに自縄自縛で身動きが取れない状況になっている。

 

NYT(The New York Times) January 7, 2019

Nipping at iPhone’s heels

nip at one’s heels: じりじりと追い上げる、すぐそばまで迫る、領域を侵食する、という意味。nipはつねる(pinch)、かむ(bite) と同意で、nip at one’s heelsで、どんどん迫ってくる動物にかかとをかまれるイメージ。

記事ではHuawei, Xiaomi, Oppo, Vivoなどの中国製のスマートフォンが品質でもiPhoneとの差がほとんど無くなり、iPhoneの半分かそれ以下の価格で買えるため圧倒的なシェアを誇る中国以外の国や地域でもiPhoneの売上にひたひたと迫っている様子を伝えている。スマートフォンの売上は中国人の収入の増加と携帯電話技術の進展が相まって中国が過去10年間世界一だが、アップルは中国では5位に甘んじている。一方、アップルはドイツ、イタリア、オランダ、韓国、スペインなどの裕福な国といくつかの新興国で最高売上げを達成すると期待している。

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